エンド後勇者、奴隷たちに振られまくる総受け生活

極寒の日々

文字の大きさ
45 / 72

45解放

しおりを挟む
行っちゃった。
しばらく去った扉を見つめていたが、ジョフィルは戻って来そうにない。
気を取り直して名前をどうするのか考えなければ。

「き、君のご、ご両親からはなんて呼ばれてたんだ?」
「親が居たことはありません」

そうきっぱりと告げられたが単為生殖でもあるまいし多分居ると思うのだが…。
正式な名前はなくとも両親が幼少期に呼んでいた愛称みたいなものがあればと思ったが、とんだ地雷を踏んだかもしれない。
生まれた時から奴隷だったのだから、分かりそうなものなのに俺の馬鹿無神経。

「あーえっと、でも遥か昔、微かに誰かに抱かれて“ぬいぐるみちゃん”って呼ばれていたような? 多分赤ん坊のころの記憶かな…温かくて安心出来て、あれが母親だったのかなって今なら思います」

気まずそうにする俺に気付いた彼は、少し考える素振りをしてそんなことを口にした。

「俺は奴隷館で生まれ育ちました。そこの子供は一塊にされて、まとめて死なない程度に育てられて出荷されます。俺もそうやってなんとか生き延びて今も奴隷としてやっています」
「そ、そっか…」

相槌を打つことしか出来ない。
困っている俺に気付いたのか、彼の方がより困ったように眉を下げた。

「ごめんなさい。奴隷のことなんて気分の悪い話を聞かせて」
「か、顔をあげてくれ」

深々と下げられた頭に声をかける。

「テ、テディ…」
「え?」
「き、君の名前、テディでどうかな?」
「俺…いや、私に名前を授けてくれるのですか?」

目を丸くする彼に笑いかける。

「き、気に入らなければ、あ、後で変えて貰っていいから。と、とりあえずここにいる間の通称ってことで」
「テディ…テディですね。ありがとうございます!こんなに嬉しい施しは初めてです」

本当に嬉しそうに笑うものだから、こんな適当な名付けでよかったのか若干不安が過ぎる。

「俺、ご主人様の為に頑張って働きます!さっきから、なんだか体調も凄くいいんです。死ぬ気で奴隷として勤めます」
「あ、あ。い、いや。テ、テディにはこのまま働いてもらうことは出来ない」

せっかく張り切っているところに悪いが拒否させてもらう。

「え…そんな…」

俺の言い方が悪かったのか途端に絶望の表情になるテディ。

「俺は…殺処分でしょうか…?」
「ち、違う!ち、ち、違うから! た、ただこの家に奴隷は置かないんだ」
「…?」
「つ、つまりテディを奴隷から、か、解放しようと思う」
「……は?」

突然の俺の言葉を飲み込めないようで、テディは呆然とした。

「奴隷から、解放…? え? じゃあ俺は一体どうすれば?」

今まで俺が買ったのは、全員一般人から奴隷落ちした人間ばかりだった。
だから多少戸惑うことはあっても、奴隷身分から解放されること自体はみんな喜んで受け入れたと思う。
間違っても今のテディのように捨てられた子猫のように不安そうではなかった。

「だ、大丈夫だ。せ、生活に慣れるまで、こ、こっちで面倒見るし、は、働き先のサポートもする」
「生活…働く……」

まるで聞いたことのない恐ろしい言葉のように恐々と呟く。

「じゃ、じゃあ奴隷の首輪、は、外すから…」

一歩近づくと、無意識だろうか若干テディの身体が後ろにのけぞる。

「だ、大丈夫。い、痛くないから」
「は、はい…」

テディは俺の言葉に頷いたが、あまりに声がか細い。
なんだか俺が無体を働こうとしている錯覚に陥りそうだ。
怯えるテディの首に手を添えると、そのまま首輪に魔力を流し込んだ。
本来は正式な契約者でないと外せないのだが、こんな簡単な隷属魔法ならば分解は容易い。

あっさりと外れた首輪。
テディは何もついてない首が心許ないとばかりに首元を抑えて呆然としていた。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。 また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

原作を知らないblゲーに転生したので生きるため必死で媚びを売る

ベポ田
BL
blゲームの、侯爵家に仕える従者に転生してしまった主人公が、最凶のご主人様に虐げられながらも必死に媚を売る話。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

処理中です...