エンド後勇者、奴隷たちに振られまくる総受け生活

極寒の日々

文字の大きさ
69 / 72

69指輪

しおりを挟む
 結局あれからショーンを探したが、見つからなかった。
彼が辞職の言葉を残したと屋敷のみんなに伝えると、アルはショックを受け、殺されかけたことがあるデイビッドはちょっとホッとし、ジョフィルは興味のなさそうな振りをしていたが少し心配そうだった。

俺はあの時、どう返事をすることが正解だったのだろうかとずっと自問自答している。
ショーンが苦しんでいるのなら話を聞きたい。
少しでもショーンへの手がかりがないかと街に繰り出した。
セイレスの出自を調べた時の調査人に依頼するか…しかし本人から辞める意思を示された以上、深入りしないのがいいのだろう。
でも…嫌がられても構わないからショーンともう一度会いたい。

堂々巡りになる思考の中、とりあえず自分の足で捜すことにした。
まだ街に居るかもしれない。バッタリ出会したりしないだろうかと一縷の望みをかける。

一番心配なことはショーンの魔力についてである。
この世界は魔力に溢れ、赤ん坊や死にかけの老人でさえも無意識に魔力を流すことが出来る。
だから日常生活のちょっとしたことでも魔力が必要な仕組みになっている。
実は蛇口あるし、水洗トイレやガスや電気も存在しているこの世界。
高価な魔石が必要なので一般人にはそこまで普及していないが、それでもランプや薪に火を付ける道具にも小さな魔石が入っている。
全てにおいて魔石を起動するのに極々少量の魔力を必要としている。
日常生活において魔力がないと不便なのだが——ショーンには魔力が全くない。

ショーンのその体質を知ってから屋敷の中は魔力がまったく必要ない仕組みになっている。
最初は業者に依頼しようとしたが、そんな無駄なことはしたことがないと断られてしまい、仕方なく自分で作り変えた。
本来なら軍事用に用いられる術式を応用して「蛇口から湯を出す」「部屋を明るくする」「コンロの火をつける」といった日常に必要な道具はすべて魔力なしで起動できるように改造しまくった。

恐らくショーン以外の人は気づいていないだろうが、この屋敷はまったく魔力を必要としない魔力バリアフリーな家になっている。
だから勝手にショーンは便利なこの屋敷にずっと居てくれるものだと思っていた。
今にして思えば凄く傲慢だった。

少し落ち込みながら街中をキョロキョロ見回す。
あてもない捜索に心は落ち込むばかりであるが、足は勝手に動いてしまう。

「あら? マサキ様?」
「ク、クローエさん…」

急に声を掛けられたかと思えば、クローエさんが佇んでいた。

「こんなところでお会いするなんて珍しいですわね。お買い物かしら?」
「い、いや、ショ、ショーンを探しに…」

未練がましいと思われるのが恥ずかしくて小声になる。
しかしクローエさんは至極真面目な顔をして頷く。

「そうでしたの。実は私もショーンを探していたのです。突然出て行ってしまって心配ですもの。良かったら一緒に探しましょう」
「ク、クローエさん…」

優しい言葉にジーンとしてしまう。

「ずっと気になっておりましたが、私だけさん付けで呼ばれるのは悲しいです。どうぞクローエとお呼びください」
「う、うん。わ、分かったよ、ク、ク、クローエ…」

照れくさそうに微笑むクローエは可愛かった。
恋愛感情を抜きにしても見惚れてしまう。
通り過ぎる通行人の男たちも彼女をチラチラと気にしているが、隣の俺を見て不可解そうな顔をする。
ショーンもクローエのことが好きだったはずだ。
この可愛さに釣られてうっかり出て来てはくれないものだろうか。

「あ…このお店…」

クローエがある店で立ち止まる。
高級そうな宝飾店だ。

「ど、どう、どうかしたか…?」
「いえ、気になっている指輪が店の目立つ場所に飾られていたのですが、それが無くなっちゃってる…売れたのかしら。ちょっと寄っていいですか?」
「え…う、うん」

本当はそんなことよりショーンを優先させたかったが断り切れずに店に入る。

「こんにちは」
「これはこれはいらっしゃいませ、クローエ様」

顔見知りらしい店主とにこやかに挨拶を交わすクローエの後ろにぼんやりと突っ立っている。
どこもかしこも高級そうで場違い感が半端ない。

「やや!もしやそちらの男性はご婚約者である勇者様ですか?」
「こ、こ、こ、婚約者!?」
「いやだわ、違うって言ったじゃないですか」

頬を染めつつ否定するクローエと、それを微笑ましそうに見守る店主。
そういえば屋敷を出入りする商人もそんなことを言っていた気がする。
正直婚約者と誤解されるのは戸惑いを感じる。

「ところであの指輪は売れてしまったのですか?」
「ああ、大丈夫ですよ。クローエ様がお気に召したようなので取り置いております」
「でも私にはとても…」

こちらをチラリと見るクローエ。
俺は早くショーン捜しを再開させたくて頷いた。

「お、お、俺が買うよ。い、いくらかな」
「そんなっ…良いのですか?」
「流石は勇者様。こちらは金貨40枚でございます」
「じゃ、じゃあください」

店主が出してきた大きな宝石の乗った指輪。
確か手持ちにそれくらいならあった筈だと空間魔法を開こうとした時である。

「ちょっと待ってくれ」
「フェ、フェリクス」
「まぁ!」

突然現れたフェリクスにクローエさんが嬉しそうな声を上げる。

「たまたま君たちを見かけてね。それでマサキ。女性に軽い気持ちで指輪を贈るのは感心しないな」
「そ、そうか…」

フェリクスに厳しい表情で注意される。
言われてみると、確かにこういうことをするから誤解されるのかもしれない。

「街では君には美しい女性の婚約者がいるなんて噂になっているよ」

間違いなくクローエのことだろう。
彼女にも申し訳ないし、軽率な行動だったな。

「今回は俺が買うから」
「まぁ!フェリクス様がっ…ありがとうございます!!」

物凄く嬉しそうにお礼を言うクローエ。
目がハートになっている。
しかし結婚予定なのにフェリクスこそ、別の女性に指輪なんて贈って大丈夫なのだろうか。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。 また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

原作を知らないblゲーに転生したので生きるため必死で媚びを売る

ベポ田
BL
blゲームの、侯爵家に仕える従者に転生してしまった主人公が、最凶のご主人様に虐げられながらも必死に媚を売る話。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

処理中です...