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92魔王
応接室に俺とセイレスが並んで、フェリクスとクラリス・ドレイクが向かいに座った。
3人は緊迫した様子で、何事かとこちらも緊張してしまう。
「実は今日尋ねたのは、フェリクスから連絡を貰ったからなんだ」
「う、うん…」
ドレイクが切り出した話に唾を飲み込む。
「魔王の転生体を見つけたとな」
「て、転生体?」
「ああ。俺達はあの時、魔王を完全に滅ぼしたよな」
「う、うん。それは間違いない」
あの時は本当に死を覚悟して魔王に挑んだ。
今でも奴に勝てたのは奇跡だと思っている。
「しかしそれは一時的なことなんだ」
「ど、どういうことだ?」
困惑気味に問うと引き継ぐようにフェリクスが口を開いた。
「魔王は死なない。存在自体がこの世界の理に組み込まれているからだ。本来なら数千年と長い時間をかけて新たな魔王となり復活する」
フェリクスの視線が俺の隣、セイレスへと注がれた。
その表情は敵を目の前にした時と同じ厳しいものだった。
「だが今回は数年と置かずに復活した。恐らく俺達が倒してすぐに生まれ変わったと思われる。それがこのエルフの子供…セイレスだ」
「そ、そんなっ…セ、セイレスが魔王なんてこと、あ、あるわけない…!」
だって魔王は狂暴な顔つきで世界そのものを恨んでいるような…そんな悲しい生き物だった。
しかしセイレスは全然違う。この子は勉強を一生懸命頑張っていて、おやつの時間を楽しみにしている普通の子供だ。
俺が落ち込んだら心配してくれて頭を撫でてくれる優しい子だ。
「ど、ど、ど、どうしてそんなことが分かるんだよ!」
思わずフェリクスに食って掛かるが、彼は無言で悲しげにかぶりを振った。
ドレイクとクラリスに否定して欲しくてそちらに視線を移すが、二人もフェリクスと同じように悲しげな表情をしている。
「あのねマサキ。今日私たちが呼ばれたのは、その子が魔王か一緒に確認するためなの」
クラリスが俺を宥めるように殊更優しい声で切り出す。
しかし興奮状態の俺はその優しい声が余計に癪に障った。
「な、な、なんだよ確認って!お、俺はセイレスが魔王だなんて、ひ、ひどいこと、か、感じたことないぞ!」
「マサキは魔力量が凄まじいからこそ、魔力の質については鈍感なんだと思うの。だって膨大な魔力さえ注げばどんな難解な魔法も起動できるものね。でも普通の人間はそんな魔力は持っていない。少ない魔力でどうにかしなくてはならないからこそ、質が大切になってくる」
人間の保有できる魔力量は生まれた時から決まっており、それは死ぬまで変化しないとされている。
だから魔法を強化したいとき、この世界の人々が気にするのは魔力の質を高めることである。
少量の魔力で術を発動させられるように訓練で研鑽していくらしいのだが、確かに俺はそれをしたことがない。
いかに素早いスピードと判断能力で魔法を発動させられるかのみ考えていた。
「とはいえ貴方は魔力の質も完璧なの。美しい黄金色。こんなに輝いた魔力を持つ者は勇者以外に存在しないわ」
魔力に色…?
今まで魔力は感覚でとらえていたのでなんだかピンとこない。
「色で感じることが出来るのは魔力を研鑽し尽くした手練れだけだ。マサキは自分だけの言葉では納得しないだろうから一緒に確認してマサキに説明してほしいと俺達はフェリクスから頼まれたんだ」
「この子の魔力はね、凄く黒いの。漆黒と言っていいわ。魔物の中でも最上位の魔王でしかあり得ない…気分が悪くなるほど濃縮された魔力をしているわ」
セイレスを見て少し青い顔をするクラリス。
「最初に会った時は少し薄暗い色をしているだけだった。違和感はあったが、それだけだ。だが次に会った時、最初は前回と変わらなかった魔力が、マサキと部屋にこもった後に…確実に魔王と同等のものに変わっていた」
「あ…」
おそらくセイレスの性別が男に決定されたことが何か関係しているのだろうとピンとくる。
あの時確かフェリクスを待たせてセイレスを寝かしつけようとしていたんだっけ。
「その子を俺に預けて欲しい。悪いようにはしない。国を挙げて、今後より強大になるだろう魔力を封じる術を探してみようと思う」
「え…あ…」
咄嗟になんと返事をすればいいのか言葉に詰まった。
俺の困惑を悟ったのか、隣のセイレスが俺の胸にぎゅっと抱き着いてきた。
「僕は…魔王なんて知らないよ。僕はセイレスだ。魔王なんかじゃない」
話に夢中で、セイレスがどう感じるのかなんて気にする余裕がなかったことにようやく気付く。
泣きそうな顔のセイレスを包み込むように抱きしめ返した。
「わ、分かってる。お、俺も、セ、セイレスはセイレスだって思ってるよ。な、何があっても俺の可愛いセイレスだ」
「良かった…」
心底安心したように微笑むセイレスにフォローが送れたことが申し訳なくなる。
「わ、悪いけど、セ、セイレスは渡さない」
もし仮に本当にセイレスが魔王の生まれ変わりだったとしても、今はフェリクスへの不信感が拭えない。
とても渡す気にはならないし、俺の方でも調べてみることは出来る。
思わずフェリクスを睨みつけると、それに対してにこりと爽やかに微笑むフェリクス。
「だったらマサキも一緒に俺の国に行こう。そこでその子の保護者として見張っていればいい。それなら安心だろ?」
「んぐ…」
何を言われても突っぱねようと張り切っていたのだが、思わぬ譲歩に言葉を飲み込んでしまった。
3人は緊迫した様子で、何事かとこちらも緊張してしまう。
「実は今日尋ねたのは、フェリクスから連絡を貰ったからなんだ」
「う、うん…」
ドレイクが切り出した話に唾を飲み込む。
「魔王の転生体を見つけたとな」
「て、転生体?」
「ああ。俺達はあの時、魔王を完全に滅ぼしたよな」
「う、うん。それは間違いない」
あの時は本当に死を覚悟して魔王に挑んだ。
今でも奴に勝てたのは奇跡だと思っている。
「しかしそれは一時的なことなんだ」
「ど、どういうことだ?」
困惑気味に問うと引き継ぐようにフェリクスが口を開いた。
「魔王は死なない。存在自体がこの世界の理に組み込まれているからだ。本来なら数千年と長い時間をかけて新たな魔王となり復活する」
フェリクスの視線が俺の隣、セイレスへと注がれた。
その表情は敵を目の前にした時と同じ厳しいものだった。
「だが今回は数年と置かずに復活した。恐らく俺達が倒してすぐに生まれ変わったと思われる。それがこのエルフの子供…セイレスだ」
「そ、そんなっ…セ、セイレスが魔王なんてこと、あ、あるわけない…!」
だって魔王は狂暴な顔つきで世界そのものを恨んでいるような…そんな悲しい生き物だった。
しかしセイレスは全然違う。この子は勉強を一生懸命頑張っていて、おやつの時間を楽しみにしている普通の子供だ。
俺が落ち込んだら心配してくれて頭を撫でてくれる優しい子だ。
「ど、ど、ど、どうしてそんなことが分かるんだよ!」
思わずフェリクスに食って掛かるが、彼は無言で悲しげにかぶりを振った。
ドレイクとクラリスに否定して欲しくてそちらに視線を移すが、二人もフェリクスと同じように悲しげな表情をしている。
「あのねマサキ。今日私たちが呼ばれたのは、その子が魔王か一緒に確認するためなの」
クラリスが俺を宥めるように殊更優しい声で切り出す。
しかし興奮状態の俺はその優しい声が余計に癪に障った。
「な、な、なんだよ確認って!お、俺はセイレスが魔王だなんて、ひ、ひどいこと、か、感じたことないぞ!」
「マサキは魔力量が凄まじいからこそ、魔力の質については鈍感なんだと思うの。だって膨大な魔力さえ注げばどんな難解な魔法も起動できるものね。でも普通の人間はそんな魔力は持っていない。少ない魔力でどうにかしなくてはならないからこそ、質が大切になってくる」
人間の保有できる魔力量は生まれた時から決まっており、それは死ぬまで変化しないとされている。
だから魔法を強化したいとき、この世界の人々が気にするのは魔力の質を高めることである。
少量の魔力で術を発動させられるように訓練で研鑽していくらしいのだが、確かに俺はそれをしたことがない。
いかに素早いスピードと判断能力で魔法を発動させられるかのみ考えていた。
「とはいえ貴方は魔力の質も完璧なの。美しい黄金色。こんなに輝いた魔力を持つ者は勇者以外に存在しないわ」
魔力に色…?
今まで魔力は感覚でとらえていたのでなんだかピンとこない。
「色で感じることが出来るのは魔力を研鑽し尽くした手練れだけだ。マサキは自分だけの言葉では納得しないだろうから一緒に確認してマサキに説明してほしいと俺達はフェリクスから頼まれたんだ」
「この子の魔力はね、凄く黒いの。漆黒と言っていいわ。魔物の中でも最上位の魔王でしかあり得ない…気分が悪くなるほど濃縮された魔力をしているわ」
セイレスを見て少し青い顔をするクラリス。
「最初に会った時は少し薄暗い色をしているだけだった。違和感はあったが、それだけだ。だが次に会った時、最初は前回と変わらなかった魔力が、マサキと部屋にこもった後に…確実に魔王と同等のものに変わっていた」
「あ…」
おそらくセイレスの性別が男に決定されたことが何か関係しているのだろうとピンとくる。
あの時確かフェリクスを待たせてセイレスを寝かしつけようとしていたんだっけ。
「その子を俺に預けて欲しい。悪いようにはしない。国を挙げて、今後より強大になるだろう魔力を封じる術を探してみようと思う」
「え…あ…」
咄嗟になんと返事をすればいいのか言葉に詰まった。
俺の困惑を悟ったのか、隣のセイレスが俺の胸にぎゅっと抱き着いてきた。
「僕は…魔王なんて知らないよ。僕はセイレスだ。魔王なんかじゃない」
話に夢中で、セイレスがどう感じるのかなんて気にする余裕がなかったことにようやく気付く。
泣きそうな顔のセイレスを包み込むように抱きしめ返した。
「わ、分かってる。お、俺も、セ、セイレスはセイレスだって思ってるよ。な、何があっても俺の可愛いセイレスだ」
「良かった…」
心底安心したように微笑むセイレスにフォローが送れたことが申し訳なくなる。
「わ、悪いけど、セ、セイレスは渡さない」
もし仮に本当にセイレスが魔王の生まれ変わりだったとしても、今はフェリクスへの不信感が拭えない。
とても渡す気にはならないし、俺の方でも調べてみることは出来る。
思わずフェリクスを睨みつけると、それに対してにこりと爽やかに微笑むフェリクス。
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