ツインデッド・オルド・オール 20XX年

赤沼 夜

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第13話 旅館

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 歩いて数十分、目的の旅館に到着した。

「もう疲れた、なんで移動手段が徒歩しかないのよ……」
「さっきも言ってたぞ、金持っているなら、車ぐらい買えばいいんじゃないのか?」
「車はお金だけあっても意味無いのよ。今支配者に手配してるところよ」

 支配者か……。
 こいつが支配者の強化実験の末あの力を手に入れた。つまり、リーアは支配者の兵器と言える存在ということだ。そんな敵と一緒に行動していてもいいのだろうか、そもそもなんで、こいつと行動する事になっているだ。

「ほら、何止まっているのよ、行くわよ」

 旅館に入り、入館の手続きを完了したら、仲居案内された。廊下を歩いている時に、窓の先を見ると、大きな池に鯉が泳いでおり、小さい橋があって、渡ることが出来るみたいだ。
 仲居の人も日本人だった。日本にいる訳だから、日本人と会うのは普通のはずなんだが、どうしても慣れない。
 通された部屋は床が畳で襖があり、外には小さい池があった。

「今頃かもしれないんだが、お前の抹殺命令は取り下げられたのか?」
「京都に到着した時点で時間切れで取り下げられたわ」
「その……ペナルティとかあるのか?」
「もともと、私を抹殺できるとは支配者も思ってないと思うわよ。私の性能テストみたいな感じだと思うわ」
「つまり、俺達レイブンシャフトは支配者の実験に付き合わされただけだったのか」
「聞きたい?」
「……何を?」
「なんで、松永が私を必死になって助けたのか」

 俺が必死になってリーアを助けた理由、思い浮かぶのはリーアが震えている姿だった。でも、それで、自分の仲間を裏切るほどだったのか、今でも疑問には思っていた。

「松永、貴方洗脳されているわ」
「は?」
「貴方が支配者の車で私のところまで案内されたのよね?」
「いや、東京防衛隊の日本人だったぞ?」
「ふーん、そういうこと、その東京防衛隊の人は支配者本人だと思うわ」
「あの人が支配者……!?」

 支配者は人の前に現れる時は、身体を太い鉄で覆っており、移動する時は飛んでいたという噂だけ聞いた事がある。

「それだと、支配者は日本人って事になるんだが……?」
「私が知っている支配者は日本人じゃ無かったわ、髪色はラベンダーだったもの」
「じゃあ、変装していたのか……」
「車に乗っている時に違和感を感じなかったかしら? 匂いとか」
「匂い……」

 あまり思い出したくないが、あの時の状況を思い出して見る。
 あの変な事を話していた人物が支配者だった可能性があるのか、俺はあの時、変な事を言い出した東京防衛隊の人の話を聞き流す事を決めて、降りた時に確か、変な気分になった。そして、変な匂いが漂っているんじゃないかと思っていた。

「確かに変な匂いがしたような記憶がある」
「多分それだと思うわ」
「匂いで洗脳をした、と言いたいのか? しかもリーアを守るみたいな具体的な事を?」
「別に洗脳をする時に、人物を固定しなくてもいいと思うわよ。例えば、次に会う女性を守りたくなるみたいな感じとかかしら」
「なるほど」

 匂いで洗脳ができるのか、正直俺には分からないが、今まで謎技術を見てきたんだ。きっと有り得るのだろう。

「つまり……俺は支配者の思考通りまんまと乗せられたというわけか」

 ため息をつきたがら、畳に倒れ込んだ。

「思い出してみて、貴方が夢でリーアと会った時、どんな感じだったかしら」
「えーと、仲間だったな」
「あとは? 恋人だったの?」
「いや、恋人ではなかったな」

 確かに俺は夢で、一緒行動を共にしていたが、別に特別親しい訳ではなかった気がする。

「夢の中で、恋人でもない相手、貴方は女性が悲しんでいたら、仲間を捨ててでも助ける人なのかしら」
「それは……どうだろう」
「仲間を捨てて、あまり知らない女性を助ける人がいたら、正気を疑うわね」
「なら……それが事実なら、俺はどうすればいいんだ」
「レイブンシャフトに洗脳されてました、とでも言えばいいんじゃないかしら」
「あー、とりあえず、俺は温泉に行ってくる」
「いいんじゃないかしら」
 
 俺は温泉がある方に歩き出した。とりあえず頭の整理をしたかった。
 温泉は個室風呂や大浴場、大浴場の外に行くと、露天風呂があった。サウナもあるみたいだ。
 身体を洗い、露天風呂で景色を見ながら浸かる事にした。

「はぁー、これが温泉かぁー、さて、どするか……」
 
 温泉に浸かりながら、考える事にした。
 京都に入った時に知ったが、俺はもうレイブンシャフトから除名されている。もし俺が洗脳されていたんだと言っても、俺の会話などは保存されており、あの時の俺は他人から見たら、洗脳されているようには見えないはずだ。言動におかしいところは無かったと思う。それに、やったのはリーアだが、レイジの片腕を無くして、森咲を車から突き飛ばしてしまった。それを近くで見ていた癖に何も出来なかった事を他の仲間達はどう思うだうか。
 レイブンシャフトから離れるという選択をした時、問題はまだある。洗脳でリーアを助けたという事実、その事が引っかかり、リーアから離れるという選択肢はあるが、そうした場合は俺が生き延びることができるのかは分からない、今までレイブンシャフトにいたから、ご飯を食べれて、仕事ができて、お金をもらい、生活ができていた。
 最近色々あり、俺の貯金も減ってきている。俺は他の生き方を知らない、そもそも日本人が日本で生きていくのが厳しいという、よく分からない状況が現実に存在している。だから、貴族のリーアと一緒に居た方が、まだ俺の人生はましかもしれない。
 1つ疑問があるとすれば、夢の方で会っていたリーアは俺と一緒に行動する理由は分かるが、戦闘狂の方のリーアは俺とは一切関わり合いがない、それなのになぜ俺と行動しているのだろうか。

 ――――

 初めての温泉に到着した私はまず、身体を洗う事にした。鏡を見ると、私の顔と身体が映し出される。顔や髪は好きなんだけど、身体は嫌いだ。いつも見ても貧相な身体付きをしている。さっき廊下やロビーなどをほっつき歩いていたら、女同士の話し声が聞こえてきて、胸は揉むと大きなるとか、ならないとか、そんな馬鹿な話をしていた。しかし、もし大きくなる可能性があるなら、やってみてもいいかもしれない。
 鏡で自分の身体を見ながら、胸を揉んでみる。何をやっているのだろうと、虚無感に襲われながら、揉んでいると、鏡に金髪が映し出される。

「ん? おっぱい揉んで何をしてるの?」
「貴方には関係な……いわ?」

 後ろを振り向くと、そこには金髪がいた。

「な、なんで貴方がここにいるのかしら!?」
「なんでって、私もここに泊まっているからさ!!」
「最悪……」

 身体を洗い、逃げるように露天風呂に移動した。

「なんで逃げるんすかーー?」
「ついて来ないでくださいな」
「えー!!」

 つい、金髪女の身体を見ると、服の上からでも大体わかっていたけど、巨乳だった。
 私と背はあまり変わらない癖に、なぜこんなにも差があるのか、分からない。
 
「あーうるさい!!」

 露天風呂を後で入る事にして、サウナに移動した。
 私の身体は特殊の為、暑さは普通の人よりも強いはず、ここで金髪女がギブアップするまでいるしかないわ。

「サウナ……いいねー」

 予想通りに入ってきた。

「貴方も物好きね。なら勝負と行こかしら」
「望むところや」

 他にお客さんはいなく、金髪女がいなくなるのを待つ戦いに突入した。
 最初は一人で騒いでいたが、次第に口数が減ってきた。

「あら、もう、諦めた方がいいんじゃないかしら?」
「まだ、俺は行ける……ぜ」

 さっさとギブアップすると思いきや、全然諦めようとしない。10分……20分……30分……。
 私はまだ行けるが、このままでは温泉を楽しむ時間が減っていくばかりになる。私にはまだ夕飯も残っている。
 こちらから、ギブアップ宣言をしようと、金髪女の方を見ると、倒れていた。

「勝った……」

 手を前に出して、勝利のポーズを決めた。長い髪が揺れる。
 金髪女をテキトーに担いで、更衣室の方に投げた。
 その後、私は水風呂のほうに向かった。
 サウナ後に水風呂に入って、その後外に行くと、整うらしいという噂を聞いたことがあった。
 水風呂に入ると、完全に温まった身体に冷たい水の刺激が身体全体を襲った。
 そして、頭が真っ白になっていく、自然と身体を起こして、外に向かい、身体を横にした。
 すると、身体がふわっと軽くなり、全身に血が巡っていく、思考すらもふわっとしていった。

「これが、整う……」

 ――――

「なんかリーア遅いな」

 作務衣を着て、羽織を羽織りながら、座布団に座りながら待っていると、トコトコ足音が聞こえてきた。

「えーと、サウナで整った後でなんか、人格が変わってました」

 現れたのはツイテール姿のリーアだった。
 
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