物の怪の宴

いーすと

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第1章

第4話「天使軍のあいつ」

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俺は、イライザ・クイーンが嫌いだ。大嫌いだ。


嫌いな理由はいくつもある。


強引で、破天荒で、うるさくて…でも1番の理由は、あいつが俺を…裏切ったことだ。


───


俺が生まれたのは貴族の家庭だった。そのため、自分のことは何でも執事やメイドにやってもらえた。


兄弟は兄と姉が一人づついて、兄には随分可愛がってもらった記憶がある。姉は怖かったので逆らえなかった。


食事も遊びも何不自由なく、何か不満があればすぐに使用人がどうにかしてくれた。


しかし、俺はその生活が窮屈で仕方がなかった。


俺は自分のことは全て自分でやりたいタイプの人間だったので、貴族の生活は性分に合わなかったのだ。しかも、両親は俺への関心が非常に薄く、関係はいいとは言えなかった。


だから一刻も早く家を出ようと思って、受験する高等学校は実家からなるべく遠くて全寮制の所を選んだ。


その学校のレベルはとても高かったが、幸い勉強はできたので難なく入れた。


そして、家を出るときに「もう帰らない」と一言言っておいた。


たぶんその時父親は激怒していて母親は泣いていたと思う。


でもそんなことはいいんだ。もう俺は自由なんだ。そう思った。


そして花の高等学校生活1日目。


俺は学校の庭で女子に取り囲まれていた。


姉のことがあったので、正直女子が怖くてあまり好きではなかった俺にとってはこの状況は地獄だ。


まぁまぁ整った顔をしていることはなんとなく自覚はしていたが、まさかここまでとは…。


逃げ場を探そうと辺りを見渡すと、ふと校舎の影に目が止まった。


そこには1人の可愛らしい女の子が立っていて、こちらをじっと見つめていた。


俺はなぜだかその人に運命のような何かを感じた。どうしても今話をしなければと思った。


俺は取り巻きの人達に適当な言い訳をしてからそちらに向かってみた。


俺がその子の近くに行くと、その子は驚いたような顔をしてこちらを見た。


なんと話しかければいいかわからなかったので、とりあえず挨拶をしてみた。


「こんにちは。」


「…!こんにちは…」


「こちらを見ていたようだけど、何か用があった?」


「いえ、何も…ただ、なんの騒ぎか気になって…」


「そうか、うるさくしてごめん。あ、そういえばまだ名乗ってなかったな。俺の名前はシャルル・ブランシュ。1年生。あんたは?」


「あ、あたしはイライザ・クイーン。あたしも1年生。よろしくね…」


「イライザ。こちらこそよろしく」





この日、イライザと交わした会話はそれだけだった。


そして会話が終わった後に気づいた。


今まで女子に対して感じていた怖さが、彼女には感じられなかった。


恐る恐るではなく、素の自分で話せた。


それが嬉しくて、俺はどんどん彼女に話しかけた。


彼女も俺に慣れてきたのか素の自分を出すようになった。


彼女は非常に明るく、ちょっと天然なところもあり見た目に負けず劣らず可愛らしい性格をしていた。


俺はイライザと話す度に彼女の魅力に引き込まれた。そうしていつの間にか…俺は彼女に恋をしていた。


奇跡的に彼女も俺のことが好きになったらしく、高校2年生の秋に向こうから告白してきた。


こうして、俺たちは恋人同士となった。


最初こそイライザを目の敵にしていた俺の取り巻き達も、最終的にはイライザの虜になっており、「シャルル様のことはイライザ様にしか任せられない」などと言っていた。


高校、大学と卒業した俺たちは、それぞれ天使軍、悪魔軍に属することになった。


それでも依然として恋人同士の関係は続いていた。


付き合って50年ほど経つまでは、俺たちは非常に仲のいいカップルだった。


しかし、ある日を境にイライザは俺を避けるようになった。


なぜだ?


いくら考えても思い当たる節はどこにもなかった。


こんな自分勝手な性格だから嫌われてしまったのだろうか?


しかしその半年後、俺はその原因を目の当たりにすることになる。


俺はたまたま前を通りかかった宝飾店の中に、彼女の姿を見つけた。


彼女は俺の知らない男と楽しそうに話をしていて、お互いに手を触りあったりしていた。


そうか…そうだったのか。


俺は浮気されていたんだな。


俺は何も言わずそそくさとそこを立ち去り、家に帰って震えながら泣いた。


彼女が浮気していたなんて。


その週はショックで無気力になっていた。


その翌週になると、だんだん怒りが込み上げた。


俺は自分が思うより随分女々しい性格だったようだ。


俺に関心がなくなったなら、ふってくれればいいものを浮気するなんて。


許せない…そう思った。


そして、その日俺はイライザに浮気の現場を見たことを話した。彼女は浮気などしていないというので、大喧嘩になった。


そしてそのまま拗れがなおらないまま、今に至る。


今考えても理不尽だと思う。


あんなに、俺は彼女のことが好きだったのに。


もうあの事件から1000年以上経つというのに、まだ心には深く傷が残っていて…会う度に喧嘩をしてしまう。


───

俺は表面上ではイライザ・クイーンが嫌いだ。大嫌いだ。


でもいちばん嫌いなのは…心の奥では彼女を嫌いになりきれないでいる、弱くて情けない、


自分だ。




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