物の怪の宴

いーすと

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第1章

第6話「変人と気まぐれ」

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僕がイライザ・クイーンと名乗る女に会った日の夜、眠りにつこうとしていた時だった。


僕の近くに風の魔力を持つ天使の気配がした。しかもイライザさんに負けずと劣らずかなり大きな魔力を持っているようだ。


もう慌てても仕方がないので、このままここにじっとしていることにした。


すると向こうがこちらに気づいたのか、「ランドルフ・ギャレットか」と話しかけてきた。


僕ははいそうですとだけ答えてその場を立ち去ろうとした。


きっとこの人も天使軍の人なんだろう。そうだったとしたら、面倒くさい…


「おいおい、ちょっと待て」


引き留められたので、しかたなく話をすることにする。


「はあ」


「こんな夜分にすまないな。私はシルヴァン・ルルーシュ。天使軍に所属している。少し話がしたいんだが構わないか」


「眠いので手短にお願いします」


「ふふふ…お前のようなやつ、嫌いじゃないな…わかった、話したいことだけ話そう。これでも食べながら」


そう言って彼は僕に蜜柑を差し出した。


「え?」


何故?確かに果物は好きだけど…


「お前好きだろう、果物。私は身の回りの大体のことは知っているんだ」


えぇ、


「気持ち悪…」


「ふふふ、率直な感想をどうも。」


「それで、話ってなんですか?天使軍のことですか?」


「ああ、それについてだが、私は天使軍に入るように言いに来たのではないから安心してくれ。私はたんに、お前と話をしてみたかっただけだ。イライザから、実に興味深い人物と聞いているからな。」


「そ、そうですか…僕が、興味深い人物?」


「そうだ。まぁ大した話もないが、老人の気まぐれだと思って聞いてくれ。」


「まぁ、どうせ暇なので構わないですけど…」


「ありがとう。ではイライザとシャルルの関係の話と、美味しい果物の見分け方の話と、私のおすすめの本の話の中から好きなだけ選んでくれ」


「全部気になるんですけど…なんか一つだけ生々しくないですか?」


「ふふ、気のせいだ。全部気になるなら全部話そう。まず1つ目の話だが─」


───


そこで僕は衝撃の事実を知ることになる。


あの2人の仲が悪いのって…恋人同士のいざこざだったのか!?


意外すぎる。2人とも1回しか会ったことないけど。


あぁ…面倒くさい……巻き込まれたくないな。


「そういうわけで、2人はすこぶる仲が悪い。」


「へえ…意外です。でもこれって知ってどうするんですか?というか僕に話してよかったんですか?」


「まあ構わないだろう、天使軍と悪魔軍に所属している者の間では有名な話だからな。」


「そうなんですか…」


実は…断るのも悪いので1つ目の話を聞いてみたはいいが、僕はこの話にはそれほど興味がなかった。


果物好きの僕としては2つ目の話が聞きたくてしょうがなかった。


「それでその、2つ目の話は…」


「ああ、そうだな、2つ目は…」


────


彼は話の内容というより、話し方が上手かった。


まるで、人前で話すような仕事をしていたかのように─人の興味を引くのが上手だ。


頭が良いんだろうな、とも感じた。


見た目も、切れ長の目にグレーの長髪と知的で高貴そうな感じだった。前に出会った2人とはタイプの違う美形である。


…もしかして天使軍とか悪魔軍に入るのって顔が整ってることが条件だったりするのか?


とかなんとか考えているうちに、彼の話は終了した。


────


「───というわけだ。どうだ、面白いだろう。」


「はい、すごく面白かったです。ルルーシュさんは話すのが上手なんですね。」


「そうか?それは嬉しい言葉だな。確かに、人前で話すのは慣れているがな。…おっと、もうこんな時間か。私はそろそろお暇しなければならないようだ。こんな夜遅くまですまないな。」


そう言って彼は僕に背を向けて、飛び立とうとした。


僕はほぼ無意識に彼を呼び止めていた。


「待ってください、ルルーシュさん」


「…なんだ?」


「どうして…今日この時間に僕に話をしに来たのですか?興味があっただけなら、別にわざわざ今来なくてもいいんじゃ…」


「なかなか鋭いな、少年。…なんで、か。特に深い理由はない。年寄りの気まぐれだ。そうだな、理由をつけるとするならば…」


そこでルルーシュさんはこちらを見た。


「お前に関する情報を集めたくてな。」


僕に関する情報?


「どういうことですか?」


「今は深く追求しないでくれるか。じきにわかる。」


うーん、なんともすっきりしないけど仕方がないか。


「そうですか…わかりました。引き止めてすいません。」


「いや、構わん。それでは失礼する、良い夢を。」


そう言って微笑むと、ルルーシュさんは飛び立った。


「シルヴァン・ルルーシュ…変な人。」


小声で呟いて、僕は眠りにつくのだった。


───


彼のもとを訪ねた本当の理由は他にあった。それが何なのかは、彼にはまだ言えない。


私は知っている、彼に関わる重要な情報を。


「黙ってて悪かったな、でももう少し秘密にさせてくれ、ランドルフ・ギャレット。この秘密を打ち明けるまでは、必ずお前の命を守ることを約束する。」


本人に聞こえてはまずいので、小さな声で呟いた。


もう少し待っていろ。そうすればお前の…を…した人がわかるから…。



───
☆キャラクター紹介☆

シルヴァン・ルルーシュ
(Sylvan Lelouch)
男 2500歳 184cm
天使軍。元々は天使軍のボスだった。
現在は(歳をとって面倒になったため)その地位をイライザに譲る。
貴族出身だがそのことを隠している。
性格は寡黙でちょっと不思議ちゃん。極度の面倒くさがりで面倒ごとが大嫌い。超猫舌。インドア派で日焼けと虫が嫌い。
分析能力が高く、様々な作戦を立てるのが得意。また、騒ぐイライザをなだめる役も担っている。
好きなものは紅茶で、嫌いなものは熱いものとキノコ類。趣味は読書。
魔力属性は風。(副属性は土)

急に思いついたので描いた立ち絵↓



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