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第9話 ゾンビ、図書館に行く
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大学の図書館は白いドームみたいな新しくて格好良い建物だった。
そして、図書館の手前にはカフェがあった。
カフェはガラス張りだ。そのガラスの壁の外側で、ダンスサークルっぽいゾンビ学生達が、手足をぶらぶら動かしていた。
たぶん、昔は軽快な音楽に合わせてダイナミックに踊っていたんだろうけど、今はゾンビだから、ゾンビ踊りにしかみえない。
(そういえば、お腹減ったな。それに、むちゃくちゃ喉が渇いた……)
暑いのにフルフェイスヘルメットをかぶって、長袖長ズボンはもちろん、ネックウォーマーに手袋までしている俺は、汗びっしょりだ。
このままじゃ、熱中症で死にそう……。
俺は図書館の前に、まずカフェに入ることにした。
カフェの中には何組かの客がいた。
もちろん、全員ゾンビだ。
すぐそこにいる女子大生ゾンビたちはケーキをつつきながら「うー」「あー」と永遠に続きそうな会話を続けている。
当然、俺には目もくれない。
俺は適当に席を選んで、ヘルメットと手袋を外した。
「ふはぁー。ようやく脱げた。暑かった」
俺はまずオレンジジュースをコップに注いで一気飲みしてから、食べ物を選んだ。
ここはまだ感染拡大して間もないから、たくさんおいしそうなものがある。
俺はソーセージロールとキッシュを選んで優雅に早めの夕飯をとった。
途中、俺は客のゾンビ達に店員だと思われたらしくて、「うー」とか「あー」とか注文されて、なぜかコーヒーやケーキを運ぶハメになったけど。
食後、俺は図書館に向かった。
当たり前だけど大学の図書館には大量の本が並んでいる。
俺は館内をあちこち歩いてまわった。まずはここが安全な場所かどうかを確認する必要があるから。
本棚の奥には自習用の机が並んでいて、ところどころに本を枕に寝ているゾンビがいた。
図書館の2階には、分厚い本を一列に並べて本でドミノ倒しをやろうしている学生ゾンビがいた。
俺を見ると、学生ゾンビはニカッと笑って、最初の本を指でつついて倒した。
本はパタバタ倒れて、数メートル進んだところで途中で止まってしまった。
俺は拍手をしたけど、ゾンビ学生は不満そうに「うー」と唸って、倒れた本に這い寄って、ゆっくりとした動作でもう一度本を並べだした。
別の場所には、本でピラミッドを作っている学生や、積み木崩しをしている学生もいた。
一通り図書館の中をチェックして、俺は判断した。
ここは平和だ。非感染者も隠れていない。
ゾンビ学生が好き放題にしているだけだ。
俺は安心して、長椅子に寝転がった。
せっかく図書館に来たけど、疲れすぎて、本を探す気になれない。
なんかここのゾンビはみんな遊んでいて、勉強する雰囲気じゃないし。
長椅子でリラックスしていたら、俺はいつの間にか、眠ってしまった。
スマホが鳴った音で、俺は目を覚ました。
スマホを見ると、さっき連絡先を交換したカラからメッセージが入っていた。「ねぇねぇ。お話しよー」というメッセージだ。
俺が返信をする暇もなく、すぐにスマホが鳴りだした。
カラからの着信だ。
俺は寝ぼけたまま電話に出た。カラの声が聞こえた。
「やっほー。フミピョン、元気?」
カラは元気そうだった。俺は……眠い。
「あー。うん。おはよう」
「今、夜だよ?」
「あ、まだ夜だったのか……」
俺は起き上がって、辺りの様子を確認した。図書館の電気はついたままだから、館内は明るい。だけど、たしかに窓の外は真っ暗だ。
「フミピョン、ビデオオンにしてよ」
カラのリクエストは、もちろん、きっぱり断らないといけない。
「いや、俺、顔出しNGなので」
今は素顔だから、ゾンビだってバレちゃう。
「いいじゃん。そうだ。フミピョンって何歳? あたしは18」
「俺は17」
「へー。ほぼ同じとしだね」
俺はカラにたずねた。
「高3? それとも大学生?」
「院生だよ。あたし飛び級たくさんしてるから」
「大学院生!?」
びっくりだ。
「そうだよ。なんかみんなびっくりするんだけど。なんで?」
「さぁ……」
カラはこんなんだけど、超優秀なのかも。
というか、空気読めない変な人って、頭いいのかも。中林先生もそうだから。
「てかさ、フミピョン。マジたすけにきてくれてありがとね。って、言いたくて、電話かけたんだー」
「どういたしまして。でも、別にわざわざ電話かけてくれなくても」
「だって、バリ失礼じゃん。テゴッチとかザワチンとか。あたしはほんと、フミピョンに感謝してるんだ。ニッシーは避難できないと、もうすぐ死んじゃうから」
俺は思わず聞き返した。
「ニッシーって、西浦先生? 西浦先生が死んじゃうってどういうこと?」
中林先生はそんなことは一言も言っていなかった。
カラは俺に説明した。
「ニッシーは腎臓が悪くて、数日に1回透析を受けないといけないの。早く病院のあるところに避難しないとマジヤバ。パンデミックで困るのってさ、感染した人だけじゃないんだよね。病院に行きながら元気に生きていた人が治療を受けられなくなって死んじゃうんだもん」
「そっか。そういう状態だったのか……」
俺は心の中で中林先生を罵った。
西浦先生の状態を知ってか知らないでか、中林先生は平然と見殺しにするところだったのだ。
「フミピョンが来なかったら、あたしが駐車場まで強行突破しようかって考えてたんだ。来てくれてラッキー♪」
「強行突破って、どうやって?」
まさか、走り抜ける気か?
ゾンビは鈍いからうまくやれば逃げ切れるだろうけど。
俺がそんなことを考えていると、カラは言った。
「ここ、工学部棟だから、材料と工具はわりとあるんだよね。適当に全身を覆う装甲みたいなのつくればいけるかなって。で、アルミ板で大きな箱を作ってみたんだよ」
「なるほど。要は、噛まれたりしなければいいんだもんな。箱に入っていれば、たしかにいけるかも」
箱をかぶって移動って、見た目はかなり滑稽だけど。
そこで、カラは言った。
「それより、フミピョンって、なんでゾンビに襲われないの? やっぱ、すでに感染してる系? 誰にも言わないから教えてよ。いつからゾンビなの? アランに改造されたの?」
きかれたくない質問がきてしまった。俺はそっけなく答えた。
「ノーコメントです」
「いいじゃん。いいじゃん。教えてよ」
俺はきっぱり断った。
「俺の秘密は、そう気軽に教えられるものじゃありません」
「じゃ、あたしの秘密を教えてあげるから、交換で教えて?」
「カラの秘密?」
俺はつい、聞き返してしまった。
そして、図書館の手前にはカフェがあった。
カフェはガラス張りだ。そのガラスの壁の外側で、ダンスサークルっぽいゾンビ学生達が、手足をぶらぶら動かしていた。
たぶん、昔は軽快な音楽に合わせてダイナミックに踊っていたんだろうけど、今はゾンビだから、ゾンビ踊りにしかみえない。
(そういえば、お腹減ったな。それに、むちゃくちゃ喉が渇いた……)
暑いのにフルフェイスヘルメットをかぶって、長袖長ズボンはもちろん、ネックウォーマーに手袋までしている俺は、汗びっしょりだ。
このままじゃ、熱中症で死にそう……。
俺は図書館の前に、まずカフェに入ることにした。
カフェの中には何組かの客がいた。
もちろん、全員ゾンビだ。
すぐそこにいる女子大生ゾンビたちはケーキをつつきながら「うー」「あー」と永遠に続きそうな会話を続けている。
当然、俺には目もくれない。
俺は適当に席を選んで、ヘルメットと手袋を外した。
「ふはぁー。ようやく脱げた。暑かった」
俺はまずオレンジジュースをコップに注いで一気飲みしてから、食べ物を選んだ。
ここはまだ感染拡大して間もないから、たくさんおいしそうなものがある。
俺はソーセージロールとキッシュを選んで優雅に早めの夕飯をとった。
途中、俺は客のゾンビ達に店員だと思われたらしくて、「うー」とか「あー」とか注文されて、なぜかコーヒーやケーキを運ぶハメになったけど。
食後、俺は図書館に向かった。
当たり前だけど大学の図書館には大量の本が並んでいる。
俺は館内をあちこち歩いてまわった。まずはここが安全な場所かどうかを確認する必要があるから。
本棚の奥には自習用の机が並んでいて、ところどころに本を枕に寝ているゾンビがいた。
図書館の2階には、分厚い本を一列に並べて本でドミノ倒しをやろうしている学生ゾンビがいた。
俺を見ると、学生ゾンビはニカッと笑って、最初の本を指でつついて倒した。
本はパタバタ倒れて、数メートル進んだところで途中で止まってしまった。
俺は拍手をしたけど、ゾンビ学生は不満そうに「うー」と唸って、倒れた本に這い寄って、ゆっくりとした動作でもう一度本を並べだした。
別の場所には、本でピラミッドを作っている学生や、積み木崩しをしている学生もいた。
一通り図書館の中をチェックして、俺は判断した。
ここは平和だ。非感染者も隠れていない。
ゾンビ学生が好き放題にしているだけだ。
俺は安心して、長椅子に寝転がった。
せっかく図書館に来たけど、疲れすぎて、本を探す気になれない。
なんかここのゾンビはみんな遊んでいて、勉強する雰囲気じゃないし。
長椅子でリラックスしていたら、俺はいつの間にか、眠ってしまった。
スマホが鳴った音で、俺は目を覚ました。
スマホを見ると、さっき連絡先を交換したカラからメッセージが入っていた。「ねぇねぇ。お話しよー」というメッセージだ。
俺が返信をする暇もなく、すぐにスマホが鳴りだした。
カラからの着信だ。
俺は寝ぼけたまま電話に出た。カラの声が聞こえた。
「やっほー。フミピョン、元気?」
カラは元気そうだった。俺は……眠い。
「あー。うん。おはよう」
「今、夜だよ?」
「あ、まだ夜だったのか……」
俺は起き上がって、辺りの様子を確認した。図書館の電気はついたままだから、館内は明るい。だけど、たしかに窓の外は真っ暗だ。
「フミピョン、ビデオオンにしてよ」
カラのリクエストは、もちろん、きっぱり断らないといけない。
「いや、俺、顔出しNGなので」
今は素顔だから、ゾンビだってバレちゃう。
「いいじゃん。そうだ。フミピョンって何歳? あたしは18」
「俺は17」
「へー。ほぼ同じとしだね」
俺はカラにたずねた。
「高3? それとも大学生?」
「院生だよ。あたし飛び級たくさんしてるから」
「大学院生!?」
びっくりだ。
「そうだよ。なんかみんなびっくりするんだけど。なんで?」
「さぁ……」
カラはこんなんだけど、超優秀なのかも。
というか、空気読めない変な人って、頭いいのかも。中林先生もそうだから。
「てかさ、フミピョン。マジたすけにきてくれてありがとね。って、言いたくて、電話かけたんだー」
「どういたしまして。でも、別にわざわざ電話かけてくれなくても」
「だって、バリ失礼じゃん。テゴッチとかザワチンとか。あたしはほんと、フミピョンに感謝してるんだ。ニッシーは避難できないと、もうすぐ死んじゃうから」
俺は思わず聞き返した。
「ニッシーって、西浦先生? 西浦先生が死んじゃうってどういうこと?」
中林先生はそんなことは一言も言っていなかった。
カラは俺に説明した。
「ニッシーは腎臓が悪くて、数日に1回透析を受けないといけないの。早く病院のあるところに避難しないとマジヤバ。パンデミックで困るのってさ、感染した人だけじゃないんだよね。病院に行きながら元気に生きていた人が治療を受けられなくなって死んじゃうんだもん」
「そっか。そういう状態だったのか……」
俺は心の中で中林先生を罵った。
西浦先生の状態を知ってか知らないでか、中林先生は平然と見殺しにするところだったのだ。
「フミピョンが来なかったら、あたしが駐車場まで強行突破しようかって考えてたんだ。来てくれてラッキー♪」
「強行突破って、どうやって?」
まさか、走り抜ける気か?
ゾンビは鈍いからうまくやれば逃げ切れるだろうけど。
俺がそんなことを考えていると、カラは言った。
「ここ、工学部棟だから、材料と工具はわりとあるんだよね。適当に全身を覆う装甲みたいなのつくればいけるかなって。で、アルミ板で大きな箱を作ってみたんだよ」
「なるほど。要は、噛まれたりしなければいいんだもんな。箱に入っていれば、たしかにいけるかも」
箱をかぶって移動って、見た目はかなり滑稽だけど。
そこで、カラは言った。
「それより、フミピョンって、なんでゾンビに襲われないの? やっぱ、すでに感染してる系? 誰にも言わないから教えてよ。いつからゾンビなの? アランに改造されたの?」
きかれたくない質問がきてしまった。俺はそっけなく答えた。
「ノーコメントです」
「いいじゃん。いいじゃん。教えてよ」
俺はきっぱり断った。
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