転生したおれ、悪役令嬢一家を守る! ……って決意したんだけど、その、おれ、ぬいぐるみなんだけど?

しゃぼてん

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第33話 テディベア、ずぶぬれでしばられる

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 いーやーだぁー!

 おれはひっしに逃げまどっている。

「まちなさーい!」

 いーやーだぁー! ぜったい、いーやーだぁー!

「もう! 早くあらわないといけないのに!」

 エリーにあらわれるのだけは、いーやーだー!


 おれ、血まみれテディベア。クリスティーナたんの家にもどったとたん、メイドのエリーに洗たくされそうになって、逃走中。

「ちょっと! ジャック! テディをつかまえて!」

「えー?」

 あ、ジャックだ。そうだ、おまえがあらえ!

「え? なに? テディがなんか言ってる気がする」

 そうだ! おまえがおれを洗え! 
 と、おれはてぶりでつたえた。

「ただ手を動かしてるだけでしょ! つーかまえた。さ! あらうわよ!」

 ノォーーー!

 ・
 ・
 ・

 ひぃ、ひぃ、ひどいめにあった……

「なかなか赤いしみがとれない! もう! なにこれ!」

 って、半ギレのエリーに、そりゃもう、はんぱなくひどいめにあわされた……

 その後、おれはつるされて干された。
 そして。

 カァ! カァ!

 またおまえカァー!
 つつくなぁー! くわえるなぁー! はこぶなぁー!

 というデジャヴな展開で、カラスに運ばれ、おれは今、ママさんの部屋の窓にひっかかっている。
 なんか、カラスにつつかれているときにロープがからまって、身動きできないのだ。

 ママさん、ベアトリスの声が聞こえた。

「私は自分が情けない。邪悪な闇のものの魔法に手も足もでず、気を失ってしまった」

「しかたがない。認めるしかない。邪悪なる闇のものの実力は我らをりょうがしている」

 チェスター様の声だ。

「だが、我らの敗北が決まったわけではない。あのテディベアの力があれば。あのテディベアの浄化の力は聖女をもしのぐだろう。あの洗脳に近い魅了技だけでも恐ろしい存在だが.......」

 ん? おれ? おれが聖女とくらべられてるー? まぁ、かわいさなら聖女にも負けないけどー?
 その時、まどわくにひっかかっていたおれは、誰かの手でもちあげられた。

「チェスター様。その聖女をしのぐテディベアはこちらでしょうか? ずぶぬれで、へんたいのごとくロープで全身をしばられていますが」

 この冷たい声は、チェスター様のメイドだな。
 でも、おれはへんたいじゃないぞー。しばったのはエリーだし、こんなにしたのはカラスだし。

「それだ」

 チェスター様の冷たい声も聞こえた。

「では、この、我らに残された希望のテディベアを乾かしてまいります。このままでは細菌がはんしょくして、最悪なぞうきんの臭いになるでしょう」

 えー。それは、おれも、いやだぁ。
 ぞうきんくさいテディベアなんてー。みんなにきらわれちゃーう。
 でも、チェスター様がメイドをとめた。

「少し待て。そのテディベアに話がある。いいか、テディ。あの邪悪なる闇のものは不滅だ。だが、封印することはできる。父上が古い文献をもとに封印のための魔道具を作成した。我々はそれを持って旧魔王城へ行き、やつを封印する。そのためには、闇を払うおまえの力が絶対に必要だ。だが、旧魔王城は危険な地にある。あの場所へ行って戻ってくるのは一流の冒険者でも難しいといわれる。今のクリスティーナではむりだ。クリスティーナはここに置いていく」

 ん-。チェスター様の言い分はわかるんだけど。
 あのクリスティーナたんがおとなしく家で待ってるわけないよ? みんなに置いていかれたら、きっと、ひとりで追いかけちゃうよ。

 おれがむりむり、という風に頭と手を動かしてたら、チェスター様のメイドが言った。

「テディベアは、拒否しているようです」

「クリスティーナを置いてお前だけ連れて行くことはできないと?」

 おれは何度もうなずいた。

「肯定しております」

「そうか.....。ならば、しかたがない。クリスティーナを守りながら旧魔王城へむかおう」

 ということになった。



 というわけで。

「いってきます。おとうさま」

「うう.....クリスティーナ。必ず無事に帰ってくるんだぞ」

「はーい」

 息子をゆうかいされ、いま、娘の旅だちを見送るパパさんの表情はとてもつらそうだ。てか、泣いている。
 でも、クリスティーナたんはとてもうれしそうだ。

 なんでって、今回の旅のメンバーは、ママさん、チェスター様、おじいさま、がそろっているのだ。ついでにジャックとメアリとミャオリーもいる。
 つまり、クリスティーナたんにとっては初めてかもしれないほど家族がそろった旅行になるのだ。パパさんはいないけど。

「じゃあね。おとうさま」

 おいてけぼりで号泣するパパさんに元気よく手をふって、クリスティーナたんは出発した。
 おれもクリスティーナたんのリュックから、おれを熱烈に見送るメイドたちに手をふっておいた。


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