もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
69 / 207
第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第69話 冬至祭パーティー(前)

しおりを挟む
 冬至祭の日の午後3時半すぎ。イーアはユウリといっしょにケイニスの部屋に行き、ドアをノックして呼んだ。

「ケイニスくん」

 10秒まっても返事はなかったけれど、イーアは「入るよー」と声をかけて、ドアをあけた。
 イーアが入ると、即座にケイニスの不満そうな声がひびいた。

「入っていいと言っていないだろ」

 ケイニスは部屋の中で不機嫌そうに立っている。
 気にせず、ユウリがケイニスをさそった。

「ケイニス、アイシャの家のパーティーに行こう」

 ケイニスは、しかめっ面で返事をした。

「金持ちのパーティーなんて、俺が行くところじゃない。ボンペール商会を知らないのか? 貴族と対等につきあえるほどの大金持ちだぞ?」

「それを言ったら、ぼくらだって場ちがいだけど。学校のみんなが集まるカジュアルなパーティーらしいから、だいじょうぶだよ」

 ユウリに続いて、イーアも言った。

「そうそう。みんなで行けば怖くないよ」

 ケイニスはじろじろとイーアを見て言った。

「恥(はじ)をかいてもしらないぞ。エルツはともかく、俺やおまえは、違うんだ」

「どういうこと?」

 イーアが聞き返すと、ケイニスは苦々しく言った。

「この黒い肌だ。奨学生試験の後で、魔導師たちからエルツと俺にきたオファーの数の違いを知っているか? エルツは俺より10も多かった。成績だけなら俺がトップなのに。この黒い肌を見て弟子入りさせようって魔導師は、ほとんどいなかったんだ。孤児であろうとエルツみたいに白い肌と青い目をもっていれば許される。でも、俺とおまえは違うんだ。俺達は、帝都で高級店に入ればぎょっとされ、路上で殺されても誰も気にしない。そういう人種なんだ」

 帝国では暗い肌色の者が差別される。
 それはイーアも知っていた。帝都ではただそこにいるだけでジロジロ見られたり、陰口《かげぐち》をたたかれたりすることも。

 それでも、イーアには実感があまりなかった。
 ナミンの家では人種なんて関係がなかった。
 グランドールでもそうだ。

「だいじょうぶだよ。アイシャの家だもん。来るのは学校のみんなだから、学校にいるのと同じだよ。それに、みんなでいっしょに恥をかけばいい思い出だって、昔ナミン先生が言ってたよ。ひとりじゃないから、だいじょうぶ。さ、行こう行こう」

 イーアはケイニスの腕をひっぱって、外へ連れ出した。


 学校の外の、いつも馬車がとまる所に、アイシャの家の豪華な馬車がとまっていた。
 立派な制服を着た御者《ぎょしゃ》が無言で御者席に座っている。
 それを見て、ケイニスはふたたび眉をしかめた。
 
「こんな格好で行っていいのか?」

 イーア達は、いつもと同じ服の上にグランドールの制服のローブをはおっているだけだ。

「制服《ローブ》は学生の正装だよ」

 そうイーアは自信をもって言ったけど、ユウリはちょっと不安そうだった。

「実はぼくもちょっと心配なんだよ。アイシャは服については何も言ってなかったらしいけど、ドレスコードがあったらどうしよう」

「だいじょぶ、だいじょぶ。さ、乗ろうよ。立派な馬車だねー」

 イーアは馬車に乗りこみ、ユウリとケイニスも続いた。
 馬車は帝都郊外の道を走っていき、やがて、どこまでも続くような長い塀と大きな白い建物が見えてきた。

「なんか宮殿みたいな建物があるね。なんだろう」

 とイーアがつぶやいていると、馬車は、その宮殿のような建物に向かって進んでいき、大きな門を通過していった。
 そして、宮殿みたいな建物の豪華なエントランス前で馬車はとまった。

「これが、アイシャのお家?」

 大きすぎて、家に見えない。
 エントランスのところに、制服姿の従僕(フットマン)の男性が立っていた。
 「グランドール魔術学校の生徒さんですね。どうぞこちらへ」と言って、従僕がイーア達を館の中に案内した。
 イーアはキョロキョロしながら、ユウリは居心地が悪そうに、ケイニスは予想通りだと言いたげな不満顔で、赤いじゅうたんの上を歩いて行った。

 やがて、3人は大きなシャンデリアが輝く大広間に通された。
 室内にはすでに、イーア達と同じくらいか少し年上の少年少女がたくさんいた。
 同じ学年の知り合いもいれば、イーアが知らない人もいた。
 知らない人達は、たぶん貴族クラスの生徒たちだろう。
 楽隊が音楽を奏でていて、テーブルの上にはおいしそうな食べ物がたくさん並んでいる。
 イーアが見たことのないような料理もたくさんある。

「おいしそー!」

 イーアは目をキラキラさせて豪華な料理を見たけれど、ユウリは室内の人々を見ながら心配そうにつぶやいた。

「やっぱり、みんな正装している……」

 たしかに、言われてみれば、女の子はみんなドレスで、男の子はたいてい燕尾服かタキシードを着ている。

「だから言ったろ。正装を持ってもいない俺達が来るような場所じゃないんだ」

 ケイニスは不機嫌にそう言ったけど、イーアは気にせず言った。

「気にしない、気にしない。おいしそうだよ。ほら、食べよ、食べよ」

 その時、アイシャの声がした。

「イーアー」

「アイシャ?」

 イーアが振り返ると、そこには、スカートが大きくふんわり広がった豪華なドレス姿のアイシャがいた。髪型も普段と違って、一瞬、イーアは誰だかわからなかった。

「アイシャ! 全然ちがっててわからなかったよ。きれいだねー」

「えへへー。イーアも着がえるぅ?」

 しゃべったり笑ったりすると、いつものアイシャだ。

「え? わたしはいいよ」

 イーアはそれより、めずらしくておいしそうな食べ物を早く食べてみたかった。

「そーお? イーアの分のドレスもあるよぉ?」

「そうなの? ユウリとケイニス君のぶんもある?」

「お兄ちゃんのお古があるかもぉ。エルツ君の正装、見てみたいねぇ。聞いてみるねぇー」

 それから5分くらい後。3人はいったんパーティー会場を出て別の部屋に案内された。
 イーアはドレスがびっしり並ぶ小部屋に案内されて、アイシャとキャシーといっしょにドレスを選ぶことになった。

「こんなにたくさんドレスがあるの? これ、ぜんぶアイシャの?」

 まるで洋服屋さんみたいだ。
 キャシーも「信じられないよねー」と言ってうなずいている。アイシャは「えへへー。パパがねぇ、かわいいアイシャをもっと見たいって、どんどん買ってくれるから、増えちゃったのぉ」とのんびり言っていた。

 イーアはサイズがあうドレスの中から、一番シンプルで動きやすそうなものを選んだ。
 豪華なのは重そうだし、転びそうだったから。

 イーアが着替えてパーティー会場に戻ると、ユウリとケイニスも燕尾服姿になっていた。髪の毛もしっかりセットされている。
 背の高いケイニスはちょうど服のサイズがあっていて格好よく着こなしていたけど、ユウリはちょっとぶかぶかだった。
 それでも、燕尾服姿のユウリは、美少年っぷりがさらに増して、そして貴族の少年のような高貴な雰囲気を漂わせるようになっていた。
 周囲の女の子たちがユウリに視線を送っては何かささやきあったり、見惚れてため息をついたりしている。「うふふふー。やっぱり、眼福だねぇ」とアイシャもよろこんでいた。

 そのユウリは、イーアを見ると、目をパチパチさせて、とまどったように言った。

「イ、イーア……なんだか、とても、きれいだね」

「うん。きれいなドレスだよね」

「そうじゃなくて……」

 アイシャが「うふふふぅー」と満足そうに笑い、ケイニスが「いつも男みたいな格好だから、ギャップがすごいな」と小声でぼそりとつぶやき、ユウリがぼーっとした様子で「ドレス姿、初めて見た……」とつぶやいていたけど、イーアは聞いていなかった。

「さ、料理、料理。早く食べよ」

 イーアはさっそく料理のある方に向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...