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第3部 帝都騒乱 ~魔女の血脈~
第145話 広場の少年
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決死の覚悟のスローガンと必死に逃げ惑う人々の悲鳴の間に、ドプープクの出現にとまどう兵士たちの声が聞こえていた。
イーアはその音を聞きながら広場の外へと移動しようとしていた。
だけど突然、広場全体が光で包まれた。
六芒星の形の光が空に上がったかと思うと、光が激流のように王宮門の方へと流れていき、そして轟音が響いた。
王宮門の方角から、歓喜の声にも怒声のようにも聞こえる人々の叫び声が響いた。
「見たか! 俺達の力を! 民衆の力を!」
どうやら王宮門が破壊されたようだ。
でも、逃げ惑う人々とともにいるイーアには、そんなことはどうでもよかった。
それよりも、今度は火の玉の攻撃が空から降ってくるようになっていた。
上空の魔導士を撃退してくれていたエラスシオはすでに帰還している。
無防備な民衆にむかって魔導士部隊が一方的に無差別に魔法攻撃を加えていた。
人が燃えていくのを、イーアは見ていられなかった。
『オーロガロン、空にいる魔導士達を倒して。あの人たちに攻撃をさせないように。ホムホムのみんな、ケガをしている人を少しでも回復してあげて』
オーロガロンとホムホム上位種を召喚して、イーアは広場の外へと向かった。
『友契の書』はポケットに隠したままだから、群衆の中の誰が召喚しているか、すぐにはわからないはずだ。
だけど、王宮警備隊だって無能ではないはずだから、このまま続けていればさすがにバレるだろう。
空を大怪鳥が飛び交う中、イーアは逃げる人々の流れにそって歩き続けた。だけど、広場の出入り口を警官隊が防いでいるみたいで、なかなか外に出られなかった。
ようやく警官隊が見えるところまできた時、イーアは気がついた。
冬至祭マーケットの屋台の後ろを平然と歩いている少年がいた。
広場の騒乱がまったく視界に入っていないかのように、その少年は阿鼻叫喚の広場を場違いな平静さで歩いていた。
イーアは足をとめて、その少年を凝視した。
きっちりと整えられた黒い髪、混乱も惨劇も目に入っていないような無表情な、その顔。
驚きで、イーアは一瞬まるで時がとまったかのように感じた。
「マーカス?」
・・・・・・
ユウリは背の高い尖塔の鐘楼の中から、離れたところにある王宮広場の様子を双眼鏡で観察していた。
魔導技術が使われている双眼鏡は広場の様子をはっきりと見せてくれた。
でも、デモ隊の群衆が乱入した後の王宮前広場は混乱をきわめていた。
ユウリは<風のたよりを集める術>という特殊な風魔法で広場の音もとらえていたが、あまりに多くの叫び声がいりみだれていて、何が起こっているのかよくわからなかった。
かろうじてわかったのは、王宮警備隊が群衆を襲っていることと、それから、警備隊の魔導士にむかってかなりの威力の水魔法を放っている者がいるということだ。
不思議なことに、すでに自然魔法を熟知しているユウリにすら、その水魔法の種類はよくわからなかった。
(あんな魔法、いったい誰が……?)
ふしぎに思ったが、今はそんなことに注意を向けている暇はなかった。
(早くアラムを探そう)
トムスとユウリは、広場にいるはずのギルフレイ卿の息子アラムを見つけ、マーカス人形の自爆攻撃で襲う予定だった。
トムスはだいぶ前からアラムを狙っていたらしく、どこで隠し撮ったのか、制服姿のアラムの写真を持っていた。
その写真の少年を双眼鏡で探しながら、ユウリの心は揺れていた。
何を犠牲にしてもイーアの仇はとる。ギルフレイ卿は絶対に殺す。
その決意は揺らがなかった。
けれど、写真のアラムは自分と同じくらいか少し年下の、ただの少年だ。
この少年が何をやったというのだろう。
……何もしていない。
ただ、彼の父がギルフレイ卿だというだけだ。
王宮前広場は大勢の人々で混沌としており、アラムは簡単には見つからなかった。あるいはもう広場にはいないのかもしれない。
むしろ、アラムがここにいないことを、ユウリはどこかで願っていた。
殺したくはないのだ。
突然、広場が強烈な光で覆われ、そして、王宮門が破壊された。
ユウリは麻痺したような心でその光景を眺めながら、考え続けていた。
(父親の罪……)
ユウリの脳裏にホスルッドの姿が浮かんだ。
大嫌いな父親。
美しい大魔導士と世間からは称賛されるホスルッドだが、ユウリは今は血がつながっていることが許せないくらいに嫌いだった。
血がつながっていようが結局、親は他人。
自分とは違う存在だ。
親の罪をかぶせられるなんて、たまったものじゃない。
(やっぱり、とめよう。ギルフレイ卿に復讐するためにアラムを狙うのは、間違っている)
ユウリはトムスと連絡をするための携帯伝話機を手に取った。
「トムスさん。やっぱり、アラムを狙うのは間違っています。この計画は……」
だが、返ってきたのは興奮したトムスの叫び声だった。
「いたぞ! ターゲットだ! 1号機の視界にターゲットが入った!」
その時、偶然、ユウリの双眼鏡もアラムの姿をとらえた。
アラムの少し先にマーカス人形がいる。
騒然とした広場の中、マーカス人形を見たままアラムが立ち尽くしていた。
(なんでアラムはあんなところで……)
アラムのつぶやく声を、風がユウリの耳まで届けてきた。
「マーカス?」
マーカスを知るはずのないアラムがそうつぶやいた瞬間、ユウリは悟り、心臓がとまりそうに感じながら叫んだ。
「トムスさん! あれはアラムじゃない! 作戦を中止してください!」
声は違っても、姿はアラムでも、「マーカス」と呼ぶあの声を聞いた瞬間、わかった。
あれはイーアだ。
トムスの返事は聞こえなかった。
ユウリは、鐘楼から空へと飛び出し、移動魔法で広場にむかって全速力で飛んだ。
イーアはその音を聞きながら広場の外へと移動しようとしていた。
だけど突然、広場全体が光で包まれた。
六芒星の形の光が空に上がったかと思うと、光が激流のように王宮門の方へと流れていき、そして轟音が響いた。
王宮門の方角から、歓喜の声にも怒声のようにも聞こえる人々の叫び声が響いた。
「見たか! 俺達の力を! 民衆の力を!」
どうやら王宮門が破壊されたようだ。
でも、逃げ惑う人々とともにいるイーアには、そんなことはどうでもよかった。
それよりも、今度は火の玉の攻撃が空から降ってくるようになっていた。
上空の魔導士を撃退してくれていたエラスシオはすでに帰還している。
無防備な民衆にむかって魔導士部隊が一方的に無差別に魔法攻撃を加えていた。
人が燃えていくのを、イーアは見ていられなかった。
『オーロガロン、空にいる魔導士達を倒して。あの人たちに攻撃をさせないように。ホムホムのみんな、ケガをしている人を少しでも回復してあげて』
オーロガロンとホムホム上位種を召喚して、イーアは広場の外へと向かった。
『友契の書』はポケットに隠したままだから、群衆の中の誰が召喚しているか、すぐにはわからないはずだ。
だけど、王宮警備隊だって無能ではないはずだから、このまま続けていればさすがにバレるだろう。
空を大怪鳥が飛び交う中、イーアは逃げる人々の流れにそって歩き続けた。だけど、広場の出入り口を警官隊が防いでいるみたいで、なかなか外に出られなかった。
ようやく警官隊が見えるところまできた時、イーアは気がついた。
冬至祭マーケットの屋台の後ろを平然と歩いている少年がいた。
広場の騒乱がまったく視界に入っていないかのように、その少年は阿鼻叫喚の広場を場違いな平静さで歩いていた。
イーアは足をとめて、その少年を凝視した。
きっちりと整えられた黒い髪、混乱も惨劇も目に入っていないような無表情な、その顔。
驚きで、イーアは一瞬まるで時がとまったかのように感じた。
「マーカス?」
・・・・・・
ユウリは背の高い尖塔の鐘楼の中から、離れたところにある王宮広場の様子を双眼鏡で観察していた。
魔導技術が使われている双眼鏡は広場の様子をはっきりと見せてくれた。
でも、デモ隊の群衆が乱入した後の王宮前広場は混乱をきわめていた。
ユウリは<風のたよりを集める術>という特殊な風魔法で広場の音もとらえていたが、あまりに多くの叫び声がいりみだれていて、何が起こっているのかよくわからなかった。
かろうじてわかったのは、王宮警備隊が群衆を襲っていることと、それから、警備隊の魔導士にむかってかなりの威力の水魔法を放っている者がいるということだ。
不思議なことに、すでに自然魔法を熟知しているユウリにすら、その水魔法の種類はよくわからなかった。
(あんな魔法、いったい誰が……?)
ふしぎに思ったが、今はそんなことに注意を向けている暇はなかった。
(早くアラムを探そう)
トムスとユウリは、広場にいるはずのギルフレイ卿の息子アラムを見つけ、マーカス人形の自爆攻撃で襲う予定だった。
トムスはだいぶ前からアラムを狙っていたらしく、どこで隠し撮ったのか、制服姿のアラムの写真を持っていた。
その写真の少年を双眼鏡で探しながら、ユウリの心は揺れていた。
何を犠牲にしてもイーアの仇はとる。ギルフレイ卿は絶対に殺す。
その決意は揺らがなかった。
けれど、写真のアラムは自分と同じくらいか少し年下の、ただの少年だ。
この少年が何をやったというのだろう。
……何もしていない。
ただ、彼の父がギルフレイ卿だというだけだ。
王宮前広場は大勢の人々で混沌としており、アラムは簡単には見つからなかった。あるいはもう広場にはいないのかもしれない。
むしろ、アラムがここにいないことを、ユウリはどこかで願っていた。
殺したくはないのだ。
突然、広場が強烈な光で覆われ、そして、王宮門が破壊された。
ユウリは麻痺したような心でその光景を眺めながら、考え続けていた。
(父親の罪……)
ユウリの脳裏にホスルッドの姿が浮かんだ。
大嫌いな父親。
美しい大魔導士と世間からは称賛されるホスルッドだが、ユウリは今は血がつながっていることが許せないくらいに嫌いだった。
血がつながっていようが結局、親は他人。
自分とは違う存在だ。
親の罪をかぶせられるなんて、たまったものじゃない。
(やっぱり、とめよう。ギルフレイ卿に復讐するためにアラムを狙うのは、間違っている)
ユウリはトムスと連絡をするための携帯伝話機を手に取った。
「トムスさん。やっぱり、アラムを狙うのは間違っています。この計画は……」
だが、返ってきたのは興奮したトムスの叫び声だった。
「いたぞ! ターゲットだ! 1号機の視界にターゲットが入った!」
その時、偶然、ユウリの双眼鏡もアラムの姿をとらえた。
アラムの少し先にマーカス人形がいる。
騒然とした広場の中、マーカス人形を見たままアラムが立ち尽くしていた。
(なんでアラムはあんなところで……)
アラムのつぶやく声を、風がユウリの耳まで届けてきた。
「マーカス?」
マーカスを知るはずのないアラムがそうつぶやいた瞬間、ユウリは悟り、心臓がとまりそうに感じながら叫んだ。
「トムスさん! あれはアラムじゃない! 作戦を中止してください!」
声は違っても、姿はアラムでも、「マーカス」と呼ぶあの声を聞いた瞬間、わかった。
あれはイーアだ。
トムスの返事は聞こえなかった。
ユウリは、鐘楼から空へと飛び出し、移動魔法で広場にむかって全速力で飛んだ。
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四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
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