もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~

第166話 新型大量破壊兵器

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 その日のうちに、帝国政府からの発表があった。
 帝国領土に向けて侵攻を開始していた共和国軍に向かって、帝国は新兵器で攻撃をしたと。

 ケイニス達が集めた情報によれば、その新型兵器の攻撃の結果、共和国の大軍が集まっていた共和国の国境沿いの基地の町一つが完全に消滅した。
 それも、一瞬の出来事だったらしい。
 たった一回の攻撃で、大きな町一つが基地ごと消失したのだ。
 信じられないほどに恐ろしい破壊力の兵器だった。
 

 作戦決行は一時保留となって古城での会議は終わり、集まった各勢力の使者たちは帰って行った。
 イーアは会合が終わる頃にはすっかり元気になっていたけれど、その日は古城の一室で休むことにした。

 だけど、この古城は普段は使われていないから、ベッドは固いし全然快適じゃない。
 だから、イーアは部屋の中でフモシーを呼んだ。すぐにベッドより大きい巨大な白ウサギがあらわれた。

『フモシーはいつもふわふわ~。最高の毛並みだよね』

『そうでしょ。ラシュトなんかとは比べ物にならないわよね』

『ティトの毛はちょっと固めだけど、中の方はやわらかくて、あったかくて太陽みたいな匂いがするよ。でも、フモシーの毛は天国にいるみたいにふわふわで、しあわせ~」

 イーアがふわふわの大ウサギの精霊にくっついて、大きな垂れ耳の下にもぐったりしてリラックスしていると、ティトが言った。

『おい、窓のところで小鳥がぐったりしてるぞ』

 イーアが見に行くと、窓のところでケピョンがぐったりしていた。
 イーアは、体力を回復してくれるホムホムと、霊力を回復してくれるチルランを呼んで、ケピョンに寄りそわせた。

『さっきの突然の霊力変化で、ケピョンは弱っちゃったのかもね』

 イーアは一瞬意識を失いかけたけど、ダメージはほぼなかった。
 他の人達はほとんど何も感じなかったらしいから、普通の人間には影響はないらしい。
 だから、精霊に近い部分があってもほぼ人間のイーアは大丈夫だったけれど、小さな精霊は、あの異変で大きなダメージを受けてしまったのかもしれない。

『ガネンの森でも何かあった?』

『そういえば、今日、一瞬、世界が震えたみたいに感じたわ。気のせいだと思って忘れてたけど』

 イーアがたずねるとフモシーはそう言った。
 ティトは、『そういえば、毛がツンツンしてブルっとする感じがしたな』と言った。
 ガネンの森では、影響はよくわからない程度だったみたいだ。

『ガネンの森は遠くにあるし、人界からちょっと離れた異界だもんね。近いところの方が異変が大きかったのかも。みんな、大丈夫かな』

 イーアは、各地の精霊を呼び出して話を聞いた。
 間違いなく、アグラシアに住む精霊には異変が起きていた。
 ヤゴンリルの話では、グランドールの地下の精霊達は、皆、はっきりとわかるくらいのダメージを受けたらしい。

 カンラビの密林のロロロは、『ちょこっと、くらっとして頭痛がしたぞ。おれっち、頭痛持ちだから、頭痛はよくあるけど。今日はオーロガロンも何かに驚いて暴れてた』と言っていた。
 やっぱりバララセへの影響は小さかったらしい。それでも、みんな異変に気が付く程度の影響はあったみたいだ。

 ちなみに、イーアは普段もたまに部屋でロロロを呼んでおしゃべりをして、ラン達、カンラビの人達がどうしているのか聞いたりしている。
 コサとザンバの兄弟は今はバララセ解放軍にいるから、バララセ解放軍への連絡をランとロロロにお願いすることもある。

 一通り、各地の精霊の状態を聞いて、イーアは考えこんでしまった。

『アグラシアの方が影響が大きくて、人界に近いところの方が影響が大きいみたい。異変を感じた時間は同じ頃だから、これって、やっぱり新型兵器の影響だよね』
 
 数時間後、ケピョンは元気になって部屋の中を飛び回りだしたから、イーアはケピョンにヤララへの連絡をお願いした。

『ヤララ、今日、霊鳥たちは平気だった? 新型兵器が使われた後、この辺は、突然、精霊がみんな弱っちゃったみたい』

 イーアがたずねると、ヤララは心配そうに言った。

『ウェルグァンダルの塔の中は大丈夫だけど、人界にいた子たちは、かなり弱っちゃった子もいたみたい。こんなことが何度も起こったら、人界の精霊達は大変なことになるよ。大昔起こったみたいに、世界の霊的位相がぐちゃぐちゃに変わっちゃう』

 イーアは思わずつぶやいた。

『なんなんだろう。これ、まるで支配者の石板の力みたい……。石板の欠片はまだ全部奪われていないから、ありえないはずなのに』

『ガリも支配者の石板のことを疑ってたよ。<白光>は本当に欠片を全部手に入れてないの?』

『うん。それはたしかなんだけど……』

 ガネンの森の石板の欠片は今もティトが守っている。
 他の欠片がどうなったかはわからないけれど、<白光>は絶対にまだ支配者の石板の欠片を全部集めてはいないはずなのだ。

 イーアの横で、ティトが小さく唸るように言った。

『でも、そういえば、今日、ぶるっとした時に、オクスバーンのじぃさんが言ってたぞ。前もこんなことがあったって。前のは、もっとずっとひどかったらしいけどな』

 イーア達と仲の良い『太古の霊樹オクスバーン』は、少なくとも1万年以上は確実に生きていて、何百年も前のことを平気で『ちょっと前』と言ったりする。

『オクスバーンは、メラフィスの古代王朝の時代も生きてたから、オクスバーンが言ってたのは、大昔、支配者の石板が使われた時のことかもしれないよね。やっぱり、支配者の石板なのかな。帝国政府が使った新兵器って』


 はっきりしたのは、その翌日だった。
 イーアの魔法の郵便箱に手紙が届いた。

「まだ完全ではないけど、魔導技術で石板を補完する技術が完成して、ボンペール商会が石板を使った兵器の開発に成功した。それが新型兵器」

 そう書かれていた。差出人の名は書いてないけれど、これは、ユウリからの手紙だ。
 ユウリは今も<白光>のメンバーとして情報を探っている。

『石板を補完する技術……』

 <白光>はその技術によって、欠片はそろっていないのに、支配者の石板の力を使えるようになったらしい。
 イーア達が保管しているガネンの森にあった石板の欠片は一度<白光>に奪われているから、<白光>はその時に解析してコピーのようなものを作っていたのかもしれない。

 アグラシア帝国の魔導技術は、古代メラフィス王国に匹敵するほどに進んでいると、帝国の魔導士達は誇ってきた。
 どうやら本当に帝国の魔導技術は、古代の魔術大国メラフィスに追いついてしまったようだ。

『完全じゃないって書いてあるけど、十分、世界へのダメージは大きかったよね。それに、消えた町に住んでいた人達はみんな……」

 たくさんの命が一瞬で消えてしまった。
 世界から霊力を奪い、その力で大勢の人々を殺す。
 そんなことをこれ以上繰り返させるわけにはいかない。

 イーアは、これまでは石板の欠片と自分の命を守るだけで良いと思っていた。
 だけど、もう守るだけじゃ意味がない。今度は、奪い返さないといけない。
 帝国相手に。<白光>相手に。
 ずっと、自分の命一つ守るのも大変な相手だったけれど。
 今なら、戦える気がした。

『これ以上、支配者の石板を使わせるわけにはいかないよ。ティト』

 ティトは大きな目でイーアを見て言った。

『わかってる。もう、戦うなとは言わない。イーアは強くなった。おれ達ならできる』

『うん。支配者の石板を奪い返そう』
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