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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~
第187話 罠
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イーアはアラムが幽閉されているヨルヴァ城に急いだ。
巨大ウサギの霊獣ペテラピの背にのって森の中を移動しながら、イーアは考えていた。
(ペテラピのスピードなら不死者の王より先に城につくことはできるけど、どうやってアラムを救出しよう)
城を壊滅させることなら、今のイーアなら簡単にできる。でも、まずはアラムを見つけないといけない、となると時間がかかりそうでやっかいだ。
それに、城にはたくさんの帝国軍兵士がいるはずだ。
不死者の王とその配下の死せる兵士は、見境なく周囲にいる人間を攻撃するから、まちがいなくヨルヴァ城にいる帝国軍兵士達も殺される。そして、殺された者は不死者の王に従う兵となっていく。
城で多数が死ねば、不死者の王がつれ歩く死せる兵士の軍団は膨大な数になってしまう。
イーアはケピョンを通じてヤララにお願いした。
『ヤララ、大声鸚鵡タオーバンに頼んで、ヨルヴァ城に避難警告をだして。不死者の王がヨルヴァ城に近づいてる。このままじゃ城にいる人達みんなが危ないから、一刻も早く避難するように伝えて』
『オッケー』
しばらくの間、イーア達は森の中を進み続けた。
不死者の王は追い抜き、少し距離も離れてきた。だが、木々の上にその上半身をのぞかせる巨大な不死者の王は、その大きさのせいか威圧感のせいか、イーアが後ろを振り返ればすぐそこにいるように見える。
突然、イーアとペテラピの傍を走っていたティトが低い声でうなった。
『人間がいるぞ!』
イーアも気が付いた。
白いマント姿の戦士達が行く手をふさぐように前方に姿をあらわした。
正面にいるのは、戦士が三人。それぞれ剣、槍、戦斧を持っている。
ペテラピなら思いっきり跳躍すれば戦士達を飛び越え逃げられるはず、とイーアが思った時、ティトがさらに叫んだ。
『右前に弓兵がいる!』
斜め前の木の陰からボーガンの矢が飛んできて、イーアが乗っていたペテラピは、悲鳴をあげて一度跳びあがった後、消えてしまった。
転がりながら着地したイーアはすばやく周囲を見わたした。
周囲を白マントの戦士達に囲まれていた。
白マントの男達は白銀の鎧を着こみ、剣や槍といった武器で武装していて、誰一人魔導士のようには見えない。
服装は<白光>の正式な団員が着ているローブではないから、<白光>の魔導士ではなく、団員配下の戦士達だろう。
<白光>の戦士達は、魔導士ではないが一流の戦士が多く、さらに<白光>が支給する魔法の力を持つ特別で強力な武具を装備していることが多い。
だから、魔導士以上に手ごわいこともある。
敵に戦闘の主導権を握られる前に片づけてしまった方が良い。
そう判断し、イーアはすぐに召喚しようとした。ティトも光のエネルギーを集め、攻撃しようとしていた。
だけど、その時、イーア達の後方で立ち止まっていた巨大な不死者の王が奇妙な叫び声をあげながら王杓を何度も何度も上下に降った。
イーアは全身から力が抜け、頭の中がぐるぐるするように感じた。まるで、新型兵器が世界から霊力を吸収してしまった時のようだった。
『霊力が、抜けてく……!?』
ティトが苦し気にうなった。
『不死者の王が霊力を奪ってる!』
『友契の書』から、ルヴィの声が聞こえた。
『現在、召喚困難です』
. . .
ベグランが宙に浮かべた水晶玉は、木々の間にイーアと<白光>準団員の戦士達の姿を映し出していた。
映像の中で、イーアと黄金色の霊獣に明らかな異変が起きていた。
「何が……?」
映像からでは、ユウリには何が起こっているのか見当がつかなかった。ベグランは、仮面の下でにやにやと笑っていそうな声で言った。
「不死者の王は支配者の石板で集めた魔力で動かしているんだが、支配者の石板ってのはただの動力じゃないらしい。不死者の王は、あの石板の力をつかった妙な攻撃をいくつか持ってて、例えば、近くにいる者から魔力を奪うとか。魔法を使用できなくするとか。そんな術が使えるらしい」
「魔法を無効にする?」
そういう魔道具や魔術がないわけではないが、通常、効果は限定的だ。
それに、ほとんどすべてのものが魔導技術で動いており、魔導士が社会の中枢をしめるアグラシア帝国では、魔法を無効にする術というのは勝手に研究することは許されない禁呪のように扱われている。もしも魔法無効の技術が敵国に流出すれば帝国にとって恐ろしい脅威になるから。
ベグランは話をつづけた。
「そうそう。不死者の王はあたり一帯で魔法無効にしちまうのさ。召喚も自然魔法もぜーんぶ。魔力なしで使えるような一部の魔道具は使えるらしいが。俺ら魔導士にとっちゃ最悪な術だ」
「そんな術が許されるんですか?」
「いやぁ、団長閣下ももうなりふり構ってられないんだろうねぇ。で、あの術の効果は無差別だから周辺の魔導士全員が無力化されちまうが、戦士には関係ない。召喚できない召喚士が戦士相手に何ができるかなぁ? おやおや、怖い顔だね」
ユウリはもう平静をよそおえなかった。
なんとかイーアを助けるすべを考えだそうとしたが、どう考えても今この場所からできることはない。
それに、ベグランの話が本当なら、もし今すぐにイーアのもとに駆け付けることができたとしても、魔法を無効にされてはユウリには何もできない。
ベグランは奇妙な笑顔の張り付いた銀仮面をつけたままユウリに顔を近づけささやいた。
「さぁ、ここで、君に耳よりな情報があるんだ。実はあの不死者の王、ここから倒す方法がある。というより、こっちからしか倒せない」
「ここから倒す?」
ベグランは笑い声をあげた。
「実は、あれねぇ。団長閣下と魂をつなげているんだ。団長閣下が操作してないと、うまく力を使えないらしい。つまり、団長閣下が死ねば、不死者の王は無力化されるってことさ」
ユウリは信じられない思いでベグランを見た。だが、道化師の銀仮面に隠された本当の表情は読み取れなかった。
(なぜ、こんな重大な情報を教える?)
「僕にウラジナル団長を殺せと?」
ベグランはへらへらと笑った。
「いやいや。まさか、まじめな団員である君がそんなことをするわきゃないが。ただ、団長閣下は今、この近くにいらっしゃってね」
ベグランはまじめな声になって、湖畔の城を指さした。
「ほら、そこの離宮に陛下がよくいらっしゃるわけだが、実は、我らが<白光>の拠点も傍にあるんだ。あっちの矛みたいな山、見えるかい? あの山の中に白い建物がある。団長閣下は今、そこにいらっしゃる。そこから不死者の王を操作してるのさ」
ベグランの指がしめす方向を見ながら、ユウリは確信した。
(これは罠だ)
どう考えても、罠だ。
ベグランはおそらくウラジナルの指示で動いている。
ウラジナルはイーアを罠にはめたように、ユウリを罠にはめて殺そうとしている。
だが、迷いはなかった。
(罠だとしても、行くしかない)
何としてでも、ウラジナルと戦い不死者の王を無力化する。
ユウリは風をまとい空へと浮かび上がり、<白光>の拠点があるという山めがけて飛んだ。
巨大ウサギの霊獣ペテラピの背にのって森の中を移動しながら、イーアは考えていた。
(ペテラピのスピードなら不死者の王より先に城につくことはできるけど、どうやってアラムを救出しよう)
城を壊滅させることなら、今のイーアなら簡単にできる。でも、まずはアラムを見つけないといけない、となると時間がかかりそうでやっかいだ。
それに、城にはたくさんの帝国軍兵士がいるはずだ。
不死者の王とその配下の死せる兵士は、見境なく周囲にいる人間を攻撃するから、まちがいなくヨルヴァ城にいる帝国軍兵士達も殺される。そして、殺された者は不死者の王に従う兵となっていく。
城で多数が死ねば、不死者の王がつれ歩く死せる兵士の軍団は膨大な数になってしまう。
イーアはケピョンを通じてヤララにお願いした。
『ヤララ、大声鸚鵡タオーバンに頼んで、ヨルヴァ城に避難警告をだして。不死者の王がヨルヴァ城に近づいてる。このままじゃ城にいる人達みんなが危ないから、一刻も早く避難するように伝えて』
『オッケー』
しばらくの間、イーア達は森の中を進み続けた。
不死者の王は追い抜き、少し距離も離れてきた。だが、木々の上にその上半身をのぞかせる巨大な不死者の王は、その大きさのせいか威圧感のせいか、イーアが後ろを振り返ればすぐそこにいるように見える。
突然、イーアとペテラピの傍を走っていたティトが低い声でうなった。
『人間がいるぞ!』
イーアも気が付いた。
白いマント姿の戦士達が行く手をふさぐように前方に姿をあらわした。
正面にいるのは、戦士が三人。それぞれ剣、槍、戦斧を持っている。
ペテラピなら思いっきり跳躍すれば戦士達を飛び越え逃げられるはず、とイーアが思った時、ティトがさらに叫んだ。
『右前に弓兵がいる!』
斜め前の木の陰からボーガンの矢が飛んできて、イーアが乗っていたペテラピは、悲鳴をあげて一度跳びあがった後、消えてしまった。
転がりながら着地したイーアはすばやく周囲を見わたした。
周囲を白マントの戦士達に囲まれていた。
白マントの男達は白銀の鎧を着こみ、剣や槍といった武器で武装していて、誰一人魔導士のようには見えない。
服装は<白光>の正式な団員が着ているローブではないから、<白光>の魔導士ではなく、団員配下の戦士達だろう。
<白光>の戦士達は、魔導士ではないが一流の戦士が多く、さらに<白光>が支給する魔法の力を持つ特別で強力な武具を装備していることが多い。
だから、魔導士以上に手ごわいこともある。
敵に戦闘の主導権を握られる前に片づけてしまった方が良い。
そう判断し、イーアはすぐに召喚しようとした。ティトも光のエネルギーを集め、攻撃しようとしていた。
だけど、その時、イーア達の後方で立ち止まっていた巨大な不死者の王が奇妙な叫び声をあげながら王杓を何度も何度も上下に降った。
イーアは全身から力が抜け、頭の中がぐるぐるするように感じた。まるで、新型兵器が世界から霊力を吸収してしまった時のようだった。
『霊力が、抜けてく……!?』
ティトが苦し気にうなった。
『不死者の王が霊力を奪ってる!』
『友契の書』から、ルヴィの声が聞こえた。
『現在、召喚困難です』
. . .
ベグランが宙に浮かべた水晶玉は、木々の間にイーアと<白光>準団員の戦士達の姿を映し出していた。
映像の中で、イーアと黄金色の霊獣に明らかな異変が起きていた。
「何が……?」
映像からでは、ユウリには何が起こっているのか見当がつかなかった。ベグランは、仮面の下でにやにやと笑っていそうな声で言った。
「不死者の王は支配者の石板で集めた魔力で動かしているんだが、支配者の石板ってのはただの動力じゃないらしい。不死者の王は、あの石板の力をつかった妙な攻撃をいくつか持ってて、例えば、近くにいる者から魔力を奪うとか。魔法を使用できなくするとか。そんな術が使えるらしい」
「魔法を無効にする?」
そういう魔道具や魔術がないわけではないが、通常、効果は限定的だ。
それに、ほとんどすべてのものが魔導技術で動いており、魔導士が社会の中枢をしめるアグラシア帝国では、魔法を無効にする術というのは勝手に研究することは許されない禁呪のように扱われている。もしも魔法無効の技術が敵国に流出すれば帝国にとって恐ろしい脅威になるから。
ベグランは話をつづけた。
「そうそう。不死者の王はあたり一帯で魔法無効にしちまうのさ。召喚も自然魔法もぜーんぶ。魔力なしで使えるような一部の魔道具は使えるらしいが。俺ら魔導士にとっちゃ最悪な術だ」
「そんな術が許されるんですか?」
「いやぁ、団長閣下ももうなりふり構ってられないんだろうねぇ。で、あの術の効果は無差別だから周辺の魔導士全員が無力化されちまうが、戦士には関係ない。召喚できない召喚士が戦士相手に何ができるかなぁ? おやおや、怖い顔だね」
ユウリはもう平静をよそおえなかった。
なんとかイーアを助けるすべを考えだそうとしたが、どう考えても今この場所からできることはない。
それに、ベグランの話が本当なら、もし今すぐにイーアのもとに駆け付けることができたとしても、魔法を無効にされてはユウリには何もできない。
ベグランは奇妙な笑顔の張り付いた銀仮面をつけたままユウリに顔を近づけささやいた。
「さぁ、ここで、君に耳よりな情報があるんだ。実はあの不死者の王、ここから倒す方法がある。というより、こっちからしか倒せない」
「ここから倒す?」
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ベグランはおそらくウラジナルの指示で動いている。
ウラジナルはイーアを罠にはめたように、ユウリを罠にはめて殺そうとしている。
だが、迷いはなかった。
(罠だとしても、行くしかない)
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