ニートの逆襲〜俺がただのニートから魔王と呼ばれるまで〜

芝桜

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第42話 終戦

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 モンドレットの戦艦からティナとシーナを連れて旗艦に戻ると、すぐに通信手からの報告が入った。

『子爵軍基地攻撃隊から通信!  軍基地の制圧に成功したようです!  』

「被害状況は?  」

『死者0、重傷者8名。内2名は戦闘機のパイロットです。現在こちらへ治療のため向かっています』

「わかった。俺は小型輸送機発着場に行く。魔導通信をオープンにしてモンドレットの死を喧伝しつつ、旗艦は領都へ向かえ。以後はインカムにて通信を行う。ティナにウォルター、あとは頼んだ」

「わかったわ」

「はっ!  」

 俺はシーナがいれてくれたコーヒーを飲む間もなく、艦尾の小型飛空艇発着場へと向かった。

 艦尾に向かっている間も次々と耳にはめているインカムへと報告が届いてくる。

 どうやら他領へと繋がる道は全て戦艦による砲撃で破壊したようだ。

 そして領都と東西の街は、現在戦闘機により守備隊施設と対空砲を爆撃しているところのようだ。ひと通り終われば高速飛空艇が上陸するだろう。道を潰した戦艦も向かっているし、敵が戦意を失うのは時間の問題だろうな。


「ボス!  クワタが!  対空砲で墜とされて!  」

「あぐっ……阿久津さん……すみませ……ん」

「桑田……戦闘機にシールドも付いていてさ、護りの指輪まで嵌めててなんで四肢がもげてんだよ……まさか調子に乗って突っ込んだんじゃないだろうな?  」

 俺は艦尾の発着場にいの一番に運ばれてきた、元ニートのパイロットの姿を見て呆れていた。

 戦闘機乗りたちには身体強化のスキルを覚えさせてある。そして保険で5等級の護りの指輪も貸し出していた。操縦席に直撃を喰らわなければ、地上に激突した時に指輪が発動してダメージを負わなかったはずだ。

 それなのにどう見てもこれは複数被弾してシールドを剥がされ、そのうえ操縦席に直撃して護りの指輪を発動させてしまいそのまま機体ごと地面に激突した怪我だ。身体強化を発動してなんとか即死を逃れ、ポーションでここまで命を繋いだ感じだな。

「すみ……ません……調子に乗って……突っ込み……ました……」

「ったく、終わったら鬼の特訓だな。『ラージヒール』  ほらっ!  治ったら空母に戻って予備の機体に乗ってもう一回出撃だ。今度は突っ込むなよ?  」

「うぐっ……ハァハァ……あ、ありがとうございます。つ、次はちゃんやります!  」

「『滅魔』……よし!  これでまたすぐに護りの指輪は使える。もう来んなよ!?  」

 俺は桑田の首からチェーンでぶら下げられている護りの指輪に魔力を流し、再度使えるようにして肩を叩いて小型輸送機へと送り出した。

「はい!  行ってきます!  」

 《次の輸送機来ます!  》

「どんどん受け入れろ!  」

 俺は桑田と付き添いの獣人を送り出したあと、次々と着艦してくる輸送機に乗る仲間たちを治していった。

 そして治したあとは容赦なく戦場へと送り出した。

「とりあえずこんなもんか」

 死にそうな思いをしても死ななきゃ戦場へと戻されるとか、我ながら鬼畜な軍だよな。
 死ななきゃどんなに重傷を負っても戦いからは逃れられないんだからな。

 でも人手不足なんだ。負傷者が戦線に戻れば犠牲になる者も減る。一人はみんなのために。みんなは軍の維持のためにだ。うん、これは仕方のないことなんだ。

 俺はブラック企業が超ホワイトに見えるほどの仕打ちを自分がしていることに、仕方のないことなんだと自分に言い聞かせていた。しかしその姿はすでにブラック企業の経営者となんら変わりが無かった。



 治療をひとまず終えて艦橋に戻ると、旗艦が領都上空へと到達したところだった。

『ニート軍とリズ隊領都へ突入しました!  』

「わかった」

 領都に三田たちとリズ隊が突入したようだ。荒川さんたちは大丈夫かな?  街から逃げる車両や飛空艇は全て撃ち落としたし、あとは時間の問題なはずだ。

 俺は目の前のモニターに映し出される領都の様子を司令官席で見ながら、占領が終わるのをコーヒーを飲みながら待っていた。


そして2時間ほどした頃。東街の攻撃隊から通信が入った。

『東の街攻撃隊より通信!  抵抗勢力を全て排除!  貴族の屋敷の制圧及び処刑完了!  』

「よしっ!  金目の物と守備隊の装備を全て回収し、街の者に遺体の処理をさせるよう伝えてくれ。その後攻撃部隊は街の外で待機だ」

『了解!  』

 プルルッ

 プルルッ

「ん?  ヤンヘル?  」

 俺が東の街の戦後処理を指示をしていると、魔導携帯にヤンヘルから通信が入った。

「どうした?  」

 《主君、軍規違反者です。東街の民間人に斬りかかった者と、民家から略奪をした者4名を捕らえました。幸い民間人はポーションで治療をし命に別状はありません》

「チッ……四肢をへし折って領都の飛空艇の外に一晩吊るせっ!  帰ったらダンジョンに放り込んでやる!  」

 くそっ!  やっぱり出たか……

 《御意!  》

「通信手!  不届き者が出た!  東街の部隊に伝達!  そいつらを飛空艇に吊るすから、見かけたら石を投げるように言ってくれ!  」

 俺は4人を見せしめにするべく、仲間たちによる石打ちの刑にすることにした。

『了解!  攻撃部隊に伝えます!  』

「呆れた。ギルド警察隊がついてるのによくやろうと思ったわね」

「ですです!  ダークエルフの目からは逃れられないですぅ」

「帝国にずっと虐げられてきたんだ。やる奴はいると思ってたよ」

 それでもほかの皆はその気持ちを抑えて戦ってくれている。それは帝国人と同じことをして同レベルに落ちたくないからだ。なのにそいつらときたら……でもこれも想定の範囲内だ。彼らは正規の軍人じゃない。臨時徴兵した者たちだしな。全員が全員抑えきれるわけはないと思ってたさ。

 はぁ……もうこれ以上不届き者が出なきゃいいんだけどな……

『に、西街より通信!  西街のスラム街の獣人たちが便乗して民間人を虐殺しています!  』

「くそっ!  そうだった!  その可能性を失念してた!  殺せ!  駆逐しろ!  そいつらは敵だ!  東街と領都攻略部隊にも、スラム街の奴らに動けば敵とみなすと警告するように言ってくれ! 」

『りょ、了解!  』

 失念してた。街には獣人がいるんだった。街が混乱しているのを機に、便乗してくることも想定しておくべきだった。

 帝国人からしたらうちの者たちもスラムの奴らも同じ獣人だ。正規兵じゃないからみんなバラバラの装備だ。バレないと思ったんだろう。だから俺たちの仕業に見せかけて虐殺と略奪をしてるんだろう。

 中にはこれを機に恨みを晴らそうとしている者もいるかもしれない。

 だからってふざけんなよ!  勝てると思ったら俺たちの仕業にして好き放題しやがって!  卑怯者が!

「いくらなんでもまさか便乗してくるなんて……」

「卑怯ですぅ……」

「せっかく民間人を傷付けないようにしていた皆の行動を無駄にされたよ。奴らはうちの戦争を邪魔する敵だ。ただじゃ済まさない。くそっ!  こんなことにも気付かなかったなんて!  」

「コウ……初めての戦争なのだもの。全てが思うようにはいかないわ。あまり気を張りつめないで」

「そうですコウさん。もうモンドレットは倒したんです。戦争には勝ったんですから」

「……そうだね。初めから完璧にはできないよね。ちょっと欲張りすぎてたみたいだ。軍に死者がいないだけでも幸運なのにね」

 俺は荒れていた心が、ティナとシーナに手を握られたことにより鎮まっていくのを感じていた。

 そうだ。最初からうまくいく事なんてない。次に同じことをしなければいいんだ。

 敵の頭を討ち、制空権も掌握して死者も出していない。うん、うまくいっている。あと少し、あと少しで終わる。


 それから西街を制圧したとの通信が入った。街で暴れていたスラム街の獣人たちは全員討ち取り、街の中央に磔にして晒したそうだ。その際に男爵家とは関係のない者だと説明し、傷付けられた民間人を治療したらしい。これらは部隊に付いていたライガンが仕切って全てやらせたみたいだ。

『領都攻撃部隊のリズ隊から通信!  子爵家屋敷の制圧完了!  モンドレット家の一族は女性と子供を除き全て討ち取ったとのことです!  』

「終わったか。圧倒的優位なのにハラハラしたよ。領都攻略部隊には倒した兵と屋敷の物を全て回収した後、治安維持要員を残して領都の外で待機するように言ってくれ」

『了解!  」

「ウォルター、領都入口に着陸だ。フォースターの艦にモンドレット親子の遺体を凍らせ、屋敷に運ぶように言ってくれ」

「はっ!  」

 俺は立て続けに指示をしたあと、やっと身体から力が抜けていくのを感じていた。

 俺が先頭になって戦えばもっと楽なんだけどな。三つの街を同時攻撃じゃそうもいかない。やっぱ指揮官に向いてないんだよな俺。

この戦争が終わったらフォースターに丸投げしよう。絶対にそうしよう。

「お疲れ様コウ。あとは勝利宣言ね。そしていよいよ領地を手に入れられるわね」

「ああ、貴族院に勝利を認めてもらったら交渉するよ」

 俺は嬉しそうに言うティナに笑顔でそう答えた。

「すごいですぅ!  領地持ちの男爵ですぅ!  」

「守るものが増えちゃうけどね。その分軍備も増えるからなんとかなるかな」

「戦艦も空母も増えたし、人さえ集まればなんとかなりそうね」

「まあね。貴族のローカルルールを無視してここまでやったんだ。簡単には手を出してこないはずだから、時間は稼げる。その間になんとかするよ」

 戦って負ければ全てを失う。うちより飛空艦隊の数が少ない奴らは、単独では挑んでは来ないだろう。来るとしたら連合で来るはず。それもオズボードかロンドメルのどちらかの派閥の貴族に限られる。

 だが、今回は俺のスキルをテルミナ大陸で使ったから、この二人は簡単には手を出してこないと思う。

 飛空艦隊が何もできず壊滅したのを遠くから見ていたはずだ。これで俺のスキルの能力がある程度わかったはず。過去にオリビアと一緒に来た奴らで、俺が魔力だけ抜いて解放した者からも情報を得ているだろうしな。

 虎の子の飛空艦隊が通用しない相手に、よほどの馬鹿じゃない限り向かってはこないだろう。



 それから俺はオリビアを通して貴族院に勝利宣言をし、翌日に貴族院の調停員が来るまで各街の貴金属や装備にダンジョン素材。そして領都にあった、日本から集めた魔石の保管庫から魔石を回収した。これは上納期限の年末が近いということもあり、かなりの量の魔石が蓄えられていた。

 こればかりはさすがに運ぶのが大変なので、俺が保管庫に出向き全てを空間収納の腕輪に回収してリズを迎えにいった。リズはピンピンしていて、三田たちと荒川さんも元気そうだった。

 そして夜になり、街に治安維持のための警備要員を残して、部隊のほとんどは街の外で夜を明かすことになった。外といっても飛空戦艦や空母には厨房も大浴場もある。酒はまだ出せないが、皆が美味しい料理を食べ風呂に入り一日の疲れを癒しつつ交代で夜を過ごした。

 俺は当然恋人たちと戦艦内の司令官用の居室にマジックテントを張り、みんなで一緒に風呂に入り3人に俺の魔王棒を同時に舐めてもらったり挟んでもらったりした。そして一緒のベッドで3人のお尻を並べて激しく運動したりして、イチャイチャして過ごしたよ。ティナなんてさ、俺がいっぱい人を殺して落ち込んでるんじゃないかってすごく甘やかしてくれた。

 俺はデビルマスクの副作用でなんとも思ってないんだけどな。でもそこは落ち込んだフリをして、3回戦目はティナとリズとシーナにまるで赤ん坊のように世話をされて楽しんだよ。たまにはこういうプレイもいいよな。

 そして夜が明け、夜間に領都のスラム街の獣人たちが悪さをしたと報告を受けた。ここでもかよと、領都の中央に磔にされて死んでいる獣人を見て残念な気持ちになった。

 帝国から生活保護を受けられるようになって、毎月金までもらえるのにスラム街にいるような連中だ。もうどうしようもない奴らなんだろうな。

 それでも俺は各街のスラム街で困っている女性に声を掛けるように皆に伝え、応じた獣人の女の子たちは桜島で面倒を見てやることにした。ダークエルフたちの報告によると、どうも男に脅されてる子もいたっぽいからだ。抵抗した男もいたそうだけど、女の子たちと話し合った結果、武力で強引に黙らせたらしい。

 まあそんなゴタゴタを朝から片付けていると、帝都の方向から帝都防衛軍の白い巡洋艦が3隻やってきた。

 巡洋艦は領都の前に着陸し、中から黒いジャケットとヒラヒラの白いドレスシャツを着た文官が5人ほど数十名の護衛を伴って出てきた。

 代表の伯爵位らしき赤髪の男が、俺と顔を合わせるなり挨拶の仕方も知らないのかと偉そうにして笑っていたので、護衛ともども魔力を抜いて跪ずかせ見本をありがとうございますとお礼を言っておいた。

 これは周りにいた獣人たちにウケてみんなが大笑いしていた。俺は何が起こったのか分からず動揺する伯爵たちを小突いて魔力を戻してやり、早く領都の状況とモンドレット一族の遺体を確認しろと護衛無しで行くように言った。

 その際に異変を感じたのか巡洋艦から兵が出てこようとしたが、艦内にいる全ての兵の魔力を抜き黙らせた。

 いくら待っても助けが来ないことを悟った文官たちは、俺に蹴り飛ばされつつビクビクしながら領都へと入っていった。

 そして2時間ほどして戻ってきた伯爵たちは、一族の男どころか兵士まで皆殺しにするなど信じられんとかぶつぶつ言いながらも戦争は俺の勝利だと認めた。そして俺が領地も全てもらうと言うとそれも認められた。ただ、ここ数百年でそんなことを言ったのは俺が初めてらしい。

 最後に文官たちは意趣返しのつもりなのか、これほど苛烈なことをしたのだ、以後周囲の貴族に気をつけられよと言って去っていこうとした。が、俺はそれを引き留めた。

「ま、まだ何かあるのか。この戦争はアクツ男爵の完全勝利だ。勝者は全てを奪える。ゆえに領地も男爵の好きにするがよい。貴族院はそれを認める」

「まあもうちょいゆっくりしていけよ。まだお前のとこの兵もやっと立ち上がれるくらいになった程度だしさ。今から皇帝に電話するからちょっと待ってろ」

「へ、陛下に!?  いくら陛下と面識があるとはいえ、成り立ての男爵如きが陛下と直接話すことなど……」

「ほぼ毎日話してるよ。さすがに戦争中には掛けてこないけどな。えっと、着信履歴から……」

 俺はギャアギャアうるさい伯爵を適当にいなし、魔導携帯で魔帝へと電話を掛けた。

 《魔王か、報告が来ておるぞ。ククク……ずいぶんと面白いことをしたようじゃな》

「別にルール通りにしただけだ。ルール通りモンドレットの全てを奪った。一族の命も兵士も財産も全部だ」

 《ククク……確かにの。本来のルール通りじゃのう》

「そういうことだ。んで今さ、貴族院にモンドレットの領地を奪ったことを認めてもらったんだけどさ、ぶっちゃけこんな周囲が敵だらけの小領とかいらねえんだわ。領民もテルミナ人だし」

 こんなとこ占領したら、俺も軍の皆も毎日気を張ってなきゃなんねえよ。かといってフォースターに任せたらあっという間に殺されちまう。

 《まあそうじゃろうな。ロンドメルとオズボードの領地に挟まれておるしのう。色々ちょっかいを掛けられるじゃろうな。ふむ、取り込まれるのも厄介かのぅ》

「だろ?  それでだ。確か前に功績ある貴族に、地球の領地を与えていくつもりだって話してたろ?  」

 《うむ。何百年か掛けて徐々にな。そうか、つまり地球の領地と交換したいと申すのか?  》

「ああ、元日本の領地の九州から南の土地と交換してくれ。このモンドレットの土地より広い土地との交換だけど、テルミナ大陸の領地と地球の領地じゃ価値が違うだろ?  その辺は負けてくれ。俺も早く身辺を落ち着かせて【冥】の古代ダンジョンに挑みたいんだよ。こんなとこに領地があったらダンジョンなんか行けやしねえしさ」

 俺は前に魔帝に地球の領地は今後どうするのか聞いた時に、統治やダンジョン攻略などで功績のあった貴族に与えていくつもりだと言っていたのを利用し領地の交換を申し出た。

 テルミナ大陸はテルミナ人の故郷だ。地球の土地とは価値が違う。それなら千葉県ほどの広さのこの土地と、九州と沖縄地方の土地の交換はいけると考えていた。魔帝も俺が政敵に取り込まれる可能性も考えるだろうしな。さらに周りが敵ばかりだと、おちおちダンジョンにも行けないと言えば魔帝は呑むだろうとね。最悪、鹿児島と沖縄だけでも手に入れればいい。

 《…………よかろう。その代わり早くダンジョンに行けるようにするのじゃぞ?  2等級以上の停滞の指輪が見つかったら必ず報告するのじゃぞ?  時戻りの秘薬もじゃぞ?   》

「見つかったらな。じゃあ丁度帝都防衛軍の巡洋艦がいるからさ、そのまま帝領として治安維持させてもいいよな?  早く帰って準備しなきゃなんねえんだ」

 《うむ。兵士までおらぬのでは臣民を守る者がおらぬからの。余の命令だと言って警備をさせるがよい》

「おっけー、伝えとくわ。んじゃ俺たちはもう帰るわ。ああ、日本の管理者はもう変なの寄越すなよ?  マルス辺りの派閥のやつにしてくれ。心置きなくダンジョンに行きたいからな」

 また変なのが管理者になってちょっかい掛けられても面倒だからな。マルス辺りにやらせればいいんだよ。オリビアも身内が近くにいた方が安心するだろうしな。

 《そうじゃったな。モンドレットの後釜には優秀な者を就かせよう。そうじゃな……うむ、一人心当たりがある。魔王は心置きなくダンジョンに挑むがよいぞ。ククク……》

「おい!  また馬鹿貴族じゃないだろうな!  ダンジョンに行けなくなるぞ!  いいのかよ!  」

 コイツ何かたくらんでやがる!  絶対何か嫌がらせするつもりだ!  

 《大丈夫じゃ。ちょうどいいのがおる。魔王はダンジョンに心置きなく行けるじゃろう。余は魔王のダンジョン攻略を全力でばっくあっぷするでの》

「くっ……嫌な予感しかしねえ……まあいい、また馬鹿貴族が来たら今度は様子見なんかしないでぶっ潰すだけだ。それじゃあ九州と沖縄の件頼むぞ。あとで配下の者に割譲するからその辺の承認もな」

 《わかったわかった。地球の土地など好きにするがよい。話はそれだけか?  余はこれからメレスのところに行くでのぅ、忙しいんじゃ。ニホンの着物が欲しいと申しておっての。余がぷれぜんとするのじゃ。ククク、メレスの喜ぶ顔が目に浮かぶわ。ではな、魔王》

「はいはい親バカじゃあな…………ま、そういうことだ伯爵さん。俺はこの領地を放棄する。よってここは今から帝領だ。皇帝直々にあんたらに領地の治安維持を任せるようにとのご命令だ。あとはよろしくな」

 俺は魔帝との通信を切り、目の前でポカンとした顔で話を聞いていた伯爵とその連れに魔帝の命令を伝えた。

「は?  な、なにを……なぜ我々が治安維持など。同行した軍は帝都防衛軍だぞ」

「だから?  皇帝の命令は絶対なんだろ?  ああ、別に帰ってもいいぜ?  おれは命令を伝えたからな?  後でこの領地の治安が悪くなって、皇帝の命に背いたことで家を潰されんのはアンタだし。俺はもう関係ないから」

「なっ!?  そ、そんな馬鹿なことが!  か、確認をする!  いいか?  嘘だったら陛下の命令を偽証した罪として男爵が処刑されることになるぞ!  」

「はいはい、できるもんならやってみろ。んじゃみんな!  戦争は終わった!  俺たちはこの領地を放棄する!  東西の街の部隊にも連絡を入れろ!  撤収だ!  」

 《  

 俺はわめき散らす伯爵を無視して、軍に撤収するよう命令をした。


 そして数時間後、帝国に確認を取った伯爵がそのまま臨時領主になることになったらしく、ゲッソリとした顔で帝都防衛軍を引き連れ各街へ治安維持に向かっていった。

 それと入れ違う形で各街にいた男爵軍が旧子爵領の上空で合流した。

 俺は帰る前に全艦に通信を開き、出発の号令を掛けることにした。
  
「阿久津男爵軍の精鋭たちよ!  今回の戦争で九州と沖縄が男爵家の領地となった!  これも皆が命懸けで戦ってくれた成果だ!  桜島に帰るぞ!  帰ったらお宝の山分けと祝勝会だ!  出発!  」

 《《《  》》》

俺はスピーカーから聞こえてくる歓声に耳を塞ぎ、ティナとシーナと共に笑いあい帰路につくのだった。

 


※※※※※※※※※※

作者より。

次話はエピローグとなります。3章は1週間ほど空けてから開始する予定です。3章タイトルは「ニートと帝国動乱」になります。プロローグで新ヒロインのイラストを挿絵として入れます。尻か雪かはお楽しみに♪

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