ニートの逆襲〜俺がただのニートから魔王と呼ばれるまで〜

芝桜

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第3章 ニートと帝国動乱

第53話 メール

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 ―― 桜島上空 飛空艦戦艦 フェアロス 艦橋 メレスロス・テルミナ ―― 
  
  
  
『帝都全域に展開されていた妨害魔導波が解除されました』   

『アクツ男爵軍にアクセスしろ』
  
『はっ! アクツ男爵軍第一師団へアクセスします……アクセス成功。状況をモニターヘ映し出します』 

『これは……帝都を制圧したようね。さすがアクツ様ね』

  
「すごいわ……この短時間でロンドメル軍を」 
  
 私は大型モニターに映し出された戦況図を見て驚きを隠せなかった。 
  
 それは帝都を味方の軍が占拠していて、さらにその上空に50隻ほどの飛空艦が展開していたから。
  
 リズから光がロンドメル公爵を討ったことは聞いていた。けど、こんなに早く帝都を掌握するなんて。
  

 光はオズボード公爵軍もたった1日で制圧したわ。
  
 そしてどうやったのかオズボードとその派閥の者たちを服従させ、この領地の防衛をさせている。最初は裏切りを警戒したけど、エスティナとリズが絶対大丈夫というのよね。理由は教えてくれなかったけど、能天気なリズはともかくエスティナが言うのならと信じたわ。 
  
 そのあと光は帝都に侵攻し、半日も経たないうちに制圧してみせた。 
  
 光が帝都に向かってからは念話で話していなかったけど、こんなに早くロンドメルを討ち帝都を制圧するなんて……光は個の強さだけではなく、指揮官としても一流だわ。 
  
「たった半日足らずでマルス公爵領の駐留艦隊を壊滅させ、さらにロンドメルを倒し帝都を掌握されるとは……さすがは光殿です」 
  
「ええ、光がお父様の仇をとってくれたわ」 
  
「はい。私の高祖父の仇も……」  
  
 お父様……光が仇を討ってくれました。どうか安らかにお眠りください。 
  
 私は隣に立っているリリアと手を握り合い、目をつぶりお父様の冥福を祈った。
  
 ずっと光はお父様と宰相は生きていると、そう言って私とリリアを元気づけてくれた。雪華騎士たちにも家族を必ず助けると約束していた。 
  
 でも私たちはわかっていた。あのお父様が帝城から離れるわけがないと。皇帝の派閥であり、上位貴族の雪華騎士たちの一族が無事なはずがないと。
  
 でも私たちは信じた振りをしていた。私たちを気づかう光の優しさが嬉しかったから、みんなで安心した振りを光の前でしていたの。 
  
 だから光。気に病まないで……私は大丈夫だから。私には光とお祖父様。そしてティナたちやエルフの同胞がいるのだから。 
  

『て、帝都方面より強力な魔導通信波が放たれました! こ、この魔導波は飛空艦要塞の勅令用魔導通信波です! 』 
  
『なんだと! 陛下専用魔導波を誰がいったい!? あれは皇帝陛下の承認なしでは使えない魔導波なはず! 』
  
「リリア……いったい何が起こっているの? 」 
  
 私は通信手と艦長のやりとりに、ただならぬ事が起こっているのを感じてリリアに説明を求めた。 
  
「恐らく帝城と飛空艦要塞にのみに割り振られている、陛下専用の魔導波が発信されたのでしょう。これは陛下が勅令を発する時にのみ使用が許されています。この魔導波は魔導通信機を製造する過程で魔導プログラムに必ず組み込まれており、たとえ通信を遮断していても強制的に受信するようになっています。よって、後から陛下の勅命を知らなかったとは言えません。そのような専用魔導波ですから、陛下以外の者が使うことは重罪となるのですが……」 
  
「そう……そんなものがあるのね。でも光にはそんなの関係ないわね」 
  
「ふふっ、確かに光殿には関係ありませんね。恐らくロンドメルを討ったことを公表し、派閥の者の動きを止めるのが目的でしょう」 
  
「問題はデルミナ神の加護を誰が受けるかだけど……」 
  
 光が帝都を制圧しロンドメルの派閥の動きを止めたとしても、新たに加護を得た者のもとに残党が集まる。そうなればこの内乱は終わらない。光のこの領地もまた危険にさらされるわ。 
  
『受信完了。モニターに勅令通信が映し出されます! 』 
  
 私がそんなことを考えていると、帝都の戦況図を表示していた大型モニターの画面が突然消えた。 
  
 そして再び映し出された映像に、私は自分の目を信じることができなかった。 
  
「あ……ああ……おとう……さま……」 
  
「高祖父様も……ああ……光殿……あなたはなんて人なの……」 
  
 モニターには黄金の鎧をまとい、剣を両手に持ち仁王立ちをしているお父様が映っていた。そして不敵な笑みを浮かべて立っているお父様の斜め後ろには、黒い革鎧姿の光とマルスにハマール。そして十二神将とリヒテンラウド伯爵が立っていた。 
  
 私はお父様の無事な姿を見て、あふれ出る涙を抑えることができなかった。 
  
 ああ……光の言ったとおりだった……お父様は生きていた……光が救い出してくれた……
  
「お父様が生きていた……光は約束を守ってくれた……私たちは諦めていたというのに、お父様たちを救い出してくれた」 
  
「はい……光殿は私たちの心も救ってくれました……本当になんて人なのでしょう……」 
  
 ああ……光……貴方はいつも私の冷え切った心を温めてくれる。
  
  
 《ククク……余が死んだと思ったか? 残念じゃったのう。余は確かにロンドメルの奇襲を受けた。しかし余は忠臣であるアクツ男爵に援軍の要請を出した後、帝城の地下で十二神将とともにロンドメルの兵と戦っておったのだ。そしてアクツ男爵軍の援軍が到着したのを期に、余は反撃を開始し反逆者であるロンドメルを討ち取った》 
  
 お父様がそう言ったあとカメラが引き、お父様たちの前に並べられたロンドメルとその騎士たちの遺体が映し出された。
  
 《この通り反乱者ロンドメルは余がこの手で討った! ロンドメルの一族。そしてロンドメルの狂言を信じ、この反乱に加担した者よ。覚悟はできておろうな? 反逆者は一族皆殺しじゃ! その首を洗って待っておれ! 余が自ら叩き切ってくれようぞ! 》 
  
 お父様は剣を抜きカメラに突きつけ、いままで見たこともない怒りの表情でそう宣言した。 
  
 《しかしじゃ。貴族にやむなく従った兵にはチャンスをやろう。アクツ男爵》 
  
 《はっ! 》 
  
 後方に控えていた光はお父様に呼ばれると、頭を下げながら返事をして一歩前に出た。 
  
「光殿の顔が引きつってますね」 
  
「あの光がお父様に頭を下げるなんて……光が心配だわ」 
  
 きっとこの混乱を早く収めるために無理をしてるのね。光……がんばって。 
  
 《よう、反逆者ども。俺がアクツ男爵だ。今回の反乱に加担した貴族の兵士に告ぐ! お前らを指揮している貴族を討て! そうすればお前らも家族も助命してやる。24時間だ。その間に反乱者である貴族の当主およびその一族を皆殺しにしろ! ただし! 無抵抗な女や子供に危害を与えることは禁じる! 帝国の未来に必要だからな》 
  
 光は貴族に従う兵士たちを使ってこの内乱を収めるつもりなの? 帝国人の犠牲を最小限にするためにお父様を説得したのね。 
  
 《ああ、貴族に従って反乱を続けたままでもいいぞ? その時は俺が叩き潰してやる。俺のことは知ってんだろ? コビール侯爵艦隊もモンドレット艦隊も、そしてこの帝都にいたロンドメル艦隊も俺が潰した。たった一人でだ。そうだな……そろそろ教えてやるか。俺には【魔】の古代ダンジョンの最下層で手に入れた、魔力を吸収するスキルがある。このスキルにより、俺は視界に映るあらゆる物から魔力を抜き取ることができる。それが飛空艦であれ、中にいる何万という兵士であれ一瞬でな。俺の視界に入った瞬間、体内に魔石。お前らで言うところの神石か。それから魔力を抜くことができる。つまりだ、お前らは死ぬ。それが300隻の飛空艦艦隊であろうと、新兵器の見えない飛空艦に乗っていようとな》 
  
 光がそう言った後、光の能力を知っている艦長たちからでさえ息を呑む音が聞こえてきた。 
  
 遙か古代から、【魔】の古代ダンジョンに世界を手に入れることができるスキルがあると伝えられてきた。それを光が持っている。その能力はどんなにランクの高い魔人でも、何もできないまま一瞬で魔力を抜かれ命を落とすほどのもの。魔石の無い私以外の人たちからすれば、これほど恐ろしいスキルはないわ。でも…… 
  
「ふふふ、こういう猛々しい光殿も素敵ですねオルマ団長」
  
「ええ、普段はダンジョンの中であってもあんなに優しいのに、こういうアクツ殿もいいですね」 

  
『私たちの命を一瞬で奪うことのできるあの圧倒的な力……ハマール公爵がアクツさんに支配されたがるのもわかる気がするわ』 
  
『ええ!? ルイーザも半狂乱でアクツさんを追いかけ回すの!? ごめん、友達やめるわ』 
  
『ちょっ! そんなことしないわよ! 私をハマール公爵と一緒にしないでよ! 魔人の女として純粋に強い男に魅力を感じるのは当然でしょ! 』 
  
『まあそれはそうだけど……お願いだからハマール公爵みたいにならないでよね』 
  
『ならないわよ! 』 
  
  
「フフッ……」 
  
 ここにいるみんなは誰も光を怖がったりはしない。光が私たちに底抜けに優しいのを知っているから。 
  
  
 《以上だ。死にたい奴はこの帝都に向かってこい。生き残りたい奴は、お前らがいる軍や艦隊にいる貴族を24時間以内に殺せ。今回だけは貴族への反逆罪は問わない。しかし無抵抗と条件をつけるが、女子供に手を出すような奴は処刑する。忘れるなよ? 以上だ。陛下……》 
  
 《うむ。アクツ男爵よ、ご苦労じゃった》 
  
 《ぐっ……も、もったいなきお言葉です》 
  
 光はお父様に頭をペシペシと叩かれながらも膝をつき。静かに頭を垂れた。 
  
 お父様、それくらいにしておかないと…… 
  
 《帝国の女子供は宝じゃからのう。よく言ってくれた。男爵には特別に余の愛用している靴下をやろう》 
  
 《うぐっ……あ、ありがたき幸せ……なんて言うわけねえだろうがクソ魔帝! その加齢臭の染みついた臭え靴下を俺の頭に置くんじゃねえ! ぶっ殺す! 》 
  
 《なんじゃと! 余のどこから加齢臭がするというのじゃ! フェロモンの間違いじゃろう! 余は臭くなどないわ! おのれ魔王! 余を侮辱しおって! 叩き斬ってくれる! 》 
  
 《上等だ! 契約のスキルは切れてんだ! 思う存分テメーをミンチにしてや……》 
  
 お父様が剣を構え、光が剣を抜こうとしたところで映像が突然消えた。

 恐らく通信手がこれ以上ままずいと思って通信を切ったのね……

 だから言ったのにお父様……
  
「ふふふ、光殿が陛下の忠臣であるという演出は失敗したようですね」 
  
「お父様ったら、調子に乗って光の頭に靴下を……あれじゃ光が怒るのも無理もないわ」 
  
 きっと光が頭を下げる姿を見て気持ちよくなったのね。お父様の悪い癖だわ。 
  
 艦橋のクルーや雪華騎士たちもみんな苦笑いをしてる。本当にもうお父様ったら、恥ずかしいわ。 
  
 でも……いつものお父様だった。 

 いつものお父様と光だった。
  
 ああ……本当にお父様は生きていたのね。 
  
 よかった……ありがとう光。大好きよ。
  
  
  
 ♢♢♢♢♢ 
  
  
  
「ちょっ! 離せハマール! 俺の頭に汚ねえ靴下を置いたこのクソ魔帝をぶっ殺させろ! 」 
  
 俺は聖剣を抜きクソ魔帝を斬ろうとしたが、ハマールに抱きつかれて前に進めないでいた。 
  
 この野郎……マルスとハマールに説得され、仕方なく臣下のフリをしてやったのに調子に乗りやがって! 

  
 1時間ほど前に俺たちは帝城の屋上にある小型飛空艦に乗り、この飛空艦要塞に乗り込んだ。

 そして十二神将を甲板で蘇生させた。地下でやらなかったのは、密室だと大気から魔素を吸収し魔力を補充するのは危険だし、かといって魔石からだともったいないからだ。屋外なら魔力を補充し放題だからな。

 ちなみに生き返った十二神将たちもランクが2ランク下がっていて、S-ランクになっていた。多分あいつら職を失うと思う。まあ、また頑張って上げてくれ。

 蘇生を終えたあと、艦橋に向かう途中で強制的に魔導通信を受信させる設備があると聞いた俺は、それを使い魔帝が健在である事を全貴族に知らせることにした。 

 魔帝が艦橋に入ると、艦長含めクルーは魔帝が生きていたことに顔面を蒼白にしてた。もう全員が死を覚悟した顔をしてたよ。今後の働き次第で処分を決めると魔帝が言ったことで、なんとか落ち着いたけどな。首の皮一枚繋がっただけだけど。
  
 俺もクルーたちに魔帝の命令に今後は従うように命令した。 
  
 そして混乱を早く収めるためマルスの提案により、イヤイヤ臣下のフリをしてやったってのにこのクソ魔帝は俺の頭に汚い靴下を置きやがった。

 調子に乗りやがってこの野郎……
  
「アクツ様! 落ち着いてください! 陛下と最強の矛であるアクツ様が不仲だということが知られるのは、今後のためにも避けなければなりません」 
  
「このクソ魔帝が調子に乗るのが悪いんだろ! ハマール! いいから離……せ……よ……」 
  
 俺はチャイナドレス姿できつく抱きしめてきた、ハマールの深い胸の谷間に視線を釘付けにされ声が小さくなっていった。 

 ぐっ……デカイ……そして柔らかい……尖塔で着替える時にブラを外したのか? も、もう少しで先端が見えそう……もうちょい……もう……
  
「ぐぬぬ! マルス! 十二神将! なぜ余を押さえるのじゃ! 押さえるなら魔王の方じゃろう! なぜ魔王にはハマールだけなんじゃ! 」 
  
「陛下! 大切な放送だというのに悪ふざけが過ぎます! これでは計画が台無しです! 」 
  
「ちょっとからかっただけじゃろ。そんなに怒るでない。魔王などいなくとも鎮圧など余裕じゃ」 
  
「だったら最初からそう言えクソ魔帝! 俺がどんな思いでテメーに下げたくもねえ頭を下げたと思ってんだ! 」 
  
 早いとこ内乱を終わらせて、このサプライズ放送に感激しているメレスとリリアの所に行きたかったから協力したってのに。 
  
「そんなの当然じゃろ? なんといっても魔王は帝国貴族なのじゃからな。リヒテン。あとで魔王は余によって泣くほど懲らしめられたと宣伝しておくのじゃ」 
  
「陛下、お戯れが過ぎますぞ」 
  
「この野郎! ぶっ殺す! ハマールどけっ! 邪魔するならもうここにいる全員の魔力を抜くぞ! 」 

 俺はニヤついた顔で挑発してくる魔帝にキレ、ハマールを引き剥がそうとした。
  
「アクツ様……私に滅魔を放つのですか? 」 
  
「え? うっ……」 
  
 しかし俺の胸もとで悲しそうな顔で見上げるハマールに、彼女を引き剥がそうとした腕から力が抜けていった。
  
 くっ、まただ。会うたびに滅魔を放ってくださいと、俺を追いかけ回していたハマールはどこに行っちまったんだよ…… 
  
「ハマールはどうしたのじゃ? まるで初めて会った頃に戻っておらんか? 」
  
「ええ、アクツ殿に救出されてからどうも様子がおかしくなっておりまして……確かにあの頃のハマールはこんな感じでしたね」
  
「なんというか調子が狂うのう……また触れたら泣かれたりせんじゃろうな? 」
  
「ははは、懐かしいですね。そんな時期もありましたね」

 なんだ? ハマールは昔はそんなか弱い女性だったのか?

 俺は魔帝とマルスのヒソヒソ話が聞こえてきて、ハマールが昔はこんな感じだったということに驚いていた。
  
「陛下。捕らえられていた地上軍の再編成が完了したようです」 
  
「そうか。魔王、遊びはこれまでじゃ。軍を帝都から退かせるのじゃ。あとは余の方でやる」 
  
「この野郎……全部終わったら覚えとけよ。軍は退かせる。オズボードの艦隊はあとでこっちに来させるからそれまで待ってろ」 
  
 俺は魔帝の自己中さにイラッとしつつも、念話で弥七に撤退の指示を出した。 
  
 魔帝の現有戦力は少ないが、時間が経つにつれ増えてくるだろう。ハマールを裏切ったアメリカの艦隊はかなりの数がいるしな。さっきの放送で兵の反乱が起こるだろうし、今まで抵抗していた世界各地にいる皇帝側の貴族も集まってくるだろう。 
  
「ハマール、もう大丈夫だから。俺はオズボード領に戻る。やらなきゃいけないことがあるしな。ハマールに何か困ったことがあれば連絡してくれ」 
  
「大丈夫です。裏切った者たちには地獄をみせてあげますから。あの……落ち着いたらまたサクラジマに……」 
  
「ああいいさ。また遊びにおいで。ハマールに頼みたいこともあるしな」 
  
「ラ、ラウラです……」 
  
「え? 」 
  
「ラウラと呼んでください。コウ様」 
  
「なんじゃと! ハマールが男にファーストネームで呼ぶことを許したじゃと!? 」 
  
「ハマールが……ハマールのファースネームを呼んだ貴族の男は全員が顔をズタズタにされたというのに……信じられん」
  
「あ、ああ……わかったラウラ……」 
  
 俺は魔帝とマルスが驚く姿を横目に、ハマールの名を呼んだ。 
  
 今までファーストネームで呼んでなんて一言も言わなかったのに、本当に調子が狂うな…… 
  
「嬉しい……」 
  
「そ、それじゃあな魔帝、もうやられんなよ! 」 
  
 俺は胸に顔を埋めるラウラの頭を撫でたあとそっと引き離し、艦橋の出口へと歩きながら魔帝に別れを告げた。 
  
「ふんっ! 二度も不覚は取らぬ! じゃがまあ……世話になった。帝国が落ち着くまでメレスを頼むぞ。余が迎えに行くゆえな」 
  
「来んじゃねえよ。ああそうそう、魔導携帯のメールは確認したか? 」 
  
「ぬ? 魔導携帯か? おお、メレスから余を心配するメールがこんなに……すまぬメレス。すぐに連絡をす……ん? なんじゃ? 魔王も余を心配してメールをくれておったのか? ククク……相変わらず素直じゃないの……なっ!? なんじゃと!? メレスとキスをしたじゃとぉぉぉ!! 」 
  
「ああ、メレスの方からな。まあそういうことだから迎えに来なくていいから。もう両想いな俺たちの仲を邪魔すんなよ? 」 
  
「メレスが……余のメレスが……余の……お、おのれ魔王! 貴様だけは……貴様だけはここで殺す! 」 
  
「あっははははは! やだね! あばよ魔帝! 」 
  
「待て! 待つのじゃ強姦魔! 」 
  
 俺は怒り狂う魔帝にお尻ペンペンをしてから艦橋を出た。そして外へと繋がる非常口から飛び立ち、帝都へと向かった。

 その際に甲板から魔帝が半狂乱でスキルを放ってきたがその全てを無効化し、俺は悠々と帝都へと降り立った。
  
 そして撤退準備を終えていた荒川さんと、暴れてすっきりした顔のリズと疲れた顔のシーナ。そして御庭番衆とグリードたち義勇軍と共に、ゲートでオズボード領へと戻ったのだった。 
  
 さて、ここからは俺の報復だ。 
  
 待たせたなオズボード、お前には因果応報という言葉を教えてやるよ。

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