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#クレイジー注意報!
Ep.11 危険信号
しおりを挟む………結局、一睡もできなかった………。
充血した目に朝日が染みる。
フラフラとおぼつかない足取りで校門をくぐった。
私と奴らの関係を一晩中考えていたら、いつのまにか小鳥が囀って辺りは明るくなっていた。
夜更かしは美容の天敵なのに。あいつら、今度会ったらただじゃおかない。
キリキリしながら下駄箱の扉を引く。
それと同時に、どうやって詰めたの?という量の手紙がドサドサと足元に落ちた。
(毎日ご苦労なことで……ハイハイ……。)
いつもはポイ捨ては良くないから拾ってゴミ箱にインするところだけど、寝不足でそんな気力もない。
よろよろと拾い集めて雑にカバンに詰めこんだ。
ようやくゴミ拾いを終えて上履きを取ろうと下駄箱を覗き込むと、封筒にも入っていない便箋が生き残ってこっちを向いている。
“放課後、4階の空き教室で待っています。”
(空き教室…?ああ、あそこね。)
ぼんやり思い浮かべて、なんの気無しにその便箋はポケットに入れる。
体は眠いと言ってるけど、頭の中はいまだ悶々としていて、授業中のほとんどをぼんやりと過ごした。
――そしてあっという間に放課後。休み時間はH2Oを探してみたけど、奴らはどこにもいなかった。いつもの旧校舎にさえも。
奴ら、どこいった。今日こそこのモヤモヤを晴らさないと、また眠れない。
このままだとゾンビになってしまう。
だるさで重たい足を必死に動かして、敷地中を探し回る。最後に辿り着いた新校舎の4階の空き教室のドアを、私は勢いよく開けた。
「姫ちゃん!…来てくれたんだね!」
「………。誰?」
嬉しそうに笑うヒョロい男に、訝しげな顔をする。睡眠不足でつい猫を被れなかった。
「ひどいなぁ、僕だよ。この間も呼びだしたでしょ?」
…ああ、この間の植木鉢落とされた時にいたモヤシか。
ジャガイモ以外の野菜だったから、なんとなく思い出した。
ニコニコと笑うモヤシにはどこか余裕を感じる。この間はもっとおどおどしていたのに。
見れば、周りには小太りだったり眼鏡に七三だったり、“いかにもオタク”なジャガイモが他に3人立っている。
なるほど。モヤシ、さてはイキってるな?
「今日呼んだのはね、姫ちゃんに忠告したいことがあるからなんだ。」
私の冷ややかな視線などお構いなしに、モヤシはにこやかに話し続ける。
窓もドアも締め切られた湿度高めの教室に漂う異様な雰囲気。
他のジャガイモ達のニヤニヤした視線が、まとわりついて気持ち悪い。
「忠告?……って、なんですかぁ?」
“あまり刺激しない方が得策”と即座に脳が判断して、無理やりぶりっ子スマイルを作ってさりげなくドアへ後退りして背をついた。
ドアを閉めたのは失敗だった。でも、退路は確保したから、タイミングを見てサッと開けて逃げよう。
――そう思ってたのに、次いだ言葉に反応してしまった。
「植木鉢を落として怖がらせれば、奴らの取り巻きのせいだと勘違いしてH2Oと距離を置くと思ったのに――……!
姫ちゃんが全く気付いてくれないから、今日は単刀直入に言わせてもらうよ。
ヤツらとの交際はやめるべきだ!」
――は?
辛うじて声は出さなかったものの、顔はものすごく歪んでいたと思う。そのくらい忠告とやらは不可解なものだった。
「奴らは女を侍らせて喜ぶような、とんでもないヤリ●ン集団だよ!女を道具のように扱って、飽きたらポイ捨てするような血も涙もない奴らなんだ!
汚い奴らに僕達の天使、姫ちゃんの純情を穢されるなんて、僕らは耐えられないんだ………!!」
胸に拳を作って早口で力説するモヤシ。周りのジャガイモ達もうんうんとしつこく頷いている。
ちょっと待って。ツッコミどころがありすぎる。
とりあえず、お前らの姫ちゃんじゃねぇよ。
しかも純情を穢されるって何。キモ。気持ち悪いじゃなくて、キモっ。
しかも植木鉢アンタらだったのかよ。危うく死ぬところだったんですけど!
本気で引いてしまって絶句している間にも、モヤシやジャガイモのH2Oへの悪口は止まらない。
いかに女をポイ捨てしてるか、とか。容姿を鼻にかけたナルシスト、とか。寝不足の頭にネチネチした説教はガンガン響いていく。
一頻り喚いた後で、モヤシが得意げな顔をした。
「これでわかっただろう!?
奴らは純粋な姫ちゃんのことを何も分ろうとしない酷い奴だって!!」
ブツン。その言葉に、私の中で何かが切れた。
「……は?ふざけんなよ。」
細いながらも低いドスの利いた声に、モヤシ達はキョロキョロ辺りを見渡した。
どんなに探したって他の人はいるわけない。
その声の主は私なんだから。
足早にモヤシとの距離を詰めて胸ぐらを掴む。
予想外かつ突然の事態に、モヤシのイキリはバリッと剥がれておたおたしている。
「確かに近江涼介は冷血ロボットだし、榛名聖は誰にでもヘラヘラしてるし、金ぱ……広瀬真はバカだしすぐブスって言うけど。女遊びしてるとかどうとか知らないけど。
でも!でも誰よりも“私”を“見て”くれたの!!
私のこと褒めて、心配して、笑ってくれたの!
そんなことも知らないで、何もわかってないとか!
勝手に非道な人間扱いすんな!バァアアアカ!!!」
言い切って肩で荒く息をする。
清楚で純真で可憐な姫ちゃんの豹変によほど驚いたのだろう。
威嚇している猫みたいに目を剥いて歯を食いしばる私を目の当たりにして、モヤシ達は唖然として固まった。
「な……、なんてことだ……!姫ちゃん………!」
モヤシは口角を震わせみるみるうちに打ちのめされたような顔になる。
そして今度は逆にモヤシが私の手首を掴んできて、窓際に追いやられてしまった。
……あれっ?もしかしてこれ、ピンチ?
押し返そうとするけど、モヤシのくせに力は強い。
あと忘れてたけど私、寝不足だったんだ。
「姫ちゃん、あいつらに感化されてそんな汚い言葉まで……!やっぱり僕らが浄化してあげないと…!」
顔が近くて息がかかりそう。抵抗してもなんなく押し返してさらに近づいてくる距離感に、必死に顔を背けて抗う。
どうしよう、どうする?
人生最大の貞操の危機に頭の中はフル回転。でも男の力に寝不足の状態で勝つ術は見つからなくて、キツく目を瞑った。
「たっ………!」
まぶたの裏に、飄々とした3人の顔が浮かぶ。
近江涼介!
榛名聖!
金髪!
もう、誰でもいいから!
「助けて……!!」
その瞬間、ものすごい轟音と共に、教室手前のドアが吹き飛んだ。
「――わかった。」
淡々としたその声に、何かが湧き上がる感覚がした。
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