姫君の憂鬱―悪の姫君と3人の王子共―

Chiyuki.

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#4 初めてのお出かけ

Ep.20 友達のカタチ

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ようやく広瀬真の納得のいく成果が得られたようで、ゲームコーナーから離れることができた。

ところ変わってここはフードコート。
――で、席もとれたので各々好きな昼食を買いに行っているところだ。


私はラーメンにした。
まあ、あいつらの前でかわいこぶっても無視されるだけだし。あと攻撃する相手もいないし。

呼び出し音が鳴ったので、出来立てのラーメンを受け取りに行く。
熱々のラーメンの乗ったトレイを運んでいると、背後から声をかけられた。

「ねぇねぇ、君1人?可愛いね!」

「ここ混んでるけど、席ある?俺らのとこ空いてるよ~。」

なんだ、ナンパか。

世の常識だが、誰もが振り返る美少女の私だ。
世に出ればナンパなんて日常茶飯事、喧しいBGM同然だ。

小蝿の如く話しかけてくるジャガイモ2つを完全に存在していないことにして、せっせとラーメンを席へと運ぶ。
すると、私が座るはずの席が女達で埋まっている。

「お兄さんかっこいいですね♡よかったら、相席とかぁ…。」

「一緒に遊びませんか?私たち暇してて♡」

女達が群がる中心で、こちらも何も存在していないかのように無視を貫く近江涼介が座っている。
奴の場合は表情も無だから、置物か何かと勘違いしそうなくらいだ。

残念でしたー♡

近江涼介のスルースキル舐めんなよ。
アンタらじゃ攻撃力(顔面力)不足だわ!

意気揚々と群れに近づくと、渾身の可愛いこぶりっこをお見舞いしてやった。

「ごめんね、涼介くん♡遅くなっちゃったぁ♡
……アレ?私のツレに何か??」

攻撃力カンストの私のキラースマイルに、負けを悟ったのか女達が撤退していく。

「ふっふーん。立場弁えてて学校の女共より大変素直でよろしい!
勝った勝った~、完全勝利♡ね、涼介くん?」

気分良く近江涼介の隣に座って、きゅるんと可愛いポーズを決めるも無視された。
正直無視されるってわかってたのに調子乗った感は否めない。

「………遅いね!あの2人!」

ちょっとバツが悪くなったので咳払いをひとつ。
無表情ロボットのスイッチを解除すべく、こちらもぶりっこモードを解除してなんでもない話題を振る。

「混んでるからだろ、あっち。」

そう言ってペッパーランチの看板を指差す。

なるほど、確かに人混みができている。
ギャーギャーと女が騒がしくて、プチ撮影会みたいになってるからあの人混みはペッパーランチのせいだけではないと思うけど。

「食べれば?ラーメン。」

近江涼介は言いながらコーヒー片手に目の前にあるサンドイッチに手をつける。
それならまぁ、伸びちゃうし、と私も食べ始めることにした。


「…………。」
「…………。」

……沈黙長っ

ペッパーランチはまだ来ない。話題提供の救世主を求めて人混みに目をやるけど、金髪も榛名聖も戻ってくる様子はなさそうだ。

2人並んで黙々と食事する。
気まずさに麺を啜る音を立てるのでさえやり辛い。

「………こういう時、友達って何話すんだろ。」

思わず心の声が漏れ出てしまった。

勢いで遊びに誘ったはいいけど、何していいかも何話していいかもわからないし、謎だらけだ。

「知らね。」

近江涼介の返事は相変わらず冷たくて無愛想。しかもなんの参考にもならない。
答えをちょっと期待した私が愚かだったと溜め息をつきかけた。


「………けど。」

少し間をおいて続く言葉に、ちら、と近江涼介を見る。そしたら視線がぶつかった。


「“友達はこうするもの”って型にはめなくていんじゃないか?
一緒にいて楽しいとか、自分を出せるとか、そう思えたら、それで。」

「そっ……かぁ。なるほど?」

腑に落ちたような落ちないような。

だって日曜日のショッピングモールには友達連れが溢れてる。誰もがみんなテーブルを囲んでワイワイ楽しそうに過ごしている。

休みの日まで一緒に遊ぶから友達なんじゃないの?
……それとも、友達だから休みの日も一緒に遊ぶの?

やっぱり私にはわからない。
でも、コイツらと私は友達だ。


「まぁわかったけど、でもアンタらといて楽しいと思ったこと一回もないんだけど。」

真顔でそう言った私に、近江涼介の無表情がより無になった気がした。

――――
――……

「涼ちゃん達ごめんね~。混んでた上になんか囲まれちゃって~。」

「聖がいちいち返事するからだろ!あー、もう疲れたわ。」

ようやく帰ってきた2人のおかげで、その場が一気に賑やかになる。そんな様子をちょっと客観的に眺めたりして。

(やっぱうるさいし、楽しいとかではない、けど。)

この輪の中にいるとくすぐったい気持ちになるから、まあいい、のか?

***

「さぁて、お腹も満たされたし、次は何しよっか~。」

フードコートを出てモール内をダラダラと歩きながら、榛名聖は3人の方を向いた。だから、ちょっと勇気を出して挙手してみる。

「はい。プリクラ撮りたい。」

「「「え?」」」


――ゲームセンターの端っこ、狭いプリクラ機に、私たちはぎゅうぎゅうに詰まっていた。


「ちょっと…せまい!ひとり小さいからいいけど、男3人もいるとなんか狭い!暑苦しい!」
「ああ゛?なんか言ったかブス。」
「あーら、小さい自覚あったのねチビ。」

「も~、2人ともこんな狭いとこで暴れないでって…あっ。」

喧嘩してる間にシャッターを切られてしまった。出来上がりが画面に映る。睨み合う私と広瀬真、それを宥める榛名聖が写っている。

「お前のせいでまともに撮れてねぇじゃねーか!ってか涼介いないし。逃げたぞあいつ。」

「任せて、捕まえたから♡」

3・2・1と機械がカウントダウンを始める。
その間に近江涼介の腕に自分のそれを絡めて写真が写る範囲に奴を引っ張り込む。

笑顔の準備はバッチリだ。
榛名聖はすでに後ろでピースなんかして余裕綽々で、広瀬真は最前列で慌ててポーズを考えている。

この写真もドタバタだけど、あとで見たデータは悪くないと思った。

「あ~、遊んだねぇ。楽しかったね~。」

モールを出て、榛名聖がゆるっと笑う。その言葉に、3人はしばらく沈黙した。


「まぁまぁってとこ?」
「人多いしお前らといると余計に注目されるしウンザリだわ。…まぁ楽しくなくはなかった。」
「疲れた。」


「わーぉ、素直な人がひとりもいないんだけど~。」


あっはっはーと、本当に可笑しいわけではなさそうな笑いと共に榛名聖は気の抜けた拍手をする。
溜息をつく近江涼介と広瀬真の間で、プリクラのシール片手に私はまた小さく挙手した。



「でも、…またこうやって遊びたい、かも……。」


恥ずかしさに眉間に力が入る。なんだか少し顔も熱い。
そんな私を3人はぽかんと見つめて、そして笑った。
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