タッタラ子爵家の奇妙な結婚事情

れん

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子爵令嬢と公爵の政略結婚

終わらない茶番劇

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 改めまして、皆さま。私の名前はリーベ・タラッタと申します。父はこの国で子爵位を賜っております、十把一絡げのどこにでもいるような普通の貴族でございます。
 髪の色こそ金髪ですが、どちらかと言えば稲穂色とか言われている方ですわね。
 
 幸いにして我が領地は肥沃な大地と年を通して安定した気候に恵まれているため小麦の産地としてそこそこ有名ではございますが、そんなところは他にいくつもございます。ゆえに、当子爵家はどこにでもある普通の貴族の家なのです。
 
 家族構成は両親と双子の弟の四人兄弟で、弟の方は少し離れた場所でやはり婚約者の方とともに小首をかしげています。婚約者の令嬢はそんな兄の横顔を楽しそうに見ております。相変わらずあのお二人は可愛らしいカップルですわね。
 
 まぁどこにでもあるような貴族の、それも跡取りでもない娘となるとその存在意義は少しでもいいところにお嫁に行くことでして、私もその例にもれず十六の時に婚約者が出来ました。それがいま私の隣に立っている男性です。
 
 ちなみに年齢差は十二歳差。現在三十歳の公爵様です。子爵家の娘が公爵家に嫁ぐなんて普通はありません。大体、自分の身分の上下から結婚相手を見繕うのが普通です。わが子爵家ならば、下は男爵家、上は伯爵家ですわね。
 
 実際、弟の婚約者は伯爵家の御令嬢で、伯爵家からの申し出だったかと思います。
 そんな中、二つも飛び越えて公爵家の方の婚約者が子爵令嬢の私になったかと言えば、別に壮大なラブロマンスなんてありません。ただ単に公爵様が初婚ではないからです。
 
 要するに、私は後妻です。後妻。
 
 すでに家柄のいいところ出身の先妻との間には跡取りとして申し分ない長男がおいでで、私がたとえ男児を産んだとしても公爵家の跡取りになることはない。それを承知してくれて屋敷の奥向きの仕事や社交をそつなくこなしてくれる女であれば、良くも悪くも誰でもいい。と言う条件でピックアップされたのが私と言うわけです。

 同じぐらいの年代で探さなかったのは、年端もいかぬ子娘ならうまく丸まって躾けておけるだろうという思惑があったのだろうと思います。まぁそのあたりの事情をまるっと説明してしまうあたり、誠実なのかこちらを思い切りバカにしているのか判断に困るところではありますが。

 そうは言っても、別段ないがしろにされているわけではありません。季節の折々に手紙や細々とした贈り物は戴きましたし、誕生日には食事や観劇などに連れ出してくれたり、今日と言う日にはドレスのプレゼントをいただきましたし、こうしてエスコートをしてくれています。

 同世代同士の婚約者の思春期特有の素直になれないすったもんだを間近で見てきた身としては、年上の男性のスマートさは感心せずにはいられません。この方も十代の頃は、そうですわね、先妻の女性とそのような青春を過ごされたんでしょうか。

「どうした?」
「いえ、私にはこの先、縁がないものなのだな、と」

 いつの間にかぼんやりとしていたのでしょう。それに気がついた婚約者が首をかしげて問いかけるのに、曖昧な笑みを浮かべて言葉を返す。
 それをどう思ったのか、婚約者が眉を顰めます。

「婚約破棄が、か?」
「あぁ、いえ、それはどうでもいいのです」

 どうやら誤解されたらしい。と気が付いて私は首を振る。仮にも王家の婚約問題を「どうでもいい」とは問題発言かもしれませんが、実際公爵家の後妻になるとはいえ、子爵令嬢でしかない身ですと、王家ははるか雲の上の存在ですのでこう、実感がわかないのですよ。
 
 一応、学園ではこの国の第一王子、そう、今まさに視線の先の檀上で茶番劇を繰り広げている方が同期生ですが、だからどうしたって言う話です。おそらくあちら様は私のことなんて認識もしてないでしょう。
 
 と言うかまだ終わらないのでしょうか。私、今日と言う日のために弟とともにダンスを死ぬほど練習したんですわよ? 弟が婚約者にみっともない姿は見せられないと泣きつくものですから、そりゃもう学園のダンス講師の方に「他国の王族の前で踊ってもそん色ない」と言われるほど頑張ったんですよ?
 
 それが披露できないのはさすがに悲しすぎるんですが……終わりそうにありませんわね。
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