タッタラ子爵家の奇妙な結婚事情

れん

文字の大きさ
3 / 17
子爵令嬢と公爵の政略結婚

寄り親と寄り子

しおりを挟む
「お前の学園内での数々の悪行―――」
「あれは誰だ?」

 絶好調で殿下が叫んでいるのを眺めながら、婚約者が尋ねます。さすがに殿下やその婚約者である御令嬢を公爵であるこの人が知らない。と言うわけはないので、尋ねているのは殿下の後ろにいる少女でしょう。

「確か、男爵令嬢の、アーニャ・カルディ嬢ですわね。カルディ男爵家は、キャメル伯爵家が寄り親だったはずです」

 たしかそこの次男が同期だったはず。と、視線だけで会場内を探すと、あぁいました。真っ青になって立ちすくんでいるのでよくわかります。その近くには彼の婚約者令嬢とご家族が憤怒の表情を浮かべています。
 
 貴族とは言ってもすべてを王家が管理しているわけではありません。多くは寄り親や寄り子と言って血縁関係や場所的なもので上位貴族が下位貴族をまとめて管理、面倒を見ている形になります。
 
 他の家ともめた時に寄り親に仲裁を依頼したり、もめた相手が上位貴族の場合は寄り親経由で何とかしてもらったりするのが普通です。
 
 税は直接国へと納めますが、寄り子が納められない分を寄り親に補填を求められることもありますので、結構うるさく口出ししてくるケースもありそうです。寄り親と子の関係は様々で、そのようにうるさく口出してくるがフォローも手厚い場合、口出しもフォローも何もない場合、口は出すがフォローはないなど、本当にそれぞれですわね。
 
 それ以外にも就職先の斡旋や嫁ぎ先や嫁や婿の貰い手の紹介なども親にしてもらうこともありますし、逆に親から薦められることもあるので、この辺りはお互いに持ちつ持たれつというものでしょう。
 
 あまりにも親からの搾取が酷い場合などは国から指導が入るそうですが、そこまでいったケースはほとんどない。と言うところだそうです。我が子爵家は寄り親との関係は良好かつ正常なものですわ。
 まぁ、公爵家の後妻の話も寄り親から打診と言う名のほぼ命令でしたが。

「あの様子では何も知らなかったのでは?」

 囁くように言うと、婚約者が頷きます。殿下の話の趣旨は要するに彼の婚約者である御令嬢が、殿下の後ろにいる男爵令嬢へと暴言や暴行をしたという話で、それを咎めているようです。
 
 ですが先ほども説明した通り、普通はそう言った場合はまずは自身の両親、そこから寄り親、そこでもダメならさらに親の親へと話が持ち込まれます。まぁ大抵はどこかで「お前が我慢しろ」と言われて終わるんですが、普通はそうする物なんです。それが貴族のメンツってものなんです。
 
 王族からしてもそんな下々の些細ないさかいをいちいち王家にまで持ち込まれても困るだけですので、基本的には王家は下位貴族の諍いに直接口を出すことはないのです。お互いがお互いの領分を侵さない。それがこの国の秩序です。
 
 ところが現在、男爵令嬢の問題に王族である殿下が口を出されています。これはかの家の矜持を踏みにじる行いであり、越権行為でもあります。
 
 そりゃ、憤怒の表情も浮かべるというものでしょう。そしてそれはキャメル伯爵だけではなくその親の…………キャメル伯爵家の寄り親って、今まさに殿下に責められている御令嬢の家だったはず。
 
 私がそれを呟くと、婚約者が深い深いため息をつきました。私の声が聞こえていたらしい周囲へもそのため息は伝わります。
 殿下、二重の意味でやらかしています。いえ、まぁ、だからこそ「茶番劇」なんでしょうが。それでもどうしましょうか。

「それでは皆様、卒業式に花を添える素晴らしい公演を演じてくださった殿下とその婚約者に盛大な拍手を!!」

 そうこうしているうちに、学園長が強引にまとめましたわ。パラパラとおざなりの拍手が上がる。まぁ、見世物としても一流とはいいがたいものでしたものね。

 思わずこの前見た劇の方がよかった。と呟いた私に、婚約者が今度新しい劇に連れて行ってくれると約束してくださいました。
 そうこうしているうちに殿下たちは退場され、改めて式が始まります。

「失礼、アーゴン公爵とその婚約者様」

 そこに静かに声がかけられます。なんだろうと視線だけ向けると、とてもお世話になったダンス講師が立っておりました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

【完結】よめかわ

ariya
恋愛
遊び人として名高い貴族・夏基は、不祥事の罰として「醜聞の姫」白川殿と政略結婚することに。 初夜、暗い印象しかなかった姫の顔を初めて見た瞬間――大きな黒目がちな瞳、薄桜色の頬、恥ずかしげに俯く仕草に、夏基は衝撃を受ける。 (可愛すぎる……こんな姫が俺の妻!?) 亡き恋人への想いを捨てきれず、夫を拒む白川殿。 それでも夏基は過去の女たちに別れを告げ、花を贈り、文を重ね、誠心誠意尽くして彼女の心を溶かしていく。 儚くて純粋で、泣き顔さえ愛らしい姫を、夏基はもう手放せない―― 平安貴族の切なく甘い、極上よめかわ恋物語。 ※縦読み推奨です。 ※過去に投稿した小説を加筆修正しました。 ※小説家になろう、カクヨム、NOVELDAYにも投稿しています。

氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁

瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。 彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。

うわさの行方

下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。 すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。 戦場から帰るまでは。 三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。 ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。

処理中です...