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進路指導室で開かれた捜査会議の内容は

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「さあ。どうかしらね。そこについてはもう少し詰めるべきかもね。でも、何にせよ。問い詰められた校長先生は逆上して彼女を突き落としたというストーリーは成立しない?」
「それは……不可能ではないでしょうけどね」
 私はモヤモヤを抱えながらそう答える。ずっと思っていた事だ。
 それは滝田さんは肝心な事は言わないという事。事件の捜査で分かった事実。それはエリナの件も校長とフル先の件についても詳しく教えてくれていた。
 聞いてもいないのに校長犯人説もぶちあげて言ってきた。
 でも、肝心な部分は胸に秘めている。何かアタリはつけているのだろうが、それは絶対に教えてくれない。
「まあ、飽くまで可能性の一つよ」
 ほら、やっぱりはぐらかした。
「他に疑わしい人とかはいないんですか」
 私もこれ以上そこに引っ掛かっていても仕方がないので話を進めることにした。
「放課後の学校っていう空間はね人目が多いでしょ。一人っきりでいるなんてことの人の方が少ないのよ」
 確かにそうかもしれない。放課後残っている生徒は殆ど部活、委員会活動だったり、または友達と遊んだり話をしたりとかもあるだろうが、いずれにしても一人残るという事はあまりない筈だ。
 職員にしても職員室に居れば誰かしらの目に付くだろうし、部活の顧問をしていれば生徒の目がある。
 だから、密会などがしたいのであれば屋上などが相応しい訳で。
「でも、降矢先生は一人だったんですよね。理科実験室に居たって聞きましたよ」
「ただ、隣にはあなたのクラスの子達が料理してたんでしょ。扉をあけ放ってたからその前を通ったら分かるという話だったわ。彼は少なくとも十七時二十分くらいの転落ギリギリまでは理科準備室にいたという証言を得ている」
 それはありさから私も聞いていた。途中でフル先も顔を出したとかとも言ってたっけ。
「ああ、そうみたいですね。皆が帰る時間まで電話をしてたって聞きました」
「そう。電話なのよね」
 滝田さんはそこでまた考え込むように言う。よほど気になるようだった。
「えっと、二人はずっと話してたんですか?」
「いえ。途中、二回くらい切ってかけてを繰り返しているみたいね」
 当然か。二人共一応仕事中だった訳で十七時から半までずっと電話しっぱなしは流石にありえない。となると、例えばどちらかが電話で何かを尋ねるか頼みごとをした。そして、一旦切ってそれについての返答をした。という様なところだろうか。
「何か確認事項があったって事なんですかね」
「うーん。状況から見たらそういう事になるのかな」滝田さんは一瞬首を捻りながら考え込んだが、「まあ、それについては熊谷先生からもう少し話を聞いてみたい所ね」と続けた。
 その後はいくつかの確認事項。今日のクラスの様子についての説明などをつらつら話したが、目新しい話も特になく、暫くして散会となった。
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