転生しました。

さきくさゆり

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第一章

夏は好きだが虫刺されがなくなればもっと好き

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 目が覚めると、すでに結構な高さまで日が昇っていた。
 朝日?がキラキラと湖に反射して眩しい。
 あと踝のとこオティウに刺されてて痒い。
 あ、オティウってのは前世で言うところの蚊です。
 ただの蚊です。刺されると痒くなる。それだけ。

 俺はテントを片付けて宿屋に向かった。
 一応チェックアウトしとかないとね!
 と思ってたんだけど行ったらもうされてた。あいつらがやってくれたんかね。

 つかあいつらどこ行ったんやろ。
 と思っておばちゃんに聞いたら飯を食いに行ってるそうな。
 俺もなんか食わないとなあ。かと言って同じとこに食いに行くのも勿体無いし……。
 よし。

「おばちゃん!美味い飯屋おせーて!」
「あんたらウチで食べる選択肢はないんか?」
「へ?ここ飯食えるの?」
「当たり前だわ。地下で食べられるよ」
「マジでか。じゃここで食うわ。おばちゃんが作るん?」
「私の旦那と息子が作っとるんよ。そこの階段で地下に行けるよ」

 そう言っておばちゃんはカウンター右手奥の階段を指差した。
 そいえばそんなようなことをチェックインするとき言ってたかも。
 疲れてて聞いてなかったわ。


 地下に行くとなんかこう道の裏手にあるバーみたいな雰囲気のとこだった。
 つかまんまバーである。
 カウンターに髭を生やした渋いおっさんのバーテンダーがいた。バーテン服がめちゃ似合う。

 コップを拭きながらこっちを見て、

「しゃああせええ!!」

 寿司屋みたいな挨拶をされた。

 雰囲気ぶち壊し。


「マスター……。それはない……」
「なんじゃい……。というかよくマスターなんて言葉よく知ってたのお。うちの息子がどっかで覚えてきたんだとか言ってこの格好とか押し付けてきたんじゃが……」

 はい、これ息子転生者ですね。早くもフラグ回収です。
 そいえばチェニックと村長妹のフラグはどうなったんやろか。

「息子さんに会えます?たった今ちょっと気になることができたんで」
「会えるぞ。おーいレデン!!!客がテメエに会いてえとよ!!!」

 いちいちうるせえジジイだな……。

「うっせえクソジジイ!マスターなんだから静かにしろっつってんだろ!」

 そう怒鳴りながら奥から出てきたのはジジイをそのまま若くしただけのバーテン服のアンちゃんが出てきた。
 つかオメェもうるせえ……。バーの雰囲気を親子でぶち壊してんじゃねえよ……。

「んで用があんのはアンタか?このジジイのクレームなら受け付けねーぞ。文句があんなら本人と話し合ってくれ」
「客商売ナメんな。じゃなくて……。えーと……まずは自己紹介だな。俺はパスト。オーガ討伐依頼で今日までこの宿屋でお世話になってたんだわ」
「パストだな。俺はレデンだ。見ての通りここのバーテンだ。バーテンってのは俺が本で読んて知「そこそこ。そのことで呼んでもらったのよ」
「あ?」
「単刀直入に聞くけども。レデンって転生者じゃない?しかも地球生まれ」
「お?お、お、お?マジかマジかよマジですか!オメェも転生者か!」
「やっぱりか……。つかその口ぶりだとまだ知ってる奴いるな」
「おお知ってるぞ。俺が知ってるのは三人だ。うち一人は転移者ってやつだな」

 さらにフラグ回収でーす。

 レデンは今三二歳。
 前世はイタリア人だそうです。
 俺のイメージと違う……。
 そして、知ってる転生転移者のことも教えてもらった。

 一人は転生者で女性。
 王都の騎士団にいるんだそうだ。
 一〇年ほど前に学園の遠征試験でここに来て知り合ったんだと。
 今でもたまに手紙のやり取りをしているから俺のことを言っといてくれる約束をしてくれた。

 もう一人の転生者は男性。
 丁度一週間前にここに来てからまたどっかに行ったそうな。
 冒険者をやってるらしくたまにフラッと現れては飯を食っていくらしい。
 次にいつ来るかわからんが来た時に俺のことを伝えておく約束をしてくれた。

 そして転移者についてだがちょっと問題がある。
 その転移者は男性で、一年ほど前にこの世界に来たらしい。
 問題はなんと王族にされてきた奴らの一人なんだと。
 しかも話を聞くとどうも召喚したのは、軍団にいる王女の身内っぽい……。
 更になんで一人でいるかというと、どうも巻き込まれて召喚されたようで『俺関係ないよね?』と言って逃げ出したそうだ。
 うーわ……。
 そいつとは一回しか会ってないからわからんが非常に面倒な性格だとレデンが言ってた。
 半年ほど前にフラッと現れて飯食ってなんか御大層なこと並べてまたどっか行ったそうだ。
 この世界でチーレム冒険でもするつもりらしい。
 関わりたくないです。


 とりあえず帰ったら騎士団の転生者に会ってみようと思う。
 まあ会ったからなんだって話だけどね。


 そんな話をしたあと、レデンとこっちの世界と向こうの世界の違いとか、転生したことによる苦労とかを話しまくった。
 俺のことを話したら大爆笑。
 ちょっと考えればやり過ぎちゃいけないことくらいわかるだろってさ。
 ちなみにレデンも話を聞く限りじゃあんまり自重してなかったみたいだけど、親には愛されてるようだった。
 ちなみにその親父さんはカウンターにもたれて爆睡してた。
 仕事しろよ……。
 俺以外に客いないけどさ……。


 そのあとレデンが作ってくれたピザとかスパゲッティを食べたが、メチャ美味かったです。

 ところでパスタとスパゲッティの違いって何じゃろかと前世からの疑問だったが、パスタの種類の一つだとレデンが教えてくれた。さすが元イタリア人ですわ。


 満足したのでお会計して、レデンにまた一ヶ月後に来ることを伝えて店を後にした。
 ちなみに話も含めて四時間くらいはいたと思うけど、結局最後まで親父さんは起きなかった……。


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