転生しました。

さきくさゆり

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第五章

引きこもりの治し方講座

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 引きこもりとは、『仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態』を指します。
 まあ家族とも交流をほとんどしない家庭もあるでしょう。

 さて、引きこもりの息子娘に悩む親御さん。

 あなたはそんな息子娘に対し、何をしましたか?

 説得なんてことをしましたか?
 手紙を食事と一緒になんてこともやりましたか?

 それでも解決しない場合、大抵は何をやっても意味がありません。
 出てくる気が全くないのですから。
 いっそここで死んでもいいやとさえ思ってるのですから。

 そういえば、ある漫画やある小説では、カッコよすぎな教師が頑張って親と和解させ、なんてことが多々あります。
 ですが現実問題まずそこまで肩入れしてくれる教師なんていません。
 大体成人しても引きこもってる人だっています。


 さて、引きこもりの息子娘に悩む親御さん。

 どうしたら引きこもりを外に出すことができるでしょうか。

 答えは非常に簡単な話です。

 それを今から実践して見せましょう。


 俺は恭介の部屋の扉をまず軽くノックした。
 中から少しガタガタという音がした後、鍵の開く音がした。
 少し扉から離れると、中からショートカットの女の子が現れた……女の子?

「へ?」
「あ、あの……どちら様で?」

 多分おばさんかおじさんだと思ったんだろうな。
 女の子は少しだけ開けた扉からスッと出てきて後ろ手に扉を閉めた。

「あーその……失礼ながら……君って恭介の彼女?」
「そうです……けど……」

 うわぁ……どっからどう見ても小学生なんだけど。
 ちっさすぎんだろ。

「あー……ちょっと恭介のことで話があるんだ。廊下にいるから他の彼女もいるなら連れてきてもらえないかな」
「恭介君のこと?えーと……わ、かりました……」

 女の子がまた部屋にひっこんで数十秒後、今度は三人の女性が出てきた。
 女の子とモデルみたいなプロポーションの長髪の女性と二人に比べると非常に普通な眼鏡のおさげ。
 うーん。
 初めて見たけどなんともギャルゲーのヒロインだなぁ。

 まあチェニックみたいに増えてないだけマシというか。
 別にハーレムはいいけどさぁ。
 羨ましい限りですよ全く。

「ねぇ、恭介のことで話って何?あんた誰よ」

 モデル女がすげぇ上から目線で話しかけてきた。
 なお身長も俺より高いので文字通り上から目線である。
 ちくせう。

「あー悪いな。んー……単刀直入に言うと、恭介を部屋から引っ張り出してぶん殴りたいから暫く外に出てってもらいたい」

 三人からコイツは頭大丈夫かみたいな目で見られてます。

「ああ、恭介に聞かれるとまずいかなと思って黙ってたんだけど。恭介が引きこもった原因というかその本人です」
「つまりあなたは恭介が引きこもった原因というわけですか」

 おさげがメガネをクイッと上げて復唱してきた。
 こいつアレだ。
 馬鹿に失礼なレベルの馬鹿だ。

「そゆこと。ああ自己紹介ね。俺は和樹。恭介に盾にされちゃった可哀想な幼馴染でーす」

 三人とも目をガン開きにして手で口元を抑えた。

「そういうわけなんで、一発ぶん殴りたいから暫く下にいてくれる?」
「な、なんで……」

 女の子がなんか言ってきた。

「なんで……殴るんですか?恭介君だって……貴方が死んでしまったらってずっと……」
「やり返さないだけマシでしょ」
「でも不可抗力なんでしょ?!恭介が言ってたのよ!」
「君達がどこまで聞いてるのかは知らないし、俺があの時の状況を君達に話す必要は無いと思うから話さないけど、俺は恭介に少々恨みもあるんでね。まあ相当ヌルい気もすっけどね」
「で、でも?!」
「あのさあ。お前ら三人は彼氏のあいつが怪我するのが嫌なんだろうけど、こっちは怪我どころか死にかけてんの。はいどいたどいた」

 三人を無理矢理押しのけようとすると、何故かおさげに引っ叩かれそうになった。
 余裕で避けられたけど。

「なにすんの?」
「あなた、本当に殴るだけですか?」
「そうだって言ってんだけど」

 何?信用無い?

「…………わかりました。ですが恭介に何かあったら、私はあなたを許しません」
「へいへい」

 おさげこっわ。

 渋々って感じでおさげに手を引っ張られながら、三人は階下におりてった。

 恭介も好かれてるねぇ。

 さてと。
 鍵は開いてるわけだが……。
 一応ノックするか。

 ――――コンッコンッコンッ

「あー聞いてるか分からんが一方的に話すぞー。久しぶりだな恭介。俺だ。和樹だ。復活したぞー」

 ――――ガターン!ガタガタガチャン!

 およ?
 どうも鍵をかけたようだ。
 どんだけ会いたくねぇんだよ。

「あーおばさんから聞いたけど、お前一年引きこもりだってな。しかも彼女達にお世話されてるらしいじゃんか。羨ましいこって」

 返事が無いのは分かってた。

 さてしつこいようだがもう一度。

 引きこもりの息子娘に悩む親御さん。
 引きこもりってのはなんで引きこもれるか分かりますか?

 それはね…………。


「ほいっと。邪魔するよー」
「へ?」

 うーわ髭面にうざい長髪。
 もろ引きこもりじゃねぇか。
 しかもくっさ!
 換気じゃ換気!

「ほいっ」
「ほ?」

 このティッシュとか……やめよ気持ち悪い。

「よいしょっ」

 はふぅ。
 だいぶスッキリしたな。
 色々巻き添えで消えたがまあ問題ないだろ。
 どうせ引っ張り出すんだし。

 恭介は部屋の真ん中でボケッとお姉さん座わりして信じられない物を見た顔になっていた。
 まあそりゃそうだろ。

 扉と窓は壁ごと無くなり、ゴミごと床とか他のものが抉り取られ、およそ人が住める環境じゃなくなったのだから。


 本当にしつこいようだがもう一度。

 引きこもりの息子娘に悩む親御さん。

 引きこもりを止めさせる方法は簡単です。

 引きこもれる部屋を無くせばいいのです。


 というわけで、俺は文字通り、恭介が引きこもっていた部屋を魔法術で消しさってやった。


「久しぶり、恭介君。よくも盾にしてくれたな一発殴りに来たぜ」
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