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僕は意を決して顔を上げた。
少し目に力を込めて身体を起こしアヤトさんの顔を見る。
無意識に噛み締めていた奥歯を緩めながら、口を開こうとしたその時、アヤトさんが目を伏せながらも先に口を開いてくれた。
「イツキは、イツキはここに来てしまう前、もしかして【ソレイユ】という喫茶店に居たんじゃない、かな?」
自信なさげなアヤトさんの、思った以上に長い睫毛が彼の表情に暗い陰を落とす。
たったそれだけで、さっきまでの印象から変わってしまったアヤトさんに僕は少し怯えて身体を硬くしてしまった。
つい今し方、自分から話をしようと決意したばかりだというのに、ホント情けないな僕は。
自分自身にガッカリしながら、でもやっぱり僕と同じくここへ来てしまった人なのか…と、アヤトさんの答えに納得して頷いた。
「やっぱり…!じゃあイツキは、あの時ダンプに気付いてなかった私を助けようとして、一緒に撥ねられちゃった子なのね?
最初にイツキを見た時は余りにも存在感が希薄だったから一瞬、身体だけこっちに来ちゃって、中身が違ってたり空だったり壊れてたりしてたらどうしようかとも思ったんだけど」
は!?
え?どういう事??
僕は突然変わったアヤトさんの口調と語られた言葉に驚いて目を見開いて固まってしまった。
「私の以前の名前は上條絢子、享年42歳。夫とは10年以上も前に死別。子供は3人、更に孫が2人も居て既にオバアチャン。近々もう1人孫が増えるってワクワクしてた時に【ソレイユ】で店内交通事故死しちゃって今は15歳の男子。
今さら子供になった挙句に性別まで変わるって、もうホントどうなってんの?って状態よ」
……ぅ、え?
エエエエエエエーーーーーッッ!?
僕は余りの情報量に思わず仰け反ってしまう。
さすが元オバチャン。
話し始めたら口から出てくる言葉の量が並じゃない。
てっきり、「実は私も日本から異世界に来てしまったんですよ。【ソレイユ】を知ってるなんて地元が同じなんですかね」的な事を言われる程度だと思ってたって言うのに。
なに、この考えていた事の斜め上過ぎるアヤコサンの答え!
あれ?僕がちゃんと聞いてなかっただけか?
【ソレイユ】に居なかったかって聞かれたんだったか??
僕は驚いて口をパクつかせていると、彼女?は構わずに話を続けた。
「実は私も気が付いたらイツキと同じように、この森にいたんだよね。しかも何故か地面に転がってたのよぉ」
そう言ってアヤトさんはアヤコさんとして話し始めた。
イケメンが急にオネエ言葉とか、違和感ハンパないんだけど、これはもう気にしたら負けだ。負けなのだ、たぶん。
僕は黙って大人しく首を縦に振るだけの人形と化す事に決めた。
「ここに、このまるでゲームみたいな、ファンタジーでイカれた世界に来てしまったのが実に2年前の今日でね。
まぁイツキとの時間の誤差は何故だかサッパリ分からないんだけど、当時13歳のモヤシ野郎になってた私は、右も左も分からないまま薄気味悪い森の中を1人彷徨い歩いてたのよ。今思うと無知って凄いわ~って感心しちゃうんだけどね。で、ウロついてたらバケモノどもの群れに見つかっちゃって命からがら逃げ回ったんだけど、結局は嬲るように追い詰められた挙句に生きたまま両脚を喰われるっていう貴重な体験をしてねぇ」
貴重な体験…
そんな言葉で済ませていい体験なのか?
それ…
「まぁ、こりゃもうさすがに無い脚じゃ走れないから詰んだな、死んだなって思ったんだけど、運良くSランク冒険者ってヤツに助けられてね。その冒険者が偶然にも持ってた貴重な薬で喰われた両脚が生えた時には、そりゃもう驚いたのなんのって…」
喰われた脚が生えた?
喰われた脚が生えたぁ?
それ、どんなヤバイ薬なの?怖ッ!
少し目に力を込めて身体を起こしアヤトさんの顔を見る。
無意識に噛み締めていた奥歯を緩めながら、口を開こうとしたその時、アヤトさんが目を伏せながらも先に口を開いてくれた。
「イツキは、イツキはここに来てしまう前、もしかして【ソレイユ】という喫茶店に居たんじゃない、かな?」
自信なさげなアヤトさんの、思った以上に長い睫毛が彼の表情に暗い陰を落とす。
たったそれだけで、さっきまでの印象から変わってしまったアヤトさんに僕は少し怯えて身体を硬くしてしまった。
つい今し方、自分から話をしようと決意したばかりだというのに、ホント情けないな僕は。
自分自身にガッカリしながら、でもやっぱり僕と同じくここへ来てしまった人なのか…と、アヤトさんの答えに納得して頷いた。
「やっぱり…!じゃあイツキは、あの時ダンプに気付いてなかった私を助けようとして、一緒に撥ねられちゃった子なのね?
最初にイツキを見た時は余りにも存在感が希薄だったから一瞬、身体だけこっちに来ちゃって、中身が違ってたり空だったり壊れてたりしてたらどうしようかとも思ったんだけど」
は!?
え?どういう事??
僕は突然変わったアヤトさんの口調と語られた言葉に驚いて目を見開いて固まってしまった。
「私の以前の名前は上條絢子、享年42歳。夫とは10年以上も前に死別。子供は3人、更に孫が2人も居て既にオバアチャン。近々もう1人孫が増えるってワクワクしてた時に【ソレイユ】で店内交通事故死しちゃって今は15歳の男子。
今さら子供になった挙句に性別まで変わるって、もうホントどうなってんの?って状態よ」
……ぅ、え?
エエエエエエエーーーーーッッ!?
僕は余りの情報量に思わず仰け反ってしまう。
さすが元オバチャン。
話し始めたら口から出てくる言葉の量が並じゃない。
てっきり、「実は私も日本から異世界に来てしまったんですよ。【ソレイユ】を知ってるなんて地元が同じなんですかね」的な事を言われる程度だと思ってたって言うのに。
なに、この考えていた事の斜め上過ぎるアヤコサンの答え!
あれ?僕がちゃんと聞いてなかっただけか?
【ソレイユ】に居なかったかって聞かれたんだったか??
僕は驚いて口をパクつかせていると、彼女?は構わずに話を続けた。
「実は私も気が付いたらイツキと同じように、この森にいたんだよね。しかも何故か地面に転がってたのよぉ」
そう言ってアヤトさんはアヤコさんとして話し始めた。
イケメンが急にオネエ言葉とか、違和感ハンパないんだけど、これはもう気にしたら負けだ。負けなのだ、たぶん。
僕は黙って大人しく首を縦に振るだけの人形と化す事に決めた。
「ここに、このまるでゲームみたいな、ファンタジーでイカれた世界に来てしまったのが実に2年前の今日でね。
まぁイツキとの時間の誤差は何故だかサッパリ分からないんだけど、当時13歳のモヤシ野郎になってた私は、右も左も分からないまま薄気味悪い森の中を1人彷徨い歩いてたのよ。今思うと無知って凄いわ~って感心しちゃうんだけどね。で、ウロついてたらバケモノどもの群れに見つかっちゃって命からがら逃げ回ったんだけど、結局は嬲るように追い詰められた挙句に生きたまま両脚を喰われるっていう貴重な体験をしてねぇ」
貴重な体験…
そんな言葉で済ませていい体験なのか?
それ…
「まぁ、こりゃもうさすがに無い脚じゃ走れないから詰んだな、死んだなって思ったんだけど、運良くSランク冒険者ってヤツに助けられてね。その冒険者が偶然にも持ってた貴重な薬で喰われた両脚が生えた時には、そりゃもう驚いたのなんのって…」
喰われた脚が生えた?
喰われた脚が生えたぁ?
それ、どんなヤバイ薬なの?怖ッ!
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