僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

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58.

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見た目はおじさんなのに、ウールドさんって何だか子供みたいで面白いなぁ。

初めて見た時はあんなにも怖かったのに、ギャップがあり過ぎて今ではもう信じられないくらいだ。

かじるな!」

と、食器を片付ける為に立ち上がったアヤさんにスパーンと後頭部をはたかれ、ウールドさんがテーブルに倒れ伏した。

「あう!俺、これでもアヤトにとっては命の恩人なんだぜ?それなのにこの待遇…」

グスンと鼻をすすりながら、シンクで食器を洗うアヤさんにブツブツと文句を言うウールドさんの言葉に僕は思わず食い付いた。

命の恩人?

「お?気になる?」

僕が興味津々な顔になった事に気が付いたウールドさんがニヤリと笑って、さっきまでアヤさんが座っていた椅子にドカッと腰掛けた。

「実はな、シンラの森で瀕死のアヤトを拾ったのがこの俺だ!」

おおッ!
喰われた脚が生えるヤバイ薬をくれた、Sランク冒険者の人!!

「私は拾得者しゅうとくしゃから拾得物の返還を受ける際の、報労金ほうろうきんに相当する物は既に支払い終ってる。だからお前からいつまでも恩着せがましく言われる筋合いは無い」
「おーおー、また言われたなソレ。全く意味分かんねぇけど」

拾った……

あ、僕もアヤさんに言われた。
でも僕は自分の命を放棄した事でアヤさんのモノになったって言われたんだよなぁ。

「イツキ!イツキはウチの子になったんだから、報労金は要らないからね。絶対受け取らないし、これからずっと一緒に居てくれればそれでいいんだからね」

洗い物が終わったアヤさんが慌てて僕の側に来て、僕の頭を抱き込みながら、予備動作ナシでウールドさんに蹴りを繰り出した。

「おっと、意味も無く食らってやらねぇよ。俺は痛みに快感を覚える特殊な趣味はないんでな」

ウールドさんは背もたれに置いた片手を軸にして、ヒラリと音も無く椅子の後ろに下りながら軽々とアヤさんの蹴りをかわしてフンと鼻を鳴らした。

「さっきわざと私にはたかれたのはイツキと話したかったからか?マジで早く帰れ、この害虫め」
「ホントお前に邪魔されなきゃ、イツキも一言くらい俺とお話してくれたかも知れねぇのに…心狭い男だなぁアヤトは」
「そんなに若い娘とお話がしたかったのなら、街の店でお金出して存分に楽しんで来いよ、オジサン」
「いやに警戒してるなぁ。ははん、さては実力的には俺の方が強いもんだから、またイツキを盗られないようにって必死か?」
「…………」
「図星か!ケケケッ」
「お前はこれから老いるだけだが、私は成長していくからな、すぐに追い抜いてやるさ」
「まずは追い付いてから、だけどなぁ」

愉しそうなウールドさんに対してアヤさんは忌々しそうにチッと舌打ちをすると、「すぐに追い付く」って呟いて僕をギュッと抱き締めた。
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