僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

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73.

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「はい、頑張ります」

言われた通りステータスを変更しようと画面に手を伸ばした。
どういう仕組みになっているのかは分からないけど、感触がなくても指で画面に触れると、ちゃんと画面は反応して難なく変更する事が出来た。

これ、他人から見たら…何もない空間に何か描いてる変な人に見えるんじゃ…?

って思っていたら、アヤさんが「最初はみんなやってる事だから、誰も気にしないよ」って教えてくれた。
どうやら慣れると頭の中で考えるだけで出来るようになるらしい…

良かった。
そうだよね、アヤさんが戦闘中とかに変更したくなった時はどうするんだろうって思ったんだよ。

「さて、『隠伏』の件は一旦保留にしといて。今10時くらいだから時間的には微妙だけど、お腹が空いてるなら軽く朝ご飯にするかい?」

聞かれて僕は素直にコクリと頷いた。

どうやって使ったのか分からない事を延々と考えても仕方がないし、安心したからか、何よりさっきからとてもお腹が空いていたのだ。

「じゃあハムと卵のサンドイッチにミルクたっぷりのコーヒーでどうかな?」

僕はこの世界にもコーヒーがある事に驚きつつ頷いた。

「コーヒーはね、それっぽい豆を見付けるのが大変だったんだけど、ヒューラル山のふもとにコーヒーチェリーに似た感じの実がなってる木が生えててね。収穫するのに黒龍が邪魔だったから先月も少し間引きサーチ&デストロイして来たんだけど…」
「配った龍鱗…ですか?」
「そうそう、その時のなんだよ。折角見付けた木を踏み潰されない為に張り切っちゃって、ちょ~っとあの辺りの龍を狩り過ぎちゃってるんだけどね」

……ちょっと?
張り切り過ぎたアヤさんが、本当にちょっとで済んでるんですか!?

それにしても、やっぱりコーヒーは無かったんだ…
でもアヤさんは自力で作っちゃったんだね。
きっと味噌とか醤油とか、他にも色々と自分で作っちゃったんだろうなぁ。

僕はドキドキしながらも、手渡されたコーヒーカップが乗ったソーサーを受け取った。

ーーーーふわぁ、いい香り…

何だか『ソレイユ』を思い出して少し泣きそうな気分になっちゃうよ。

「胃腸の為にミルクはいつもより・・・・・多めに入れて、砂糖は自分の好みで入れてね」

アヤさんはシュガーポットと大きなミルクピッチャーをテーブルに並べ、沢山のサンドイッチが入ったバスケットをドンと置いた。

「コーヒー豆もどきはフライパンで自家焙煎して、こだわりのネルドリップだよ。でもまぁ面倒だから気が向いた時にたくさん淹れて、無限収納アイテムボックスに何杯も入れてあるんだけどね」

サンドイッチ用の取り皿を僕と自分の前に並べながらそう言うと、アヤさんは「忘れてた!」って言いながらペーパーナプキンの上に木製のコーヒーマドラーを置いてくれた。

「さて食べよう。サンドイッチは残ったら仕舞うだけだから、安心して食べれる分だけ食べてね。それじゃあ…」

「「いただきます」」

こうして僕達はソファーに並んで座って、遅めの朝ご飯を食べ始めた。
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