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「はい」
僕は頷きながら返事をして、アヤさんから秤とボウルと紙袋に入れられた薄力粉を受け取った。
それからの時間は本当に驚きの連続だった。
僕はパンケーキの作り方なんて全く知らないどころか、料理を作る過程に携わった事すら今までなかったから、余り役に立てたとは思えない程しか手伝えなかったんだけど、それでもテーブルを粉だらけにしながら薄力粉を篩にかけたり、卵を割り砕いて二人で殻を懸命に取り除く事になったり、湯煎したバターにお湯を入れちゃったり、牛乳瓶を倒して零したり…
ーーーーって、あれ?
僕、役に立ってなくない?
寧ろ序盤から全力で足手纏いじゃ……??
でもアヤさんは僕が何をしても物凄く楽しそうに笑ってくれたから、僕は数々の失敗を気にする事なく、パンケーキを最後まで楽しんで作る事が出来たのだった。
因みにアヤさんのパンケーキアートは向こうでは再現不可能なクオリティの高さでございましたですよ、はい。
イラストの主線となる生地がホットプレートに落ちるまでの速度が遅過ぎる!と重力魔法を駆使して早くした挙げ句、【速度上昇】のスキルを使って超高速で描かれるイラストの細かさは有り得ない程で、最終的には手描きじゃなくてプリントされた物だと言われたら納得してしまうような出来栄えになっていたのだった。
それからホットプレートの半分が各自の領土だってアヤさんが言うから、僕も頑張って色々と描いたんだけど、ちょっと輪郭が歪んだ青い猫ロボットのイラストとかが精一杯でした。
だけど楽しかったなぁ…
フライ返しで返すのに失敗して崩れた奴をホットプレートから素手で摘んで「熱い熱い」って大騒ぎしながら食べたり、丸く綺麗に焼き上がったパンケーキに二人がかりでコテコテに生クリームデコレーションしてみたり、その出来上がった物を食べるのにまた一苦労してみたり、食べきれない分を焼きながら無限収納にせっせと仕舞ったり、シンクの前に二人で並んで洗い物をしたり…
今日は本当に嬉しい『初めて』の体験が盛りだくさんで、僕は終始大はしゃぎだった。
お腹が膨れて、はしゃいで疲れて、僕はソファに座って少しぼんやりしていると、アヤさんが僕のおデコに掛かった前髪を掻き上げてから隣に座った。
「どうしたの?疲れた?眠くなってきたのならお昼寝でもしておいでよ」
言われて僕は首を横に振りながら、パンケーキを作る前に考えていた事を思い出し、意を決して言葉に変えた。
「あ…アヤさんこそ休憩、して休んで下さい。昨晩も僕の所為で寝てないし、だって僕……アヤさんが休んでるのを見た事がない…から……」
「え?私!?
私なら全然大丈夫だよ。既にレベルが700超えてるんだから、1週間や10日だって不眠不休で問題無く動ける感じだし」
「ぅえ?で、でも、だけど…」
「ん~~~…じゃあ、一緒にお昼寝しようか?」
……………………は?
ぇえッ!?
「~~~~~~ッッ!!??」
い、一緒にお昼寝ぇ!?
ーーーーーーーーーーーーーーーー
こんなシーンの下に書くのもアレですが、今年の10月から3ヶ月間、数ある作品の中から本作を読んで頂きまして本当にありがとうございました。
どうぞ来年度も宜しくお願い申し上げます。
それでは皆様、良いお年を。
僕は頷きながら返事をして、アヤさんから秤とボウルと紙袋に入れられた薄力粉を受け取った。
それからの時間は本当に驚きの連続だった。
僕はパンケーキの作り方なんて全く知らないどころか、料理を作る過程に携わった事すら今までなかったから、余り役に立てたとは思えない程しか手伝えなかったんだけど、それでもテーブルを粉だらけにしながら薄力粉を篩にかけたり、卵を割り砕いて二人で殻を懸命に取り除く事になったり、湯煎したバターにお湯を入れちゃったり、牛乳瓶を倒して零したり…
ーーーーって、あれ?
僕、役に立ってなくない?
寧ろ序盤から全力で足手纏いじゃ……??
でもアヤさんは僕が何をしても物凄く楽しそうに笑ってくれたから、僕は数々の失敗を気にする事なく、パンケーキを最後まで楽しんで作る事が出来たのだった。
因みにアヤさんのパンケーキアートは向こうでは再現不可能なクオリティの高さでございましたですよ、はい。
イラストの主線となる生地がホットプレートに落ちるまでの速度が遅過ぎる!と重力魔法を駆使して早くした挙げ句、【速度上昇】のスキルを使って超高速で描かれるイラストの細かさは有り得ない程で、最終的には手描きじゃなくてプリントされた物だと言われたら納得してしまうような出来栄えになっていたのだった。
それからホットプレートの半分が各自の領土だってアヤさんが言うから、僕も頑張って色々と描いたんだけど、ちょっと輪郭が歪んだ青い猫ロボットのイラストとかが精一杯でした。
だけど楽しかったなぁ…
フライ返しで返すのに失敗して崩れた奴をホットプレートから素手で摘んで「熱い熱い」って大騒ぎしながら食べたり、丸く綺麗に焼き上がったパンケーキに二人がかりでコテコテに生クリームデコレーションしてみたり、その出来上がった物を食べるのにまた一苦労してみたり、食べきれない分を焼きながら無限収納にせっせと仕舞ったり、シンクの前に二人で並んで洗い物をしたり…
今日は本当に嬉しい『初めて』の体験が盛りだくさんで、僕は終始大はしゃぎだった。
お腹が膨れて、はしゃいで疲れて、僕はソファに座って少しぼんやりしていると、アヤさんが僕のおデコに掛かった前髪を掻き上げてから隣に座った。
「どうしたの?疲れた?眠くなってきたのならお昼寝でもしておいでよ」
言われて僕は首を横に振りながら、パンケーキを作る前に考えていた事を思い出し、意を決して言葉に変えた。
「あ…アヤさんこそ休憩、して休んで下さい。昨晩も僕の所為で寝てないし、だって僕……アヤさんが休んでるのを見た事がない…から……」
「え?私!?
私なら全然大丈夫だよ。既にレベルが700超えてるんだから、1週間や10日だって不眠不休で問題無く動ける感じだし」
「ぅえ?で、でも、だけど…」
「ん~~~…じゃあ、一緒にお昼寝しようか?」
……………………は?
ぇえッ!?
「~~~~~~ッッ!!??」
い、一緒にお昼寝ぇ!?
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こんなシーンの下に書くのもアレですが、今年の10月から3ヶ月間、数ある作品の中から本作を読んで頂きまして本当にありがとうございました。
どうぞ来年度も宜しくお願い申し上げます。
それでは皆様、良いお年を。
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