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「そんな全力で逃げなくても…」
アヤさんがあからさまにガッカリした顔で項垂れると、僕は途端に申し訳ない気分になって、おずおずとアヤさんに近付いていった。
「ほら、捕まえた!」
「~~~ッ!?」
ビビビクーッと身体を震わせた僕が硬直すると、アヤさんは僕をガッチリと捕獲して、一度肩に二つ折りで担いでから立ち上がり、僕を抱え直して定位置の右腕に座らせた。
「ゴメン、ゴメンよ!そんなに驚くとは思わなかったんだ。怖がらせちゃって本当にゴメンね。
ところでそろそろお昼なんだけどさ、さっきのサンドイッチで今はそこまでお腹が空いてないと思うんだよね。だからこれから、の~んびりとパンケーキでも一緒に焼いてみたいなぁって考えてるんだけど、どうかな?」
「パンケーキ…ですか?」
「うん、もし良かったらホットプレートでパンケーキを、ね。
焼き上がったらアツアツのソレにジャムとかバターとか蜂蜜とか生クリームとか、好きなのを付けて食べると……ほら美味しそうだろう?」
「あの…僕なんかが一緒に作っても、ホントにいいんですか?」
「うん勿論。きっと楽しいよ!何ならワタクシめの芸術的なパンケーキアートを披露してもいいし」
「パンケーキアート!?」
「そうそう、一時期テレビとかでも話題になった奴ね」
アヤさんが戯けながら笑って、僕を抱えたまま優雅に腰から曲げるお辞儀をして見せてくれると、僕は了承の意味を込め、小さく笑いながら目を輝かせてアヤさんにギュッとしがみ付いた。
さっきアヤさんに捕まるまで僕の頭の中は…そりゃもう恥ずかしさで一杯のガクブル状態だったんだけど、捕獲されて驚いて、突然思ってもみなかった楽しそうな事を提案されて浮かれた僕は、いつの間にかワクワクしながらアヤさんに運ばれて行ったのだった。
そのままキッチンに連れて行かれた僕は一緒にシンクで手を洗うと、アヤさんが棚や引き出しからボウルや泡立て器や篩や計量カップやらをどんどん取り出してカウンターテーブルに並べていってくれた。
「これは粒が柔らかい種類の麦を挽いて作ったお手製の薄力粉なんだけど、今回はコレと卵と牛乳とバターと砂糖とで基本的なパンケーキを作ろうと思うんだよね」
無限収納から食材を次々と出しながらアヤさんがそう言うと、突然ニヤリと笑って、細い棒状の茶色く枯れた鞘付き豆みたいな物を見せてくれた。
「それと…コレの匂い、ちょっと嗅いでみてくれる?」
「ッ!?」
「何だか分かる?」
「……物凄く甘ぁい、匂いがします」
「うんコレね、バニラビーンズみたいでしょう?実は鑑定したら全くの別物だったんだけど、毒にも薬にもならない無味の植物でね。以前、これをオイルに浸けてバニラオイル擬きを作った事があるのをふと思い出したもんだから……
今回ぜひ使ってみようかと思って。
バニラオイルがあると卵や牛乳のにおいを消す効果があるから、コレも入れて、一緒にふわふわのパンケーキをたくさん焼こうよ!まあ、余ったら無限収納に仕舞えばいいだけの事だしね」
「……はい!」
正直バニラビーンズとかバニラオイルが何なのか、具体的には全くピンとこなかったんだけど、アヤさんが取り出したお手製の魔道具を見てテンションの上がった僕は細かい事を気にせずに同意した。
「じゃあまず、全部の材料を計ってから薄力粉を篩にかけよう。そしたらバターを湯煎で溶かして、卵を白身と黄身に分けようか」
アヤさんがあからさまにガッカリした顔で項垂れると、僕は途端に申し訳ない気分になって、おずおずとアヤさんに近付いていった。
「ほら、捕まえた!」
「~~~ッ!?」
ビビビクーッと身体を震わせた僕が硬直すると、アヤさんは僕をガッチリと捕獲して、一度肩に二つ折りで担いでから立ち上がり、僕を抱え直して定位置の右腕に座らせた。
「ゴメン、ゴメンよ!そんなに驚くとは思わなかったんだ。怖がらせちゃって本当にゴメンね。
ところでそろそろお昼なんだけどさ、さっきのサンドイッチで今はそこまでお腹が空いてないと思うんだよね。だからこれから、の~んびりとパンケーキでも一緒に焼いてみたいなぁって考えてるんだけど、どうかな?」
「パンケーキ…ですか?」
「うん、もし良かったらホットプレートでパンケーキを、ね。
焼き上がったらアツアツのソレにジャムとかバターとか蜂蜜とか生クリームとか、好きなのを付けて食べると……ほら美味しそうだろう?」
「あの…僕なんかが一緒に作っても、ホントにいいんですか?」
「うん勿論。きっと楽しいよ!何ならワタクシめの芸術的なパンケーキアートを披露してもいいし」
「パンケーキアート!?」
「そうそう、一時期テレビとかでも話題になった奴ね」
アヤさんが戯けながら笑って、僕を抱えたまま優雅に腰から曲げるお辞儀をして見せてくれると、僕は了承の意味を込め、小さく笑いながら目を輝かせてアヤさんにギュッとしがみ付いた。
さっきアヤさんに捕まるまで僕の頭の中は…そりゃもう恥ずかしさで一杯のガクブル状態だったんだけど、捕獲されて驚いて、突然思ってもみなかった楽しそうな事を提案されて浮かれた僕は、いつの間にかワクワクしながらアヤさんに運ばれて行ったのだった。
そのままキッチンに連れて行かれた僕は一緒にシンクで手を洗うと、アヤさんが棚や引き出しからボウルや泡立て器や篩や計量カップやらをどんどん取り出してカウンターテーブルに並べていってくれた。
「これは粒が柔らかい種類の麦を挽いて作ったお手製の薄力粉なんだけど、今回はコレと卵と牛乳とバターと砂糖とで基本的なパンケーキを作ろうと思うんだよね」
無限収納から食材を次々と出しながらアヤさんがそう言うと、突然ニヤリと笑って、細い棒状の茶色く枯れた鞘付き豆みたいな物を見せてくれた。
「それと…コレの匂い、ちょっと嗅いでみてくれる?」
「ッ!?」
「何だか分かる?」
「……物凄く甘ぁい、匂いがします」
「うんコレね、バニラビーンズみたいでしょう?実は鑑定したら全くの別物だったんだけど、毒にも薬にもならない無味の植物でね。以前、これをオイルに浸けてバニラオイル擬きを作った事があるのをふと思い出したもんだから……
今回ぜひ使ってみようかと思って。
バニラオイルがあると卵や牛乳のにおいを消す効果があるから、コレも入れて、一緒にふわふわのパンケーキをたくさん焼こうよ!まあ、余ったら無限収納に仕舞えばいいだけの事だしね」
「……はい!」
正直バニラビーンズとかバニラオイルが何なのか、具体的には全くピンとこなかったんだけど、アヤさんが取り出したお手製の魔道具を見てテンションの上がった僕は細かい事を気にせずに同意した。
「じゃあまず、全部の材料を計ってから薄力粉を篩にかけよう。そしたらバターを湯煎で溶かして、卵を白身と黄身に分けようか」
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