僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

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だって心が不安定になるような気持ちは…全て奥の方にギュッと閉じ込めておかないと。
じゃないといつか一気に溢れ出て、僕を粉々に壊してしまいそうだから……

「そうだミケ、今日はこの子と食事がしたくて来たんだけど、今からでも大丈夫だろうか?」
「そこは『もちろんですニャ!』と胸を張ってお応えしたいところニャんですが……
実は今日は来客数が思いの外多くて、食材をほぼ使い切っておりますのニャ…」

猫耳をへにゃりと寝かせ、尻尾もダランと垂らして肩を落としたミケーリュウスさんに、ウェイトレスさんは思わずといった感じで声を掛けた。

「パパ、だったら食材をアヤト様に分けて頂けば作れるんじゃないの?」

ぱ……パパぁ!?
え?
マジで?
マジでパパなの?
ホント信じられないんだけど、ミケーリュウスさんって…マジでパパなの!?
まぁ確かにじっくり観察して見れば、ウェイトレスさんとミケーリュウスさんは顔のパーツが色々とそっくりで良く似てるんだけど、じゃあミケーリュウスさんって一体何歳なんだろう?
物っ凄く若く見えるんだけど……

いや、見た目だけならアヤさんより明らかに年上だって事は分かるんだけど、でもこんなに大きな子供がいる歳には全然見えないのだ。
精々20代前半にしか見えない。

「ナージャそんな…アヤト様に食材を提供して頂くだニャんて、無茶なお願い事は失礼なのニャ」
「いや、それくらいなら全く構わないが…」
「ほ、本当ですかニャ!?それでしたら腕を振るって料理を提供させて頂きますニャンよ!」

嬉しそうに人懐こい笑みを浮かべ、ミケーリュウスさんが猫耳と尻尾をピンと立てると、何やらアヤさんと二人で必要な食材について話し始めた。

で、放置された僕とウェイトレスのナージャさん…(て呼ばれてたよね?)は何となくお互いに顔をジ~~ッと見合わせてしまった。

ーーち、近付いて来たッ!?

僕は内心パニックになりながらも、全く動けず硬直していると、モップもどきを壁に立て掛けたナージャさんが歩み寄って来て、父親のミケーリュウスさんと似た感じの人懐こい笑みを浮かべてペコリと頭を下げた。

「この店の店主、ミケーリュウスの娘でナージャと言います。初めましてイツキ様」

話し掛けられて僕は口を開こうとして声が出せず、焦って身体を震わせて思わず後退った。
アヤさんの右腕に背中がぶつかって咄嗟に左手でその腕を掴むと、気付いたアヤさんが左腕を僕の前に回して抱き締めてくれた。

「すまない。実はこの子は人見知りが激しくてね。気を悪くしないでやってくれると助かる」

直ぐ様アヤさんに、フォローして貰ってしまった…
我ながら情けなくなった僕は、申し訳なさも手伝って俯くと、震えながら固く目を瞑って小さくなった。

どうしよう、絶対に嫌な気分にさせちゃったよ。
どうしよう…

彼女にどんな顔をされてるのか知るのが怖くて、僕が目を開けられずに震えていると、アヤさんにクルリと身体の向きを変えられてその胸に抱き込まれた。

「ほら、一回落ち着いて深呼吸してごらんよ。大丈夫だから」
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