136 / 165
133.
しおりを挟む
そんな事言われても、
はっきり言って朝食に要望なんて…ない。
僕にとっての食事とは、基本的には空腹感が無くなりさえすればそれで充分なものだからだ。
僕は首を横に振る事で要望は無いんだって意思表示をすると、アヤさんは少しガッカリした顔で「もっと我儘いっぱい言って欲しいのにぃ」とボヤいていた。
そんな事言われても……
アヤさんがフロントと連絡が取れるインターホンみたいな魔道具で朝食を頼んでいるのを横目で見つつ、僕はリビングの大きな窓から外の街並みを見下ろしてみた。
昨晩は真っ暗で何も見えなかったんだけど、既に朝も8時を過ぎているからシーリアの街はとっくに動き出していたようで、僕は手に様々な荷を持って忙しなく行き来している人々の様子をぼんやりと眺め始めた。
一体どんな仕組みになっているのか、屋外の音は全く室内には入って来ないんだけど、見てる限りでは賑やかな街の雰囲気に、早くも僕は浮かれてドキドキと胸を高鳴らせるのだった。
今日の空は快晴で青く澄み渡り、雲は高く、雨などの心配は無用な感じだ。
こう言うを絶好の観光日和……
っていうのかな?
空を見上げて目を細めていた僕は大きく息を吐くと、ゆっくりアヤさんの方へ振り返った。
実はさっきから項の辺りがチリチリしてて、学校で花壇の草むしり中に野良猫にガン見されてた時みたいな感覚がしてたんだよね。
「窓の外を見るのはもういいのかい?」
僕の事をジーっと観察していたらしいアヤさんが、ニコニコしながら窓際まで歩いて来ると、僕の頬をひと撫でしてから頭をポンポンと優しく叩いた。
僕は頷きながら、ふと近付いて来る気配に意識を向けると、ゼアラさん達がすぐ近くまで来ている事が分かった。
「ん?ああ、ゼアラが来たんだね」
僕の異変に気が付いたアヤさんが、このフロアの入口ドアへと歩いて行く。
ノックされる前にアヤさんがドアを開けると、料理の乗ったワゴンを押していた犬耳さんが目を丸くして驚いていた。
そうだよね。普通は驚くよね。
なんでゼアラさんノーリアクションだったんだろ?凄いな。
「おはようございますアヤト様。お待たせして大変申し訳ございませんでした。
本日はご要望の『和朝食』となっております。ワゴンのお料理は私共でテーブルにセッティングさせて頂いても宜しいのでしょうか?」
「いや、そのままで。私が並べるから後はいいよ」
「かしこまりました。それではごゆっくりとお召し上がり下さいませ。失礼致します」
素早く二人が居なくなってホッと息を吐く。
アヤさんの後ろから覗いてただけなのに、無意識に緊張していた僕は肩の力を抜いてワゴンを見詰めた。
「勝手に決めちゃったけど、メインは刺身や焼き魚だよ。大丈夫かな?苦手だったりしない?食べられそう?」
「はい、大丈夫です。好き嫌いは無いと思うので」
「そう?なら良かった。今回は『日本の旅館の朝食』をイメージして用意させたんだよ。昨日は『洋食』って感じの晩ご飯だったからね」
はっきり言って朝食に要望なんて…ない。
僕にとっての食事とは、基本的には空腹感が無くなりさえすればそれで充分なものだからだ。
僕は首を横に振る事で要望は無いんだって意思表示をすると、アヤさんは少しガッカリした顔で「もっと我儘いっぱい言って欲しいのにぃ」とボヤいていた。
そんな事言われても……
アヤさんがフロントと連絡が取れるインターホンみたいな魔道具で朝食を頼んでいるのを横目で見つつ、僕はリビングの大きな窓から外の街並みを見下ろしてみた。
昨晩は真っ暗で何も見えなかったんだけど、既に朝も8時を過ぎているからシーリアの街はとっくに動き出していたようで、僕は手に様々な荷を持って忙しなく行き来している人々の様子をぼんやりと眺め始めた。
一体どんな仕組みになっているのか、屋外の音は全く室内には入って来ないんだけど、見てる限りでは賑やかな街の雰囲気に、早くも僕は浮かれてドキドキと胸を高鳴らせるのだった。
今日の空は快晴で青く澄み渡り、雲は高く、雨などの心配は無用な感じだ。
こう言うを絶好の観光日和……
っていうのかな?
空を見上げて目を細めていた僕は大きく息を吐くと、ゆっくりアヤさんの方へ振り返った。
実はさっきから項の辺りがチリチリしてて、学校で花壇の草むしり中に野良猫にガン見されてた時みたいな感覚がしてたんだよね。
「窓の外を見るのはもういいのかい?」
僕の事をジーっと観察していたらしいアヤさんが、ニコニコしながら窓際まで歩いて来ると、僕の頬をひと撫でしてから頭をポンポンと優しく叩いた。
僕は頷きながら、ふと近付いて来る気配に意識を向けると、ゼアラさん達がすぐ近くまで来ている事が分かった。
「ん?ああ、ゼアラが来たんだね」
僕の異変に気が付いたアヤさんが、このフロアの入口ドアへと歩いて行く。
ノックされる前にアヤさんがドアを開けると、料理の乗ったワゴンを押していた犬耳さんが目を丸くして驚いていた。
そうだよね。普通は驚くよね。
なんでゼアラさんノーリアクションだったんだろ?凄いな。
「おはようございますアヤト様。お待たせして大変申し訳ございませんでした。
本日はご要望の『和朝食』となっております。ワゴンのお料理は私共でテーブルにセッティングさせて頂いても宜しいのでしょうか?」
「いや、そのままで。私が並べるから後はいいよ」
「かしこまりました。それではごゆっくりとお召し上がり下さいませ。失礼致します」
素早く二人が居なくなってホッと息を吐く。
アヤさんの後ろから覗いてただけなのに、無意識に緊張していた僕は肩の力を抜いてワゴンを見詰めた。
「勝手に決めちゃったけど、メインは刺身や焼き魚だよ。大丈夫かな?苦手だったりしない?食べられそう?」
「はい、大丈夫です。好き嫌いは無いと思うので」
「そう?なら良かった。今回は『日本の旅館の朝食』をイメージして用意させたんだよ。昨日は『洋食』って感じの晩ご飯だったからね」
0
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる