僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

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「ごめん…なさい。ごめんなさい。ごめんなさいッ」

ああ……
こんな時なのに、泣かせた方の僕が泣き出すなんて、物凄く卑怯だ。
分かっているのに涙を堪え切れなくて、僕は俯いたまま奥歯をきつく噛み締めた。

「イツキ……急に、消えたり…しないで。私の前から居なくなったりしないで。私は本当に、イツキが側に居て、笑っててくれるだけでいいんだ。だから、謝ったりしなくていいから、お願いだから、ただ…私の側に居て欲しいんだ」

アヤさんの言葉は既にお願いなんかじゃなくて、むしろ悲痛な声で紡がれた懇願に近かった。
僕はあんな短時間でどれほどアヤさんを傷付けてしまったのかを思い知って、手の平に爪が食い込むくらいの力で目一杯、胸元の拳を握り締めた。

アヤさんほどの人がこんな風に、僕なんかの存在に左右されるなんて、よっぽどの事がないとあり得ない。
こんな、僕なんかに依存…
そう、たぶん依存だ。
その依存をしてしまうくらい、アヤさんにとってこの世界で生きた二年間はそれほど辛くて孤独だったって事なんだろう。

せめて、
『ソレイユ』で僕がもっと早く、窓の外の出来事に気付いていたら…
僕にもっと力があって、ちゃんとアヤさんだけでも助ける事が出来ていたなら…
そしたらきっと、こんな思いをさせずに済んだのに!

考えれば考えるほど後悔ではらわたが焼けただれそうで、僕は肩を震わせて下を向いたまま大きく息を吐いた。

アヤさんの焦ってる声が聞こえてたのに、不貞腐れて返事もしなかった自分を思い出し、僕は更に申し訳なさでいっぱいになりながら袖で涙を拭い、顔を上げた。

心配そうに僕を見ていたアヤさんと目が合う。
こんな時でも、自分より僕なんかの事を………

堪らなくなった僕は手を伸ばして、アヤさんの、その涙に濡れた頬をそっと撫でた。

「手が汚れちゃうよ」

って困った顔をされたけど、涙で濡れただけで汚れてなんかないのに…

僕は不思議に思って小首を傾げてから、嫌がられてはいない事に安堵してアヤさんの頬を撫で続けていると、気恥ずかしくなってきたのか、無限収納アイテムボックスから蒸しタオルを2つ取り出して1つを僕の手に押し付けてきた。

熱ッ、熱いよアヤさん!

驚いて思わず手を振ってから、お礼の意味でペコリと頭を下げ、手渡されたタオルを受け取って顔を拭くと、お互いにサッパリした顔を見合わせて沈黙してしまった。

……この奇妙な間をどうしたらいいものか…

困り果てて眉尻を下げていると、アヤさんが小さく笑いながら立ち上がって、そのついでに三角座りの僕を抱え上げた。

アヤさんの右腕に座らされて両腕を伸ばすと、ギュウッと抱き付いて首筋に顔を埋める。

いつも通りに背中をポンポンされて落ち着いて、『そうじゃないだろ!?』と思い直し、アヤさんの目と鼻の先が赤くなってたのを思い出して顔を上げた。

して貰ってばかりじゃダメだ。
だからせめて何とか、僕だって治してあげたい。
僕は目を凝らし、真珠色の自分の魔力から癒しの緑色を取り出すようにイメージして掌に集め始めた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー
春休みも終盤なので関西に出掛けておりました。
箒に乗った眼鏡男子の魔法使いを追い掛けてゲロりそうになったり、僧侶になってベホ◯ミを唱えまくったり、花月で飴を撒くオバちゃんを観たりの日々でごさいました。
それに伴い、更新が大変遅れてしまいまして申し訳ございませんでした。
m(_ _)m
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