153 / 165
150.
しおりを挟む
「ごめん…なさい。ごめんなさい。ごめんなさいッ」
ああ……
こんな時なのに、泣かせた方の僕が泣き出すなんて、物凄く卑怯だ。
分かっているのに涙を堪え切れなくて、僕は俯いたまま奥歯をきつく噛み締めた。
「イツキ……急に、消えたり…しないで。私の前から居なくなったりしないで。私は本当に、イツキが側に居て、笑っててくれるだけでいいんだ。だから、謝ったりしなくていいから、お願いだから、ただ…私の側に居て欲しいんだ」
アヤさんの言葉は既にお願いなんかじゃなくて、むしろ悲痛な声で紡がれた懇願に近かった。
僕はあんな短時間でどれほどアヤさんを傷付けてしまったのかを思い知って、手の平に爪が食い込むくらいの力で目一杯、胸元の拳を握り締めた。
アヤさんほどの人がこんな風に、僕なんかの存在に左右されるなんて、よっぽどの事がないとあり得ない。
こんな、僕なんかに依存…
そう、たぶん依存だ。
その依存をしてしまうくらい、アヤさんにとってこの世界で生きた二年間はそれほど辛くて孤独だったって事なんだろう。
せめて、
『ソレイユ』で僕がもっと早く、窓の外の出来事に気付いていたら…
僕にもっと力があって、ちゃんとアヤさんだけでも助ける事が出来ていたなら…
そしたらきっと、こんな思いをさせずに済んだのに!
考えれば考えるほど後悔で腑が焼け爛れそうで、僕は肩を震わせて下を向いたまま大きく息を吐いた。
アヤさんの焦ってる声が聞こえてたのに、不貞腐れて返事もしなかった自分を思い出し、僕は更に申し訳なさでいっぱいになりながら袖で涙を拭い、顔を上げた。
心配そうに僕を見ていたアヤさんと目が合う。
こんな時でも、自分より僕なんかの事を………
堪らなくなった僕は手を伸ばして、アヤさんの、その涙に濡れた頬をそっと撫でた。
「手が汚れちゃうよ」
って困った顔をされたけど、涙で濡れただけで汚れてなんかないのに…
僕は不思議に思って小首を傾げてから、嫌がられてはいない事に安堵してアヤさんの頬を撫で続けていると、気恥ずかしくなってきたのか、無限収納から蒸しタオルを2つ取り出して1つを僕の手に押し付けてきた。
熱ッ、熱いよアヤさん!
驚いて思わず手を振ってから、お礼の意味でペコリと頭を下げ、手渡されたタオルを受け取って顔を拭くと、お互いにサッパリした顔を見合わせて沈黙してしまった。
……この奇妙な間をどうしたらいいものか…
困り果てて眉尻を下げていると、アヤさんが小さく笑いながら立ち上がって、そのついでに三角座りの僕を抱え上げた。
アヤさんの右腕に座らされて両腕を伸ばすと、ギュウッと抱き付いて首筋に顔を埋める。
いつも通りに背中をポンポンされて落ち着いて、『そうじゃないだろ!?』と思い直し、アヤさんの目と鼻の先が赤くなってたのを思い出して顔を上げた。
して貰ってばかりじゃダメだ。
だからせめて何とか、僕だって治してあげたい。
僕は目を凝らし、真珠色の自分の魔力から癒しの緑色を取り出すようにイメージして掌に集め始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
春休みも終盤なので関西に出掛けておりました。
箒に乗った眼鏡男子の魔法使いを追い掛けてゲロりそうになったり、僧侶になってベホ◯ミを唱えまくったり、花月で飴を撒くオバちゃんを観たりの日々でごさいました。
それに伴い、更新が大変遅れてしまいまして申し訳ございませんでした。
m(_ _)m
ああ……
こんな時なのに、泣かせた方の僕が泣き出すなんて、物凄く卑怯だ。
分かっているのに涙を堪え切れなくて、僕は俯いたまま奥歯をきつく噛み締めた。
「イツキ……急に、消えたり…しないで。私の前から居なくなったりしないで。私は本当に、イツキが側に居て、笑っててくれるだけでいいんだ。だから、謝ったりしなくていいから、お願いだから、ただ…私の側に居て欲しいんだ」
アヤさんの言葉は既にお願いなんかじゃなくて、むしろ悲痛な声で紡がれた懇願に近かった。
僕はあんな短時間でどれほどアヤさんを傷付けてしまったのかを思い知って、手の平に爪が食い込むくらいの力で目一杯、胸元の拳を握り締めた。
アヤさんほどの人がこんな風に、僕なんかの存在に左右されるなんて、よっぽどの事がないとあり得ない。
こんな、僕なんかに依存…
そう、たぶん依存だ。
その依存をしてしまうくらい、アヤさんにとってこの世界で生きた二年間はそれほど辛くて孤独だったって事なんだろう。
せめて、
『ソレイユ』で僕がもっと早く、窓の外の出来事に気付いていたら…
僕にもっと力があって、ちゃんとアヤさんだけでも助ける事が出来ていたなら…
そしたらきっと、こんな思いをさせずに済んだのに!
考えれば考えるほど後悔で腑が焼け爛れそうで、僕は肩を震わせて下を向いたまま大きく息を吐いた。
アヤさんの焦ってる声が聞こえてたのに、不貞腐れて返事もしなかった自分を思い出し、僕は更に申し訳なさでいっぱいになりながら袖で涙を拭い、顔を上げた。
心配そうに僕を見ていたアヤさんと目が合う。
こんな時でも、自分より僕なんかの事を………
堪らなくなった僕は手を伸ばして、アヤさんの、その涙に濡れた頬をそっと撫でた。
「手が汚れちゃうよ」
って困った顔をされたけど、涙で濡れただけで汚れてなんかないのに…
僕は不思議に思って小首を傾げてから、嫌がられてはいない事に安堵してアヤさんの頬を撫で続けていると、気恥ずかしくなってきたのか、無限収納から蒸しタオルを2つ取り出して1つを僕の手に押し付けてきた。
熱ッ、熱いよアヤさん!
驚いて思わず手を振ってから、お礼の意味でペコリと頭を下げ、手渡されたタオルを受け取って顔を拭くと、お互いにサッパリした顔を見合わせて沈黙してしまった。
……この奇妙な間をどうしたらいいものか…
困り果てて眉尻を下げていると、アヤさんが小さく笑いながら立ち上がって、そのついでに三角座りの僕を抱え上げた。
アヤさんの右腕に座らされて両腕を伸ばすと、ギュウッと抱き付いて首筋に顔を埋める。
いつも通りに背中をポンポンされて落ち着いて、『そうじゃないだろ!?』と思い直し、アヤさんの目と鼻の先が赤くなってたのを思い出して顔を上げた。
して貰ってばかりじゃダメだ。
だからせめて何とか、僕だって治してあげたい。
僕は目を凝らし、真珠色の自分の魔力から癒しの緑色を取り出すようにイメージして掌に集め始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
春休みも終盤なので関西に出掛けておりました。
箒に乗った眼鏡男子の魔法使いを追い掛けてゲロりそうになったり、僧侶になってベホ◯ミを唱えまくったり、花月で飴を撒くオバちゃんを観たりの日々でごさいました。
それに伴い、更新が大変遅れてしまいまして申し訳ございませんでした。
m(_ _)m
0
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる