僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

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157.

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「いいから早く、汚いから早くウガイして顔洗って下さいぃ!!」

僕が必死にお願いしてるのに、アヤさんは明らかに呆れた顔をしてから溜息を吐いた。

「あのねぇ、そんなので汚いとか言ってたら、その先のベロチューとかフェ◯とかクン◯とかセック◯とか一体どうする気なの?」
「……………?」
「だからね、好きな人が出来たら、まぁ、そういう事もするでしょうに」

言われた事が良く分からなくて僕が首を傾げると、アヤさんは少し困った顔になってもう一度溜息を吐いた。

「そうか。子供イツキにはまだ早い話なのか……」

暫く考え込んで、アヤさんはおもむろに口を開いた。

「以前私には3人の子供が居るって話をしたよね?つまりは子供を作るに当たっての行程を旦那と一通りこなしたが故の結果な訳だけど、その上で子育てもちゃんと3人分してきてるんだよ。
知ってる?赤ちゃんって基本は鼻呼吸なんだ。だから風邪をひいて鼻が詰まると上手く息が出来ないの。
で、どうするかっていうとね、片鼻ずつ押さえて口で吸い出すんだよ。赤ちゃんの鼻水をね。
そしたら鼻が通って息が出来るようになるって訳。
つまりはそういう事も一通りこなして来た私にとって、あんな些細な事で汚いとか、そんなの気にもならないんだよ。……分かった?」

諭すように言われて僕はコクンと頷いた。
心の中は複雑だったけど、言われた事は理解出来たからだ。

「あ、因みに長男の時はちゃんと専用の鼻吸い機を使ってたんだよ?でも子供も2人目、3人目ってなると色々面倒になってきちゃってねぇ」

そう言うと、アヤさんはバツの悪そうな顔でヘラリと笑った。

きっとアヤさんは素敵な奥さんで、素敵なお母さんだったんだろうなって思う。
旦那さんにも子供達にも、溢れんばかりの愛情を注いでいたんだろう事が容易に想像出来て、僕は何故か不意に痛んだ胸を押さえて俯いた。

きっと向こうの世界ではアヤさんが居なくなった事で悲しんだ人がたくさん居るに違いない。
僕なんかはともかく、せめて本当に、本当にアヤさんだけでも、『ソレイユ』で助けられていたなら…

そんな僕を見て、アヤさんは何も言わずに優しく抱き締めて髪に顔を埋めた。

「ねぇイツキ。私はね、不本意だったとはいえ最愛の旦那を看取って、子育ても終えてからここに飛ばされてきたんだよ。だけど……イツキは違うよね?まだ13歳で全てがこれからだった筈だ。だからね、この世界では私が責任を持ってイツキを幸せにするから、だから………
だからもう、そんな顔しないでよ。ね?」

そんな顔って……
僕、どんな顔してたんだ?

アヤさんが気にする程だから、よっぽど変な顔してたって事なんだろうか?
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