僕、勇者サマの養い子になりました

162.

「私はね、前にウールドから指摘されちゃったように、イツキを誰かに取られやしないかって、こう見えても結構必死なんだよ？」


……………はア！？

一体誰に僕なんかが取られるって？
そんな事を言ってくれる物好き、だからアヤさんくらいなものだって言うのに…

僕は呆然としてアヤさんを見詰めていると、髪を梳くように優しく撫でられて脱力し、深く息を吐いた。

「私はね、イツキがシェーラの事でヤキモチの一つも焼いてくれなかった事が無性に寂しかったんだよ。だからつい大人気おとなげなく八つ当たり何かしちゃったりして……
本当にごめん。ごめんね？
でもね、中身がオバサンの私としてはさ、どうやったらイツキみたいに可愛い子が、ずっと側に居てくれるのかがホントに良く分からないんだよ。だから、色々と不安にもなっちゃって…」

……………それ、

本ッ気で理解出来ないですから。
さっぱり分からないですから。

ホントに何で、アヤさんの方がそこで不安に感じる必要あるんだ？
中身云々うんぬんじゃなく、この世界に3人しか居ない勇者様ってだけで、既に僕みたいなのとは全く存在価値が違う人なのに…

女どころか男までも赤面させる程に顔面偏差値が高くて。
腕っ節も強くて。
まぁこっちの世界の人には厳しい所があるから時々怖いけど、でも僕には底抜けに優しくて。
料理も裁縫も上手で、何でも作れて。

どこをどうしたら同郷なだけの僕なんかをそこまで過大評価しちゃえるのか、マジで分からなさ過ぎて怖いくらいなんだけど…

だいたい、アヤさんから離れて、僕がどこに行けるって言うんだろう？
この世界に関して、本当に無知に近い僕が。

「アヤさん、あの、僕なんかの事で不安に、なったりしなくても大丈夫です…よ？だって、だって今の僕はアヤさんに寄生する事しか出来ないような存在だし、寧ろ分不相応で役立たずな僕の方がアヤさんの側に居ていいのか不安で仕方な「役立たずなんかじゃないよ！」い……え？」

突然言葉を遮られ、驚いて瞬きを繰り返すと、僕は眉尻を下げて必死な顔をしたアヤさんに腕を掴まれていた。

「イツキは役立たずなんかじゃないし、寄生だってしてないし、分不相応なんかでもない。私なんかと関わるには勿体ないくらい、心が綺麗で優しくて可愛くて良い子だよ」

「僕は綺麗なんかじゃッ………ありません」

思わず飛び出た大声に、自分自身が酷く驚き、そしてそのまま言葉が途切れ、最後には聞こえない程の呟きになってしまった。

僕は頭の中が真っ白な状態で固まっていると、アヤさんはそんな僕を強く抱き締めてから、つむじにキスを落とした。

「綺麗だよ。綺麗なんだよ。それこそ私なんかが触っちゃダメなんじゃないかと内心怯えるくらいにはね」