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第十七話『可愛い注意報』
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「はあ!?それって好きってことじゃん!」
春人は驚きと困惑を隠せ無い声で言った。帰ってきた青也に何があったか聞いたのだ。
「で、でも!もし付き合うなら俺みたいな子がいいって言ってくれただけだし、俺はまだ隆則×秀和を諦めて無いからな!それに...」
青也は思い詰めた顔をした。春人も少し真剣な顔をした。
「まだ恋愛をする気になれない、だろ?」
青也は小さく頷いた。
無理もない。奴はそれだけの事をやったんだ。簡単に乗り越えられる問題じゃない。
しばらく沈黙が続く。
ガチャガチャガチャ
突然、鍵を開けようとする音が重い空気を壊す。
驚き顔を見合わせた2人は、静かに玄関へと向かう。
「鍵なら開いてるけど。」
壊されたりでもしたら溜まったもんじゃ無いので、春人は威圧的な態度でドアを開けた。そこには、春人の隣の部屋に住んでいる角谷智治がいた。
「えっ」
驚いた智治は鍵を落としてしまう。
急いで取ろうとするが春人の方が早かった。
「えっこれ...初期の?」
なんと智治が落とした鍵のキーホルダーが春人がデザインし作った、しかもかなり初期の『着ぐるみパジャマ買ってくれた人に抽選でキーホルダープレゼント』という企画で配布したものだった。その時はこじんまりと活動していたので数もかなり少なく(30個程度。パジャマの製作もあったため充分な数を用意できなかった。)、フリマサイトではかなりの高値で売りに出されている。これを持ってる人は活動初期から応援してくれていた人たちなので手放す人があまり居ないという点も価格高騰の原因となっていた。
つまりは、これを持っている角谷智治は、それこそ初期から応援してくれているか、決して少ないくない額を出して買ったことになる。
バッ
智治はものすごい形相で鍵、いや、キーホルダーを取り返し、何も言わずに焦った様子で自室のドアの前に行き、鍵を開け入り、大きな音を立ててドアを閉めた。
春人は唖然とした顔で青也の顔を見た。青也は自慢げな顔をしていた。
ただの青也の妄想だと思ったからあの時話にノったし(3話参照)、普段挨拶なんて青也にだってしないのにわざわざ毎回見かけるたび智治に挨拶はしていた。まあ、無視されまくっていたけど。しかし、青也の言ってたことが本当なら、俺は俺のことを意識してる奴に自ら接触してしまっていたってことでは無いか!
「「た...」」
「楽しくなってきたな!」
「大変なことになってしまった...」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あーあ。逃げられちゃった。」
翔はコンビニで買った缶ビールを片手に駐車場の端に腰掛けた。
悔しくはあるものの、失敗もよくあることなので若干慣れてしまっている自分もいた。
「今日の子は...ゴク、クハァッ!惜しかったなぁ、顔もガタイもなかなかよかったし、弱ってたし、めっちゃ酔ってたし。」
翔は後一歩のところで、隆則の知り合い(多分隆則が好意を寄せてる男)に遭遇して、連れ帰れられてしまった。
キューピットのようなことをしてしまったと愚痴を溢しながらも、隆則と友達になれるチャンスを失わずに済んだなともポジティブな気持ちも少し存在していた。
コツコツコツコツ
夜の街には似合わない、規則正しいリズムを刻む革靴は翔の前で止まった。顔を見る義理もないので無視する。すると、A4サイズの茶封筒が無言で差し出された。翔は初めて顔を上げた。男は綺麗な革靴とは裏腹に、多少着古したヨレヨレなスーツにネクタイをしていた。しかし少し見えるシャツはシワはほとんど無く綺麗だった。元々着ていたスーツから、スーツだけ質の悪いものに変えたような服装だった。顔はマスクとベレー帽をしていてわからなかった。しかし高級腕時計をつけていたことから、金持ちだろうということはわかった。
しばらく動かずにいた翔に痺れを切らしたのか、茶封筒を軽く放って翔に渡し、去っていく。
「おい!どういうつもりだ!」
翔はフラフラになりながら立ち上がった。
「見れば分かる。」
とだけ残し、どこかに行ってしまった。その声は20代ぐらいだった。
茶封筒を開けると中には、青也と知らない男(少しモザイク処理されている)が抱き合ったり手を繋いだりしている写真と、『危害は加えずに、2人の関係を邪魔して欲しい。貴殿にとっても悪い話ではないだろう。』と印刷された紙が入っていた。
確かに悪い話ではない。翔は早速スマホを手に取った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数分前
「なんで俺がこんな事を...」
付け焼き刃の変装をした、というより明らかに準備の甘い変装をした優大は不満げに言った。
「だってしょうがないじゃ無いですか!私は前に天川翔と接触してしまってるし、優大様が言い出した事でしょ?ほらほら、ごねらないごねらない!」
寛はここぞとばかりに大きな態度を取った。
「少し調子に乗り過ぎだ。」
優大は少し怒ったようだった。
「はい。すみませんでした。」
「正直、天川翔が想定通り動くとは思えないんですけど大丈夫なんですか?」
「まあ、逆にこっちを脅してくるとかはあるかもだし、危害を加えずってのも無理かもしれないな。だけどこっちに『力』があることを少し示せば、多少は効果もありそうだよな。まあ、俺たちのことを『秀和の身内』と疑うのは想定内だが、親父の「家族として迎え入れる」は待遇についてだけだし、書類上も家族とするのは秀和も望まないはず。だからある程度は安心だろう。」
「なるほど確かに。妨害方法は天川翔次第って感じですよね、『どんな手段を使うんだろう、楽しみだな』とか思ってるんじゃないですか?」
それを聞いた優大はにやりと笑った。
「ああ。当て馬となるか、妨害に成功するか、どう転んでもきっと面白いぞ?楽しみだ。ーーっておい、何笑ってるんだ。」
寛は片手で口を押さえて笑えを堪えているようだった。
「いやだって、その格好じゃキマらないなぁと、ふふ。」
「...そうだな。ふっ。」
優大も少し同じことを思ったようだった。
春人は驚きと困惑を隠せ無い声で言った。帰ってきた青也に何があったか聞いたのだ。
「で、でも!もし付き合うなら俺みたいな子がいいって言ってくれただけだし、俺はまだ隆則×秀和を諦めて無いからな!それに...」
青也は思い詰めた顔をした。春人も少し真剣な顔をした。
「まだ恋愛をする気になれない、だろ?」
青也は小さく頷いた。
無理もない。奴はそれだけの事をやったんだ。簡単に乗り越えられる問題じゃない。
しばらく沈黙が続く。
ガチャガチャガチャ
突然、鍵を開けようとする音が重い空気を壊す。
驚き顔を見合わせた2人は、静かに玄関へと向かう。
「鍵なら開いてるけど。」
壊されたりでもしたら溜まったもんじゃ無いので、春人は威圧的な態度でドアを開けた。そこには、春人の隣の部屋に住んでいる角谷智治がいた。
「えっ」
驚いた智治は鍵を落としてしまう。
急いで取ろうとするが春人の方が早かった。
「えっこれ...初期の?」
なんと智治が落とした鍵のキーホルダーが春人がデザインし作った、しかもかなり初期の『着ぐるみパジャマ買ってくれた人に抽選でキーホルダープレゼント』という企画で配布したものだった。その時はこじんまりと活動していたので数もかなり少なく(30個程度。パジャマの製作もあったため充分な数を用意できなかった。)、フリマサイトではかなりの高値で売りに出されている。これを持ってる人は活動初期から応援してくれていた人たちなので手放す人があまり居ないという点も価格高騰の原因となっていた。
つまりは、これを持っている角谷智治は、それこそ初期から応援してくれているか、決して少ないくない額を出して買ったことになる。
バッ
智治はものすごい形相で鍵、いや、キーホルダーを取り返し、何も言わずに焦った様子で自室のドアの前に行き、鍵を開け入り、大きな音を立ててドアを閉めた。
春人は唖然とした顔で青也の顔を見た。青也は自慢げな顔をしていた。
ただの青也の妄想だと思ったからあの時話にノったし(3話参照)、普段挨拶なんて青也にだってしないのにわざわざ毎回見かけるたび智治に挨拶はしていた。まあ、無視されまくっていたけど。しかし、青也の言ってたことが本当なら、俺は俺のことを意識してる奴に自ら接触してしまっていたってことでは無いか!
「「た...」」
「楽しくなってきたな!」
「大変なことになってしまった...」
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「あーあ。逃げられちゃった。」
翔はコンビニで買った缶ビールを片手に駐車場の端に腰掛けた。
悔しくはあるものの、失敗もよくあることなので若干慣れてしまっている自分もいた。
「今日の子は...ゴク、クハァッ!惜しかったなぁ、顔もガタイもなかなかよかったし、弱ってたし、めっちゃ酔ってたし。」
翔は後一歩のところで、隆則の知り合い(多分隆則が好意を寄せてる男)に遭遇して、連れ帰れられてしまった。
キューピットのようなことをしてしまったと愚痴を溢しながらも、隆則と友達になれるチャンスを失わずに済んだなともポジティブな気持ちも少し存在していた。
コツコツコツコツ
夜の街には似合わない、規則正しいリズムを刻む革靴は翔の前で止まった。顔を見る義理もないので無視する。すると、A4サイズの茶封筒が無言で差し出された。翔は初めて顔を上げた。男は綺麗な革靴とは裏腹に、多少着古したヨレヨレなスーツにネクタイをしていた。しかし少し見えるシャツはシワはほとんど無く綺麗だった。元々着ていたスーツから、スーツだけ質の悪いものに変えたような服装だった。顔はマスクとベレー帽をしていてわからなかった。しかし高級腕時計をつけていたことから、金持ちだろうということはわかった。
しばらく動かずにいた翔に痺れを切らしたのか、茶封筒を軽く放って翔に渡し、去っていく。
「おい!どういうつもりだ!」
翔はフラフラになりながら立ち上がった。
「見れば分かる。」
とだけ残し、どこかに行ってしまった。その声は20代ぐらいだった。
茶封筒を開けると中には、青也と知らない男(少しモザイク処理されている)が抱き合ったり手を繋いだりしている写真と、『危害は加えずに、2人の関係を邪魔して欲しい。貴殿にとっても悪い話ではないだろう。』と印刷された紙が入っていた。
確かに悪い話ではない。翔は早速スマホを手に取った。
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数分前
「なんで俺がこんな事を...」
付け焼き刃の変装をした、というより明らかに準備の甘い変装をした優大は不満げに言った。
「だってしょうがないじゃ無いですか!私は前に天川翔と接触してしまってるし、優大様が言い出した事でしょ?ほらほら、ごねらないごねらない!」
寛はここぞとばかりに大きな態度を取った。
「少し調子に乗り過ぎだ。」
優大は少し怒ったようだった。
「はい。すみませんでした。」
「正直、天川翔が想定通り動くとは思えないんですけど大丈夫なんですか?」
「まあ、逆にこっちを脅してくるとかはあるかもだし、危害を加えずってのも無理かもしれないな。だけどこっちに『力』があることを少し示せば、多少は効果もありそうだよな。まあ、俺たちのことを『秀和の身内』と疑うのは想定内だが、親父の「家族として迎え入れる」は待遇についてだけだし、書類上も家族とするのは秀和も望まないはず。だからある程度は安心だろう。」
「なるほど確かに。妨害方法は天川翔次第って感じですよね、『どんな手段を使うんだろう、楽しみだな』とか思ってるんじゃないですか?」
それを聞いた優大はにやりと笑った。
「ああ。当て馬となるか、妨害に成功するか、どう転んでもきっと面白いぞ?楽しみだ。ーーっておい、何笑ってるんだ。」
寛は片手で口を押さえて笑えを堪えているようだった。
「いやだって、その格好じゃキマらないなぁと、ふふ。」
「...そうだな。ふっ。」
優大も少し同じことを思ったようだった。
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