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弐ノ章:魑魅魍魎のモノ達
第二十八話 『阿形と吽形②』-慎吾side-
しおりを挟む『我等の後ろに下がっておれ…先代の力を受け継ぎし者よ…』
今度は青い模様の犬が話しかけてきた。
「お、おい!あんたら一体…!まさか本当に…ッ!!」
俺の言葉を遮って、2匹の犬が一瞬で俺の傍から消えた。
ふとバケモノの方を見れば、いつの間にかバケモノの至近距離に移動していた。
(早い…っ!一瞬で飛んでいったのか!?全然見えなかった…!)
瞬間、強烈な風が吹き荒れ、バケモノの体が宙に浮いたまま身動き封じられているように見えた。
≪ギイイイイッッ…!!ハナセェ――――ッ!!!≫
目には見えない何かで、体の動きを封じられているバケモノは、もがきながら叫んでいた。
そして、まるで重力で上から圧をかけられているかのようにその体が数百メートルの地上から地面へと叩きつけられる。
≪ウギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!≫
バケモノが地面に叩きつけられたと同時に、隙を与えず、バケモノ目掛けて青白い雷がうねりを上げて落下した。
≪ギイイイイイイイイイイイイイイイ―――ッッ!!!≫
苦しそうなバケモノの悲鳴が街中に響き渡ると、その姿は一瞬で消滅していった。
「マジ…かよ…」
目の前で繰り広げられているバトルが、本当に起きているのか信じられないまま、俺は唖然とバケモノが消えた所を見て立ち尽くしている事しか出来なかった。
――――*
本当に現実世界で起きた事なのか疑いたくなるほど壮絶な戦いを目の当たりにした俺は、とてつもない疲労感を感じながら家へと帰宅した。
当たり前のように付いて来た2匹の犬の姿は小さくなっていて、その姿は神社の鳥居の前に座っていたあの子犬だった。
(まさかあの子犬があんな巨大な犬に変身するなんて、誰も思わないだろ…)
「…それで、あんたらは何者?さっき、先代とか力が何とかって言っていたけど…、俺が見た夢?の中の“ミコト”って人と何か関係があるのか?…まさかとは思うけど、あんたら本当に父さんが言っていた先代の黒部尊に従っていた狛犬…なのか?」
(っていうか、こんなにちんまくて可愛い子犬が、あんなにイケメンな犬になるのかよ…。一体どうやったらあんな成長の仕方をするんだ?変わりすぎだろう!)
神社の客間。
テーブルを挟んだ向かい側の座布団に、ちょこんと座る子犬に聞いてみる。
『我の名前は阿形』
『我の名前は吽形』
赤い模様をした子犬に続くように、青い模様の子犬も話し始めた。
はっきりとした話し方の少年のような声が赤い模様の子犬。
そして、おっとりとしたような口調の、高めの少年の声の方が青い模様の方の子犬の話し方だった。
口を動かして話しているけど、実際に子犬の声の聞こえ方は脳に直接聞こえる…と言う何とも不思議な感じだ。
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