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弐ノ章:魑魅魍魎のモノ達
第二十九話 『慎吾と狛犬』-慎吾side-
しおりを挟む『我々は、この神社の設立者であり初代神主である黒部尊と、ミコトと共に神社やこの人間界を守護していた神の使い・狛犬ダ。』
「!!!」
(やっぱり…この子犬達が…狛犬…)
『ミコトがいなくなってからは、我等狛犬が先代のミコトとの約束を守り、ミコトの意思を引き継ぎ、この人間界を護りつつ、ミコトの力を受け継ぎし子孫が誕生するまで数百年の間、ずっとこの神社で待っていタ』
『そうして漸くミコトの力を持つニンゲンが誕生しタ…。先ほどお主は、ミコトの夢を見たと言っタが、ミコトの夢は誰もが見られる夢ではない。――黒部家の子孫の中で、ミコトの血を最も強く受け継ぎし者しか見れぬ…。勿論、我々の姿もミコトの血を強く受け継ぐ者にしか見れぬのダ。…お主は、『雰囲気』 『霊力』 『身に纏う氣』『匂い』――全てがミコトと同じ…』
「全て同じって…それってどういう…」
『きっとお主が、ミコトの力を最も強く受け継ぐ…ミコトの力を受け継ぎしニンゲンだろう。――まだ、“力”は目覚めてはいないようだが…』
「…っ」
左右に尻尾を揺らしながら変わった話し方をする子犬の姿は、はっきり言ってめちゃくちゃ可愛い。
コロコロした体型と、白いモフモフの毛並みにプラスして話し方のギャップが凄まじい。
(やばい…可愛い…なんだ、この可愛すぎる子犬は…!いや、子犬じゃなくて狛犬か…)
阿形と吽形の可愛すぎる姿に、爆発してしまいそうな衝動を必死に抑える。
実は動物の中で犬が一番好きな俺にとって、モフモフなちんまり姿の狛犬は堪らない程可愛すぎる光景なのである。
(抱っこしたら触り心地は良いんだろうな…)
そんな事を想いながら、俺を見上げてくる阿形と吽形に平然を装って答える。
「力って…・悪いけど俺にはそんな力はないぞ?まぁ、昔から幽霊とか妖怪の姿は普通に視えるし、父さんからも霊力は高いって言われてきたけど、ただ視えるだけで何か出来る訳じゃない。…黒部尊さんの力がどんな力だったのかは分からないが、俺は何の力もない」
『それはお主が、自分の力を知らぬだけダ』
『我々には感じる。――…お主の中にあるミコトの力を…』
「そんな事を言われても…」
(本当に俺にはそんな力はないんだが…)
2匹の銀色の瞳が俺の姿を映す。
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