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フォール・ホール・ミルクホール
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⚫キャラクター紹介
・芦谷 菜々(あしや なな)
桜乃女子高校2年2組の生徒。軽めのノリで皆にラフに絡む、ツッコミポジ。文化祭では演劇がやりたい。
・高野 美香(たかの みか)
2年2組の生徒。少し勝気でギャルっぽい。実は大学生の彼氏がいて、文化祭ではお化け屋敷に入りたい。
・若草 萌(わかくさ もえ)
2年2組の生徒。テンションが高く少し子供っぽい所も。可愛い服が好きで、文化祭ではメイド喫茶がしたい。
・大沢 葵(おおさわ あおい)
2年2組の学級委員長でバレーボール部所属の真面目な子。クラスの出し物をする事にに余りノリ気では無い。
・八坂 小町(やさか こまち)
2年2組の生徒。丁寧な喋りでとてもマイペース。和風好きな所があり、文化祭でもその片鱗を見せる。
フォール・ホール・ミルクホール
配役表 0:5:0
菜々♀・・・
美香♀・・・
萌♀・・・
葵♀・・・
小町♀・・・
⚠台本として利用する際の規約⚠
https://writening.net/page?nJG7kt
作者X(@autummoonshiro)でも確認出来ます。
───本編───
桜乃女子高校の2年2組の放課後。
教室に5人の女生徒が集まっている。
萌:「第1回!桜乃女子高等学校2年2組!文化祭出し物決め討論会を開催しま~~~す!!いえーい、どんどんぱふぱふ~~~!!」
全員が無言になり、若干の静寂。
萌:「え・・・みんなテンション低くない!?」
美香:「アンタが高すぎなのよ!」
菜々:「や~、元気だねぇ」
小町:「仲良いですよね」
萌:「あ、分かっちゃう?萌と美香ちゃんめちゃくちゃ───」
美香:「仲良くない。」
萌:「え~~~~!!なんでそんなこというの!?」
葵:「あの・・・(小声)」
美香:「なんでじゃないわよ、事実だからでしょうが!」
萌:「そんな酷いこと言うと、萌泣いちゃうぞ、ぐっすん」
美香:「勝手に泣け!」
菜々:「仲良しだな」
小町:「うん、間違いないですね~」
葵:「あの!!」
萌:「どしたの、葵ちゃん」
葵:「話が逸れすぎです。文化祭の出し物決めの会議でしょ?」
美香:「あ~ごめんごめん、委員長進めて」
菜々:「もえもえに付き合ってると一生終わらないからね」
萌:「えー!?別にそんなこと───」
菜々:「はいはい、静かにしてようね」
萌:「むぅ~・・・」
葵:「えっと、それじゃあ、始めます。このクラスで部活をやってない人に残ってもらいました。当日は皆でシフトを回したりすると思うけど、部活の出し物がなくてクラスの事に集中できるメンバーで、クラスの出し物は決めようと思います。」
美香:「それ、皆ちゃんと納得すんの?」
葵:「先生からそうしろって言われたので拒否権なしです」
美香:「あっそ、ならいいけど」
小町:「どうやって決めます?」
葵:「とりあえずやりたい物を言ってもらって───」
全員が同時に
美香:「お化け屋敷でしょ」
菜々:「絶対演劇!」
小町:「食べ物かなぁ」
萌:「メイド喫茶!!」
葵:「・・・え?」
萌:「え~~~!!文化祭って言ったらメイド喫茶でしょ!?なんで皆バラバラなこと言うの!?」
美香:「メイド喫茶なわけないでしょ!文化祭って言ったらお化け屋敷!」
菜々:「こういう時の出し物って言ったら演劇やるでしょ!?」
小町:「食べ物屋さんが1番スタンダートかなって・・・」
葵:「待って、黒板に書きます。えーと、メイド喫茶、お化け屋敷、演劇、食べ物屋、と。他にはないですか?」
萌:「お化け屋敷なんてひゅ~どろどろどろ~なんてダサい音楽かけて、薄気味悪い装飾して、ミイラみたいなカッコさせられるんでしょ!?やだやだやだやだ~!!!」
菜々:「うわぁ、駄々っ子だ」
美香:「はぁ!?もう全っ然分かってない!彼氏と2人でお化け屋敷に入って、怖いムードの中頼れるのは彼だけ・・・そんな時に不意に脅かされて彼に抱きつくと「俺がいるから安心しろ」って、あーー、ロマンティック!!」
菜々:「ええ!?ロマンティックって言ったら演劇でしょ!!ロミジュリやろうよロミジュリ!!恋仲の2人が抱きしめあって濃厚なキスを交わすの・・・あ、ヒロイン私ね」
美香:「キスシーンやりたいだけじゃん!」
菜々:「あーもう!はい、委員長、進めて進めて」
葵:「あ、うん。勢いに気圧されちゃった。意見は分かったから、一旦静かにしてください」
萌:「ねね、質問!」
葵:「何ですか?」
萌:「葵ちゃんは何も意見ないの?」
葵:「ありません」
萌:「なんで?」
葵:「私、先生に頼まれたから居るだけで、早く終わらせて帰りたいので」
萌:「そんな~つれないこと言わないで~一緒に遊んでこうよ~?」
葵:「遊びじゃありません!」
萌:「ちぇっ」
小町:「委員長は本当に何もないの?」
葵:「・・・しいて言うなら、食べ物を出すのが1番簡単でいいかな、って」
小町:「食べ物に2票入ったよ~」
美香:「はぁ!?」
菜々:「ええ!?」
葵:「フランクフルトとかどうですか?焼くだけでいいし、無難だと思います」
小町:「・・・え?」
葵:「へ?」
小町:「そんなものやりません」
葵:「え、えっと、」
小町:「食べ物屋さんって言いました。フランクフルトしか出さないのはフランクフルト屋さんかな。私がやりたいのはちゃんと一汁三菜出して、お抹茶と和菓子も出す、食べ物屋さんです」
菜々:「なーんか無茶苦茶なこといってる!」
萌:「小町ちゃんは和食好きだもんね~」
小町:「フランクフルトなんて認めません」
葵:「えーと、じゃあ、食べ物に1票は取り消します。流石に今のを聞いたらちょっと」
美香:「ま、食べ物屋って言うけど、もはや和食の定食屋だしね、それ」
菜々:「流石に定食屋は文化祭では聞いたことないね」
美香:「どうすんの?4票でバラバラだけど。お化け屋敷で決定でいい?」
萌:「勝手に決めるなー!!絶対にメイドカフェだって!美香ちゃんだって可愛いメイド服着たいでしょ?」
美香:「ええー・・・アタシはいいよ、ガラじゃないから」
萌:「絶対似合うよ?絶対絶対似合うよ?」
美香:「そ、そうかな・・・(照れ)」
菜々:「わりと嫌ではなさそう?」
小町:「みたいですね」
美香:「う、うっさい!!」
美香の言葉をきっかけにほんの少しの間。
葵:「じゃあ、1個ずつつ具体的に意見を聞いていこうと思います。食べ物屋みたいな事も起こるかもしれないから・・・」
菜々:「それじゃあ、誰からにする?」
萌:「はいはーい、じゃあ萌から───」
美香:「んじゃ、アタシからね!」
萌:「え、聞いてる!?ねーえ、聞いてる!?」
美香:「うっさいなぁ、聞いてるわよ!アンタから始めるととっちらかりそうだから、アタシからやるっていってんの!」
葵:「えっとそれじゃあ、高野さんからお願いします」
萌:「葵ちゃんまで~~!!むぅ、わかったよう・・・」
萌が不貞腐れて椅子に座ると、美香が黒板の前に立った。
美香:「それじゃ、始めるわよ。お化け屋敷、っと」
美香は黒板に大きくお化け屋敷と書く。
葵:「あ、メモも取るからスペースは残しておいてください」
美香:「はいはい、委員長はメモよろしくね。で、アタシがやりたいのは教室を使ったお化け屋敷!それっぽい飾り付けをした教室を真っ暗にして、何人かにお化けの仮装してもらって驚かしてもらうの」
萌:「ほら~~!!さっき私が言った通りじゃ~~~ん!!!」
美香:「べ、別に音楽流すとかミイラの格好とは言ってないでしょ!ミイラは簡単そうでいいかもって思ってるけど・・・」
萌:「ほら~思ってるじゃん!!あんな可愛くない格好絶対したくないよ~~~!」
小町:「別にミイラでなくとも、落ち武者とか火の玉とかでもいいでしょ?」
菜々:「あ、ここでも和風なんだ・・・。落ち武者は準備が面倒くさそうだなぁ」
美香:「血みどろで頭に矢が刺さった落ち武者の前を通ると、急にバッと立ち上がって刀を振り上げんの!で、「次はお前の番だ」って、そしたら彼がその刀を振り払って「させるかよ!」って・・・きゃー、もう、カッコよすぎ!!」
菜々:「えー、彼氏どっから出てきたの」
葵:「えっと、落ち武者なんて、若草さんじゃなくてもやりたがる人は居ないと思うんですが・・・」
萌:「そうだよ!さっきのミイラよりもダッサダサ!ぜ~~~ったいそんなの着ないからね!」
菜々:「いや、だから、彼氏───」
美香:「うっっっさいなぁ!何だったらやってくれるのよ!」
萌:「メイドさん!ふりっふりスカートのメイドさん!」
美香:「んー・・・ふりっふりスカートの、メイドゾンビ」
萌:「やぁだぁ!!そんな気持ち悪いのやぁだぁ!!絶対やぁだぁ!!」
菜々:「駄々っ子セカンド!フォースくらいまでありそう」
小町:「困りましたねぇ」
菜々:「いやいやー、こまちんも話ややこしくした一人だからね?」
小町:「そんな事ないですよう」
菜々:「あー、自覚ない奴だ」
美香:「じゃあいいわよ、分かった。萌はメイド服着て受付。中でお化け役は他の人にやってもらう、これで良い?」
萌:「えっ、メイド服着てていいの?」
葵:「あ、折衷案は確かにいいかもしれませんね。お化け屋敷、かっこ受付はメイド服、と」
葵は黒板にメモを取っていく。
萌:「こほん。『お帰りなさいませ、お嬢様!ご飯にしますか?お化け屋敷にしますか?それとも、わ・た・し?』」(色っぽく)
菜々:「なーんかエッチでとてもお化け屋敷の受付とは思えない展開だ!」
小町:「ちゃんと一汁三菜出してくれるの?」
菜々:「こまちん、絶対そこじゃないよ」
美香:「わ・た・し?って!私の彼に一体何するつもりよ!」
菜々:「ねぇ、だから彼氏はどこから───」
美香:「私の彼は絶対アンタなんかになびかないんだから!」
萌:「ふっふっふ・・・メイドパワーを舐めて貰っちゃ困るぜ。どんな獲物も、イ・チ・コ・ロ・さ」(やたら芝居がかった感じで)
菜々:「いや誰ー・・・急に西部劇みたいになってるから!」
美香:「メ、メイドパワー・・・そんなに凄いっていうの?」
菜々:「しかも響いてるし!」
萌:「世界でいちばん可愛いのがメイドさんなんだから!これは!絶対!間違いない!」
小町:「そんな事ないと思います」
萌:「えーっ!」
小町:「和服に適うモノなんてありません」
萌:「小町ちゃんみたいに和服が似合う人ばっかじゃないの!でもね、メイド服は誰でも似合うの、美香ちゃんも小町ちゃんも菜々ちゃんも葵ちゃんもみーーーんな似合うの!!」
葵:「え、私もですか!?」
萌:「クラス皆、全員でメイド服着てお化け屋敷の受付しよ?」
菜々:「その場合誰がお化けとかやるんだろ・・・?」
萌:「んー・・・先生!」
菜々:「やってくれるわけないじゃん!」
美香:「全員、誰でも、メイド服で可愛く・・・?」
萌:「そうだよー、美香ちゃんだってメイド服着たら超絶可愛くなるよ?」
美香:「ダメーーー!!絶対ダメ!!」
萌:「可愛くなりたくないっていうの!?」
美香:「皆が可愛くなったら彼氏が私の事見てくれなくなるかもしれないじゃん!ダメ、絶対ダメ!!危うく流されるところだった」
菜々:「あ、もう、みかちーには彼氏が居るんだね。そういう事なんだね」
美香:「え、あ、いや・・・その、年上の彼が」
葵:「あら、知りませんでした」
美香:「は、初めて言ったし・・・」
菜々:「んー、ここまでの流れで結構言ってたけどね?」
萌:「ええーー!?美香ちゃん彼氏いるのぉ!?全っ然気づかなかった!!」
菜々:「いや、バレバレだったけどね?」
小町:「不純異性交友ですか?」
美香:「なっ、不純じゃないわよ!」
菜々:「あ、もう、ツッコミ疲れました」
萌:「でもでも、彼氏とイチャつきたいからお化け屋敷やりたいって言うのはー、紛れもなく不純だと思いまーす!」
美香:「へ、ええ!?そんな事になる?」
葵:「確かに。急にお化け屋敷をやる動機が弱くなった気がします」
美香:「そんな~・・・」
葵:「というか、今更なんですけど」
美香:「なに?」
葵:「バレーボール部が体育館使ってお化け屋敷をやる予定なので、お化け屋敷に行きたいだけならそれでいいんじゃないですか?」
美香:「・・・マ?」
葵:「私、バレーボール部なので」
美香:「ちょっと~~~それ早く言ってよ~~~!!じゃあお化け屋敷なんて準備めんどくさそうだから無し!」
菜々:「手の平返しが早いなぁ」
葵:「それじゃあ、次に行きましょう」
萌:「はーい、今度こそ───」
美香:「菜々、バトンタッチ」
菜々:「ほいほい、任された~!ごめんねー、もえもえ」
萌:「ねぇ、みんな私に冷たくなぁい??」
菜々:「そんな事ないよー、温かいよー、生暖かい目で見てるよー」
萌:「フォローになってないよぉ・・・」
葵:「芦屋さん、お願いします」
菜々:「はーいよっと!じゃ、やりますか!」
美香は菜々にチョークを受け渡すと席に着く。
それと入れ替わるようにして、菜々は黒板の前に立った。
菜々:「はいはーい、それではー、え!ん!げ!き!っと」
菜々は黒板に大きく「えんげき」と書く。
菜々:「やっぱり文化祭と言えば演劇!小学校とか中学校でも、簡単な演劇はやったことあるよね?」
葵:「簡単な物なら一応はやったことあります」
美香:「幼稚園で木の役やったわよ、懐かしい」
萌:「はいはーい、しっつもーん!」
菜々:「はい、もえもえどうぞ!」
萌:「菜々ちゃんはどういうのがやりたいのー?」
菜々:「あー・・・あんまり考えてなかったや。さっきも言ったけど、ロミジュリとかやってみたいなー」
小町:「ロミジュリ?」
菜々:「ありゃ、こまちんしらない?ウィリアム・シェイクスピアのロミオとジュリエット」
小町:「知らないですね」
菜々:「私もガッツリ説明出来るほど詳しくないんだけど、要は禁断の愛だよ!モンタギュー家とキャピュレット家っていうのがあって、代々対立してるのね?ま、この両家の娘と息子が恋に落ちちゃう~みたいな」
小町:「上杉家と武田家の子供が恋に落ちるみたいな?」
菜々:「あー、うん、そんな感じでいいや」(投げやり気味)
葵:「とりあえず、演目はロミオとジュリエット、と」
美香:「なんか、ムズそうじゃない?」
菜々:「あ、いやいや、別にロミジュリじゃなくてもいいの!ラブシーンがしたいだけだから」
葵:「え、ラブシーン、ですか?」
菜々:「禁断の恋のロマンチックも好きだけど、やっぱり愛し合う2人のキスシーンが重要。やりたい。どうしてもやりたい。っていうか絶対やりたい」
美香:「圧がすごいわね・・・」
菜々:「だぁっっって!!合法的に!女の子と!キス出来るんだよ!?」
葵:「え、ええ!?」
菜々:「キス、したい。ロマンチックな、キス。しかも、女の子同士で。いや、男装の、女の子でも、良い。うへ、うへへ~」(早口片言気味。)
葵:「ちょ、ちょっと!不純すぎます!」
菜々:「ちょっとおいちゃん~、これは演劇だよォ、演劇。宝塚バカにしてんのぉ?」
葵:「芦屋さんこそ、演劇をなんだと思ってるんですか!」
美香:「はぁ。演劇ねー・・・?」
萌:「んー・・・んんー・・・んんんー・・・・・・」(悩む唸り声)
小町:「どうしたの?」
萌:「んー・・・萌的にはね?演劇、ありかもなぁって」
菜々:「おおっ、もえもえノってきた!?」
萌:「ロミオとジュリエットをやったら、フリフリスカート着れそうだし・・・可愛いよね、絶対可愛いよね!?」
菜々:「あ、ダメダメ。私がヒロインやるから。もえもえは男装して?ね?私とキスしよ?」
萌:「えーーー!?それじゃあやだ!」
菜々:「なんでーーー!!もえもえは私の事嫌いなの!?」
萌:「萌は可愛い服が着たいの~!男装には全然全くこれっぽっちも興味無いで~~~す!!」
菜々:「ぐぬぬ・・・よーし分かった!もえもえのもえっちはさ、メイド服が着たいんだよね?」
萌:「うんうん!メイド服が着たいの!めっちゃくちゃ可愛いから!」
菜々:「中世のあの時代なら、ななななーーーんと!!」
萌:「ななななーーーんと?」
菜々:「メイドさんが普通に存在しまぁっす!」
萌:「ぐはッッッ!!ほんっっっとだぁ!!!」
菜々:「というわけで、メイドさん役をもえもえには進呈してしんぜよう!」
萌:「ははーっ!!ありがたく頂戴致します陛下!」
美香:「ちょーーーっと待ったぁ!」
菜々:「なんだよー、みかちー」
美香:「アタシ、彼氏としかキスしないからね」
菜々:「え、なに、いきなり」
葵:「あの、私もキスはちょっと・・・」
菜々:「へ、お、おいちゃん?」
小町:「上杉の子?武田の子?」
菜々:「こまちんは話になんない!」
萌:「わーい、やったぁ、メイドさんだ~メイドさん~♪私は~とっても可愛い~メイドさん~♪」
菜々:「この子、何も聞いてない」
美香:「つーまーり、菜々の相手する男役をやる人が居ないの。これ、演劇なんか出来ないわよ」
菜々:「くっっっ!こうなったらみかちーの彼氏を男役に───」
美香:「させるか!」
菜々:「・・・いや、やっぱいらない」
美香:「人の彼氏いらないって言うな!」
菜々:「私は・・・女の子とキスがしたいのに・・・男は、いらない」
葵:「あの、そもそも、学校の出し物なので外部の人は・・・」
菜々:「合法的に女の子イチャイチャ出来るチャンスだと思ったのになぁ・・・ちぇっ」
葵:「もう!文化祭をなんだと思ってるんですか!」
菜々:「演劇のフリして合法的に女の子イチャコラして、しかもロマンチックな展開を味わいながら最後にはチュッチュも出来る最高のチャンス」(早口気味)
菜々の勢いに全員が押し黙り若干の静寂。
菜々:「何か間違ってる?ねぇ、私なにか間違ってる?」
葵:「絶対間違ってます!」
菜々:「・・・はーあ、だよねぇ。いやいや、私だって分かってるよ?でもさ、したいもんはしたいじゃん?」
美香:「菜々ってそっち系だったの?」
菜々:「んー、少し」
萌:「そっち系って?」
小町:「女の子が好きって話ですよ」
萌:「えっ!?そうなの!?」
菜々:「ちょっとー、少しだよ、少し。可愛い子とすこーーーしイチャイチャしたいだけで・・・」
葵:「す、少しの度を超えてます・・・!」
萌:「萌も可愛い子を見たりするのは好きだけど、そういう好きとは少し違うな~」
菜々:「あー、もう、恥ずかしいからあんまり言わないで。配役的にも成立しなさそうだし、演劇をやるのは無理ってことでいいよ、もう」
葵:「クラスの他の人ならやりたい人もいるかもしれないですけど・・・」
菜々:「今日の話にも来ないくらい、部活の出し物が大変なわけでしょー?セリフ覚えたりも考えたら現実的じゃないよ」
小町:「芦屋ちゃん・・・」
菜々:「演劇好きなのも本当だけど、っていうか、本当だからさ?無理があるって分かってるよ。大道具に小道具に衣装に台本に練習って、結構大変だしね」
葵:「・・・分かりました。じゃあ、演劇もなしで。後は───」
萌:「はいはーい!メイド喫茶でーす!」
葵:「そうですね、それじゃあ次は若草さん、お願いします」
菜々:「はい、今度こそ萌の番ね」
菜々は萌にチョークを渡すと自分の席に座った。
萌は黒板の前に勢いよく格好をつける様に堂々と立った。
萌:「それじゃあ今度こそ!第1回!文化祭でメイド喫茶をやるための討論会を始めまぁ~す!!」
美香:「やるための討論会にすんな!」
菜々:「勝手にやることにされとる」
萌:「えー、でもでも、お化け屋敷も演劇もやらないんだよね?そしたらもうメイド喫茶に決定でしょ?」
小町:「食べ物屋さんがあります」
萌:「さっき話してる時にちょろろ~っと思ったんだけどさ、メイド喫茶で食事を出すんじゃダメなのかな?」
小町:「む・・・」
葵:「確かに、喫茶店なら軽食は出るかもしれないですね」
菜々:「でも、こまちんは軽食じゃ嫌なんでしょ?」
小町:「んー・・・喫茶店ということなら、茶屋の様な形にしません?」
葵:「茶屋、ですか?」
菜々:「メイドと茶屋っていうと、大正ロマンみたいな感じ?」
小町:「ミルクホール!」
萌:「みるくほおる・・・?」
小町:「明治、大正時代にあった喫茶店みたいなお店のことです」
菜々:「あ、ゲームとかで見たことある!振袖とメイド服が合体したみたいな服着てる奴だよね。和服ミニスカみたいな」
萌:「えっ、えっえっ、なにそれ!!聞いてるだけでもめちゃくちゃ可愛い!!」
小町:「小振袖(こふりそで)の袴ね。ミニスカートは、フィクションかも?」
菜々:「ほら、見て見て!大正ロマン、スペース、メイドで検索したらいっぱい出てくるよ」
萌:「ふっわぁ~~~!!可愛い可愛い可愛い!!これ着たい着たい着たい~~~!!」
菜々:「あ、駄々っ子サードだ」
美香:「アンタいくつだと思ってんのよ・・・」
葵:「メイド喫茶かっこミルクホール、と」
菜々:「あ、ホントに合体した」
葵:「バレーボール部の3年生がメイド喫茶やるって聞いてたから、被るなぁって思ってたんですけど、『ミルクホール』ってなるならよそとも被りづらくて良いかもしれないですね」
菜々:「まぁ、被りは美味しくないよね」
美香:「げぇ~・・・こんなオタクっぽい格好するの?」
萌:「オタクっぽいって言うなぁ!」
美香:「だって菜々も言ってたけど、ゲームの服って事でしょ?イタすぎ」
小町:「ミルクホールは実在してます」
美香:「ああ、ごめん小町。それは分かってるわよ。でも、菜々のスマホの画像はゲームとかのでしょ?」
菜々:「んぁ、まぁ、ゲームの画像が多いけど、実写もあるよ?」
美香:「コスプレっしょ?」
菜々:「そんなに詳しく見てるわけじゃないからな~」
萌:「もう!可愛ければなんでもいいじゃん!」
葵:「とりあえずこの路線で行くとして、衣装もコスプレがあるなら簡単に買えますよね。軽食は何を出しましょうか?」
小町:「ミルクホールと言ったらシベリアです」
美香:「シベリア?」
菜々:「あ、前に流行った映画で食べてたっていうヤツ?」
小町:「そうです!」
美香:「映画って?」
菜々:「ほら、アニメの映画でさ、CMで飛行機作ったりしてた」
美香:「アニメ見ないし」
小町:「この間地上波でも放送されてたのですが・・・」
菜々:「そうそう!私もそれで見た」
萌:「あーー!それ知ってる!」
菜々:「もえもえはオタクだねぇ」
萌:「えー、あそこのアニメは誰でも見るよ?」
葵:「私も知ってます。零戦を作る作品ですよね」
美香:「げ。知らないのアタシだけか・・・」
葵:「でも、映画で食べてたモノなんてたくさんあって・・・」
萌:「えっとねー、黒いのを挟んだサンドイッチ!」
菜々:「それサンドイッチって情報しかないね」
小町:「カステラで羊羹を挟んだ食べ物ですよ」
菜々:「サンドイッチですらなかった!アニメで見てるから、私もサンドイッチだと思ってたな」
萌:「知らなかった~!でも、甘くて美味しそう!」
美香:「甘いお菓子を甘いお菓子で挟むの・・・?うぇ、歯が溶けそう」
小町:「あら、美味しいのに」
美香:「甘いもの嫌いなの」
葵:「でも、それってどこで買うんですか?」
萌:「カステラも羊羹もスーパーで買えるよ!そしたら挟むだけだし、簡単に作れるよ~!」
葵:「簡単に作れる、か。確かに、なんとかなりそうですね」
菜々:「ミルクホール、割とありな感じしてきたね」
萌:「やっっったぁ~~~!!さっきの画像みたいなかっわいい服着れるんでしょ?さい!こう!じゃん!」
菜々:「あ~・・・元気だなぁ」
葵:「若草さんは可愛い服が着れれば良いんですよね?」
萌:「うんうん!おっけーおっけー、メイド喫茶じゃなくても全然いいよ!んふふ~和服の~♪メイドさん~♪」
菜々:「ホントに大丈夫かな、この子」
小町:「他には何を出しましょうか?」
葵:「商品増やすとコスト管理が大変なので、シベリアにこだわるならそれと飲み物くらいですね」
小町:「ん~・・・」
菜々:「あー、ほらほら、もえもえだって妥協したんだから、こまちんも少しは、ね?」
小町:「はぁ・・・わかりました」
美香:「待て待て!アタシの話聞いてた!?」
菜々:「どったのみかちー」
美香:「だから、あんな格好絶対したくないって!!」
菜々:「ああ・・・」
美香:「なんであんな恥ずかしい格好しなきゃいけないの!」
萌:「美香ちゃん絶対似合うよ?」
美香:「さっきもそれ言ってたじゃん!」
萌:「だって~~~服がこんなに可愛いんだから、誰が着たってもう間違いなく絶対に可愛くなるもん!」
美香:「つまり適当に言ってるって事じゃん!」
菜々:「あ、やっと気付いた」
美香:「菜々うっさい!!」
菜々:「あはは(苦笑)そんなに怒んないでよー。てかさ、彼氏だってこんな可愛い服着てる美香、見てみたいんじゃない?」
美香:「んぇ、んぐ・・・でもぉ」
菜々:「確かにゲームの情報から広げたけど、最近巷で流行ってる『昭和レトロ』の延長とも言えるよ?イマドキ女子にブームなんだから」
美香:「い、イマドキぃ?イマドキかぁ・・・ううん」
葵:「あの」
萌:「はい、なんだね葵ちゃん!」
葵:「そんなに嫌なら、ホールじゃなくてキッチンに回ればいいんじゃないですか?」
葵以外全員「あ・・・」
若干の静寂。
美香:「そ、その手があったか~」
菜々:「言いくるめたくてムキになっちゃった」
美香:「おいぃ!」
菜々:「みかちー面白いからさ~」
萌:「それじゃあ美香ちゃんもミルクホールで納得?」
美香:「うん、いいよ」
葵:「よし、満場一致でミルクホールに決定、と」
葵は先生に提出する紙にそれを記入すると、席を立つ。
葵:「それじゃあ、先生に伝えてくるので、もう少しだけここで待ってて下さい」
そうして葵は教室を後にした。
葵が教室を出て暫く経ち、各々スマホをイジるなどして暇をつぶしている。
萌:「ね~、葵ちゃん遅くなぁい?」
菜々:「先生が見つからないとか?」
美香:「放課後だし、もう先生も帰ったんじゃないの」
葵:「戻りました」
菜々:「お~、ウワサをすれば」
小町:「ミルクホールはどうなりました?」
葵:「それなんですけど、もう少し相談したいことがあって。これなんですけど」
萌:「え~っと?文化祭のしおり?」
美香:「あー、パンフレットね。それが?」
葵:「これは試し刷りでまだ完成してないんですけど・・・あ、このページ」
萌:「ふぇ~1組って焼きそば作るんだ!」
菜々:「あー、なるほどね」
萌:「え、何が!?」
菜々:「いや、見たら分かるじゃん。その下のスペース」
美香:「ウチのクラスだけ真っ白のままって事ね」
萌:「おお、そゆこと!完成してないっていうから1組がもっと書くのかと思っちゃったよ~」
葵:「そうです。うちのクラスもサークルカットを作らないといけないんですよ。職員室でそれっぽいの作ろうかと思ったんですけど、いい名前が思いつかなくて」
小町:「『ミルクホール』じゃ駄目でしたか?」
葵:「私も最初はそうしようと思ったんですけど・・・『ミルクホール』を知ってた人いますか?」
菜々:「ちょびっとだけ」
美香:「全然」
萌:「知らなかったよ!」
小町:「私だけってことになりますね」
葵:「つまり、『ミルクホール』のままだと伝わらないと思うんですよ。なので、お店の名前を私達でつけて、説明欄にミルクホールとか和風カフェみたいなことを書くのがいいと思うんです」
菜々:「他のクラスのは『ジョニーの海小屋』、『ミセス・フォーチュン』、『スウィーティーキャッツ』・・・あ、もうなんでもありだ」
小町:「焼きそば屋さんに、占い屋さん、それから3年生のメイド喫茶ですね」
葵:「あ、最後のはさっき言ってた先輩のメイド喫茶です」
萌:「ん~、たっしかにぃ!名前とお店としてやってる事が連想できる感じだね!」
美香:「ミルクホールって聞くと、牛乳屋か?って確かに思うかも」
菜々:「う~む・・・」
萌:「へへーん、こういうのは私にまっかせなさ~~い!!」
小町:「あら?」
萌:「ふっふっふ、秋を英語で?」
菜々:「えーっと、フォール?」
萌:「落とし穴を英語で?」
菜々:「ああ、なるほど。ホール!」
萌:「私たちがやるのは?」
菜々:「ミルクホール!」
萌:「秋の文化祭でぇ!落とし穴にハマったかの如くぅ!お客様がジャンジャン落ちてくるぅ!ここはなんと『ミルクホール』!!」
菜々:「おおー、つまり?」
萌:「フォール・ホール・ミルクホール!!」
美香:「待て、お前ら待て!」
菜々:「またか、みかちー!」
美香:「え、ダジャレで決めようとしてる?」
若干の静寂。
菜々:「・・・ちっ」(出来れば同時に)
萌:「・・・ちぇっ」(出来れば同時に)
美香:「ちっ、じゃないわよ!ダッサイ決め方しないで!」
萌:「ええー!!いいじゃんいいじゃん!何が嫌なのぉ!?」
美香:「むしろなんでいいと思ったのよ!絶対適当にきめてるでしょ!」
萌:「適当じゃないよ!今めぇっっっちゃくちゃ考えたんだからね!」
菜々:「この間、数秒の出来事である」
小町:「考えたというほど、長くは感じなかったかも・・・?」
菜々:「こうやってこまちんは天然追撃をカマしていくのだ」
小町:「え?なんのことですか?」
菜々:「いいんだこまちん、そのままの君でいてね!」
美香:「ノリだけで勝手に決めようとして!彼氏も来るんだから変な名前やめてよね!」
萌:「む~・・・やだやだやだぁ!もうこれがいいって思っちゃったもぉん!!絶対にやだぁ!もう決まったのぉ!今から変えるなんてやぁだぁ~!!」
菜々:「ほぉら、駄々っ子フォースまであった!!」
美香:「あんたねぇ、それでなんでも乗り切れると思うなよ!」
萌:「えー、なんでぇ~!だってさ、ほら『え~何この、フォール・ホール・ミルクホールて?聞いたことなぁい!いってみよ~?』とか『フォール・ホール・ミルクホール?ふむ、シャレが聞いた名前じゃないか。行くしかないな』ってなるから!ぜぇっっったいなるから!!」(『』を芝居ががった感じで)
美香:「えぇ・・・そんなことある?」
菜々:「押しに弱いの丸出しだ!」
萌:「あるあるあるある!!間違いなくある!絶対ある!だって私もよく意味わかんないもん!」
美香:「ほら、意味分かってないんじゃ───」
萌:「分かってないことに意味があるんだよ!こーゆーのは『えー、なにこれ?』って思わせなきゃ見て貰えないんだから!」(『』を芝居がかった感じで)
美香:「な、なるほど・・・?」
萌:「他のお店と同じような名前じゃ美香ちゃんの彼氏だって『はー、パッとしない店。ダサいな、美香』ってなっちゃうんだから!!」(『』を芝居がかった感じで)
美香:「えっ、それはダメ!困る!」
菜々:「はー、みかちーチョロいなぁ」
萌:「ほら、じゃあ『フォール・ホール・ミルクホール』で良いよね?」
美香:「良いよ、彼氏に嫌われたくないから!」
葵:「えっと、それじゃあサークルカットのイラストは『フォール・ホール・ミルクホール』って名前でそれを飾る様なイラストにしますね」
小町:「説明欄は『大正ロマンやミルクホールをイメージした和風メイド喫茶』でお願いします」
葵:「うん、それくらいが簡潔で良いと思います。じゃあ、サークルカットは私が描いておくので今日は解散にしましょう。お疲れ様でした」
美香:「よろしくね、委員長。じゃ、おつかれー」
小町:「お疲れ様でした」
菜々:「おいちゃんよろー!おっつおっつ~!」
萌:「ちょおっと待ったぁ!!」
葵:「まだ何かありましたか?」
萌:「折角だからさ、ね、ほらほら集まって集まって!」
美香:「ちょ、えっ」
小町:「あらあら」
菜々:「ほいほい?」
萌が全員の手を掴むようにして引き寄せて、5人が円になる
葵:「あの、これって───」
萌:「えへへ~。こほん。帰宅部ってだけで集められた私たちですが、こうして『フォール・ホール・ミルクホール』をやることになりました!」
美香:「はぁ~もう」
小町:「ふふ」
葵:「ふっ」
菜々:「仕方ないな~」
美香:「やると決まった以上、彼氏が驚くような完成度にするよ!」
小町:「私も意見を通してもらったからには全力です!」
葵:「ま、私は部活もあるから乗りかかった船って感じですけど、クラスの事ですからね!」
萌:「かっわいい服着させてもらうんだし、お客様を恋の落とし穴にどんどん落としちゃうんだから!」
菜々:「ま、私達も秋っていうデッカイホールに落ちたとあれば、泥だらけになるくらい頑張って穴から這いでないとね」
1呼吸置くような間
菜々:「よっし、秋の文化祭、『フォール・ホール・ミルクホール』絶対成功させるぞ~!」
全員:「おー!!」
少しの間
菜々:「と、こーんな感じで意気込んで始まったんだけど、文化祭当日までまだまだやることは沢山あったりして。でも、間違いなく最高のお店にするから、皆も『フォール・ホール・ミルクホール』に来てね!」
終わり。
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