やがて一つになる君へ

秋月。

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目が覚めると...

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翌朝。

広い屋敷の一室で拓斗は眠っている。


拓斗:何かに体を揺すられている気がする。

拓斗:一体なんだ・・・


拓斗:「もう少し・・・」


菫:「起きて」


拓斗:「んん・・・」


菫:「起きて」


拓斗:「ふぁ~・・・なんだよもう」


菫:「起きた?」


拓斗:「は!?」


菫:「おはよう」


拓斗:「おはよう・・・?」


菫:「ごはん、作った」


拓斗:「あ、ありがとう・・・」


菫:「それじゃあ」


拓斗:彼女は俺を起こし終えると、部屋を出ていった。

拓斗:座敷童子って、あーゆー感じだろうか?

拓斗:結構日が高いな...かなり寝てたみたいだ


菫:「こないの?」


拓斗:「へ!?」


菫:「ごはん、つくった」


拓斗:「い、行く、行くよ」


菫:「ん・・・」


拓斗:け、気配がない・・・

拓斗:とりあえず顔でも洗って居間の方に向かおう


拓斗は居間へと移動する。

テーブルには綺麗な一汁三菜が整った食事が置かれている。


拓斗:「うわ、ウマそうな朝ごはん!」


菫:「うん」


拓斗:「作ってくれたの?」


菫:「朝、つくった。今はもうお昼」


拓斗:「わざわざありがとう!」


菫:「ううん、ついでだから」


拓斗:「って、もう昼!?」


菫:「もう、1時になる」


拓斗:「うわ、ほんとだ・・・かなり寝てたな」


菫:「心配、した」


拓斗:「ああ、それはごめ・・・って、君は体調は!?」


菫:「すみれ、元気」


拓斗:「すみれ・・・!?」


菫:「うん」


拓斗:「君、すみれって言うのか!?」


菫:「うん」


拓斗:「えっと、えーっと、えー・・・」


菫:「拓斗、困ってる?」


拓斗:「へ、いや、困ってるというか、戸惑ってるというか・・・」


菫:「すみれ、何かした?」


拓斗:「い、いやいや、大丈夫!」


菫:「よかった」


拓斗:「・・・」


菫:「お腹、空いてない?」


拓斗:「ん、食べる、食べるよ。でも、少しだけ質問していい?」


菫:「うん」


拓斗:「改めて聞くけど、君の名前は?」


菫:「すみれだよ」


拓斗:「すみれ・・・」


菫:「なに?」


拓斗:「あ、えっと、じゃあ茜と柚子は?」


菫:「2人とも、今、寝てる」


拓斗:「寝てる?」


菫:「うん。すみれの中で、寝てる」


拓斗:「君の中で寝てる?」


菫:「うん」


拓斗:「えっと、それはどういう・・・」


菫:「ごはん、冷めちゃう。折角、温めたのに」


拓斗:「そ、そうだね。頂くよ」


菫:「召し上がれ」


拓斗:何だか、色々と要領を得ない。

拓斗:俺の理解も追いつかない。

拓斗:込み上げてくる疑問を、ご飯と共に流し込む。

拓斗:流し込んだからって、疑問がなくなる訳じゃないけど。


菫:「・・・おいしい?」


拓斗:「ああ、美味しいよ」


菫:「・・・良かった」


拓斗:「ねぇ、もう一つだけ良いかな?」


菫:「うん」


拓斗:「紫苑は?」


菫:「・・・。」


拓斗:「俺は紫苑の親戚なんだ。この家に住んでるって聞いてる」


菫:「うん」


拓斗:「紫苑は何処にいるんだ?」


菫:「・・・ここに、いる、と思う」


拓斗:「どういう意味だ?」


菫:「紫苑も、寝てる、と思う」


拓斗:「また・・・」


菫:「でも、紫苑は、もう10年起きてない」


拓斗:「10年・・・!?」


菫:「うん」


拓斗:「10年っていうと、やっぱり・・・お母さんの事故と関係が?」


菫:「・・・わから、ない」


拓斗「分からない?」


菫:「私達は、紫苑の分身だから、紫苑のことが全部分かるわけじゃない」


拓斗:「紫苑の分身・・・?」


菫:「紫苑は、解離性同一性障害になった」


拓斗:「それは、多重人格ってこと?」


菫:「うん」


拓斗:「えっと、つまり、菫も茜も柚子も、別人格なだけで、同じ体なのか?」


菫:「うん」


拓斗:「・・・それで、紫苑は?」


菫:「10年前のあの日から、紫苑は、ずっと目覚めてない」


拓斗:菫の口から出てきたのは、衝撃の事実だった。

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