5 / 11
夏祭りが始まる。
しおりを挟む
時間が経過し、島は若干活気がついている。
拓斗:夏休みの2週間をここで過ごす事にして、もう12日が経った。
拓斗:明るい笑顔を振り撒き、誰とでも楽しい空気を作る柚子。
拓斗:俺に少し冷たいけど、ふとした瞬間に優しさを見せる茜。
拓斗:無口で喋るのが苦手で、それでも必死に人と関わろうとする菫。
拓斗:解離性同一性障害、つまり多重人格なんて正直信じていなかった。
拓斗:しかし、目の前に確かに存在している。
拓斗:たかが2週間弱で彼女達を理解したなんて思ってはいない。
拓斗:それでも、俺に残された時間はあと2日しかない。
拓斗:明日の夕方には、船に乗って本土へ帰る予定だ。
拓斗:そんな帰宅前夜、今日は島で花火大会が行われるそうだ。
拓斗:山の方の神社では縁日の屋台なんかも出るらしい。
柚子:「おにーさーん、準備できた~?」
拓斗:「ああ、今行くよー!」
柚子:「えへへー、どうどう?浴衣可愛いーでしょ?」
拓斗:「おにーさんって俺を呼ぶってことは柚子か?」
柚子:「せっいかーい!流石に慣れてきたね~」
拓斗:「ま、少しはな。浴衣、すごく似合ってるよ」
柚子:「わぁ、ありがと~!」
拓斗:「そんなに喜ぶことか?」
柚子:「え~、褒められたら嬉しいですよー、すっごく!」
拓斗:「みんな褒めてくれるだろ?」
柚子:「浴衣なんて始めてきたもーん」
拓斗:「へ?花火大会は毎年やってるんだろ?」
柚子:「毎年やってますけど、私は行ったことなくて」
拓斗:「へ、行ったことがない?」
柚子:「ん~・・・」
拓斗:「ああ、分かった。柚子は行ったことがないって話か」
柚子:「ちょおっと違いますね~」
拓斗:「??」
柚子:「そのー、ごめんなさい、『私は』ネガティブな話が苦手で・・・」
拓斗:「・・・そっか」
柚子:「ちょっと、待ってもらっていいですか?」
拓斗:「ん?ああ、いいけど・・・」
少し長めの間
茜:「はぁ・・・別に良いんだけど」
拓斗:「えーと・・・?」
茜:「アンタ、察し悪くない?」
拓斗:「茜か!」
茜:「すぐに気付きなさいよ、もう」
拓斗:「なんで、茜が?」
茜:「私なら話せるからね、色々」
拓斗:「そういうもん?」
茜:「柚子は明るく振る舞うために作られた人格だからね」
拓斗:「ああ・・・」
茜:「で?花火大会に行ってない理由だっけ?そんなの単純よ、苦手だから」
拓斗:「苦手?」
茜:「大きな音とか、強い光とか、アタシ達は苦手なのよ」
拓斗:「・・・。」
拓斗:どうして苦手なんだ?と聞きたかった。
拓斗:・・・これ以上踏み込むのを躊躇ってしまった。
拓斗:迂闊になんでも聞いてしまっていいのか・・・?
拓斗:「・・・苦手なら、無理に行かなくても───」
茜:「ほら、行くよ!」
拓斗:「なっ」
拓斗:初めて会った時には触るなと言っていた茜が、俺の腕を引っ張る。
拓斗:それがあまりにも意外で、驚いてしまった。
茜:「早くしないと、花火始まるわよ?」
拓斗:「・・・ああ、行こう!」
拓斗:俺は茜に手を引かれるまま、花火大会へとむかった。
拓斗:夏休みの2週間をここで過ごす事にして、もう12日が経った。
拓斗:明るい笑顔を振り撒き、誰とでも楽しい空気を作る柚子。
拓斗:俺に少し冷たいけど、ふとした瞬間に優しさを見せる茜。
拓斗:無口で喋るのが苦手で、それでも必死に人と関わろうとする菫。
拓斗:解離性同一性障害、つまり多重人格なんて正直信じていなかった。
拓斗:しかし、目の前に確かに存在している。
拓斗:たかが2週間弱で彼女達を理解したなんて思ってはいない。
拓斗:それでも、俺に残された時間はあと2日しかない。
拓斗:明日の夕方には、船に乗って本土へ帰る予定だ。
拓斗:そんな帰宅前夜、今日は島で花火大会が行われるそうだ。
拓斗:山の方の神社では縁日の屋台なんかも出るらしい。
柚子:「おにーさーん、準備できた~?」
拓斗:「ああ、今行くよー!」
柚子:「えへへー、どうどう?浴衣可愛いーでしょ?」
拓斗:「おにーさんって俺を呼ぶってことは柚子か?」
柚子:「せっいかーい!流石に慣れてきたね~」
拓斗:「ま、少しはな。浴衣、すごく似合ってるよ」
柚子:「わぁ、ありがと~!」
拓斗:「そんなに喜ぶことか?」
柚子:「え~、褒められたら嬉しいですよー、すっごく!」
拓斗:「みんな褒めてくれるだろ?」
柚子:「浴衣なんて始めてきたもーん」
拓斗:「へ?花火大会は毎年やってるんだろ?」
柚子:「毎年やってますけど、私は行ったことなくて」
拓斗:「へ、行ったことがない?」
柚子:「ん~・・・」
拓斗:「ああ、分かった。柚子は行ったことがないって話か」
柚子:「ちょおっと違いますね~」
拓斗:「??」
柚子:「そのー、ごめんなさい、『私は』ネガティブな話が苦手で・・・」
拓斗:「・・・そっか」
柚子:「ちょっと、待ってもらっていいですか?」
拓斗:「ん?ああ、いいけど・・・」
少し長めの間
茜:「はぁ・・・別に良いんだけど」
拓斗:「えーと・・・?」
茜:「アンタ、察し悪くない?」
拓斗:「茜か!」
茜:「すぐに気付きなさいよ、もう」
拓斗:「なんで、茜が?」
茜:「私なら話せるからね、色々」
拓斗:「そういうもん?」
茜:「柚子は明るく振る舞うために作られた人格だからね」
拓斗:「ああ・・・」
茜:「で?花火大会に行ってない理由だっけ?そんなの単純よ、苦手だから」
拓斗:「苦手?」
茜:「大きな音とか、強い光とか、アタシ達は苦手なのよ」
拓斗:「・・・。」
拓斗:どうして苦手なんだ?と聞きたかった。
拓斗:・・・これ以上踏み込むのを躊躇ってしまった。
拓斗:迂闊になんでも聞いてしまっていいのか・・・?
拓斗:「・・・苦手なら、無理に行かなくても───」
茜:「ほら、行くよ!」
拓斗:「なっ」
拓斗:初めて会った時には触るなと言っていた茜が、俺の腕を引っ張る。
拓斗:それがあまりにも意外で、驚いてしまった。
茜:「早くしないと、花火始まるわよ?」
拓斗:「・・・ああ、行こう!」
拓斗:俺は茜に手を引かれるまま、花火大会へとむかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる