やがて一つになる君へ

秋月。

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ズルい・・・

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拓斗:「結構混んでるんだな」


茜:「この島でレジャーなんて少ないしね」


拓斗:「こんなに人がいる島だったんだって感じ」


茜:「アンタ、どんだけバカにしてんのよ」


拓斗:「実際、この数日の間で会った人なんか指で数える程度だったんだが?」


茜:「漁師とか多いし、あんまり島に居ないのよ」


拓斗:「出店も沢山・・・何か奢ってやろうか?」


茜:「いい。別にアンタに出してもらう理由ないし」


拓斗:「そうかよ。んじゃ、そこの石段で少し休もうぜ」


茜:「はぁ?」


拓斗:「いいからいいから、ほら、座って」


拓斗と茜は石段に腰掛ける。


茜:「なんなのよ、急に」


拓斗:「ん?まぁ、思うとこあってさ」


茜:「・・・ねぇ」


拓斗:「ん?」


茜:「前から少し思ってたんだけど、アンタはなんでこの島に来たの?」

茜:「今自分でも言ってたけど、何もないじゃん、ここ」


拓斗:「・・・何もなくても、茜達は居るじゃん?」


茜:「はぁっ!?(照れながら)」


拓斗:「最初は10年前の事がもっと知りたいと思ったからだったけど、今は君たちのことが気になるから。心配だからって言ってもいいかな」


茜:「し、心配って、なんでよ・・・」


拓斗:「解離性同一性障害の事もそうだけど、初日にお前がなんか変だったから」


茜:「ぁ・・・」


拓斗:「あんまり問い詰めてもと思ってたんだけど・・・アレはなんで?」


茜:「あ、アレってなんのことよ!」


拓斗:「胸抑えて苦しそうにしてたじゃん」


茜:「なんでそんなの覚えてんのよ」


拓斗:「忘れるわけないだろ」


茜:「・・・心臓が良くないの。」


拓斗:「・・・え?」


茜:「アタシ、っていうかこの体は心臓が良くないのよ」


拓斗:「・・・知らなかった」


茜:「言ってないし。柚子はこの手の話しないし、菫はどーせ喋んないから」

茜:「この体には常に3人分の負担がかかるの。そりゃ普通の人と同じって訳にはいかないわよ」

茜:「脳に負担はかかるし、元から心臓は弱い。その上・・・紫苑は死んじゃうし」


拓斗:「・・・。」


茜:「・・・ありがと」


拓斗:「ん?」


茜:「体のことが気になってたから、休ませたかったんでしょ?気ぃ使ってくれてありがと」

茜:「でも、気にしなくて大丈夫だから」


拓斗:「本当かよ」


茜:「うん。邪魔になるほど弱ってたら、もっと前に伝えてる。言わなくても大丈夫だから言わなかっただけ」


拓斗:「・・・そっか」


茜:「ホント、気を使ってくれてありがと。その・・・嬉しかった」


拓斗:「おう」


茜:「ぁー・・・じゃあね!」


拓斗:「え、どういう───」


菫:「ズルい」


拓斗:「は?ズルい?」


菫:「ズルい。私も、遊ぶ」


拓斗:「ああっと・・・菫か?」


菫:「うん」


拓斗:「変わったのか」


菫:「うん」


拓斗:「で、遊びたいって?」


菫:「うん」


拓斗:「うんしかいわねぇ!」


菫:「・・・ごめん」


拓斗:「や、良いんだけど・・・よっしゃ、遊ぼうぜ!」


菫:「うん!」


拓斗:俺は石段から立ち上がって、先導するように先を行く。


菫:「茜、ズルい・・・」


それだけ呟くと、柚子は拓斗を追いかけて行った。

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