うつ病は甘えなの?

楪 彩郁

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2016/05/10 消えないストレス

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 2016年5月10日。

 ゴールデンウィークの休暇が終わり、9日から仕事へと復帰した。実家には、出産を控えた姉も帰ってきていた。姉と母は、度々私を外へ連れ出そうとしてくれたのだが、罪悪感のせいかとてもそんな気にはなれずに断り続けた。ストレスは増すばかりで、休んでいたにも関わらず、頭痛が始まり、遂には風邪を引いてしまった。

 咳が止まらないので、この日は内科(いつものA先生がいる病院とは別のところ)を受診した。もともと飲んでいた薬との飲み合わせの関係上、抗生物質を処方してもらうことができず、咳止めだけを飲むようにした。薬が増えるだけで、更に気持ちが重くなった。

 仕事には影響が出ないようにしようと頑張るほどに、胃に負担が掛かった。胃炎は胃薬によって落ち着いていたはずだったが、次第に、食後に食べたものを戻すようになる。それによって、固形物を食べるのが怖くなってしまい、消化の早いゼリー飲料と、栄養ドリンクだけを口にすることが多くなった。それだけでは十分な栄養はとれないのだが、当時の私にはどうしようもなかった。

 2016年5月24日。

 胃が荒れる上に嘔吐が続いたので、A先生の勧めもあり、また別の病院で胃カメラ(内視鏡)検査を受けることにした。口の中を痺れさせる薬や胃の粘膜を除去する薬などを飲んだ後に、安定剤を注射された。検査自体は私が眠っている間に終了し、結果は『逆流性食道炎ではないが、胃に逆流の動きが見られる』とのことだった。医者には、「ストレスに気を付けて過ごしてください」と言われた。

 飲んでいる胃薬を一旦とりやめ、新しく処方してもらった胃薬を1週間飲み続けることになった。(1週間後にピロリ菌検査の結果を聞きに行ったのだが、結果は陰性。やはり、胃痛はストレスが原因だった。)

 どうしたらストレスから解放されるのか、それは私が聞きたかった。やはり仕事を辞めるしかないのか。しかし、引き継ぎのできる社員が見つかるまでは、辞めるわけにはいかない。そのせめぎ合いで、苦悩する日々。Y先輩にだけは愚痴をこぼし続けた。

 2016年5月27日。

 姉の陣痛が始まり、入院したと母から連絡が来た。出産がもうすぐだと知り、私も急いで実家に戻った。その日の深夜、28日になってしばらくして、姉は元気な男の子を出産した。

 28日の午後、私は姉のいる産婦人科へと向かった。生まれたばかりの赤ちゃんは、小さくて赤くて、動きがゆっくりしていて、お猿さんのようだ。私を元気づけにわざわざやって来てくれた時も、思い出深い結婚式の時も、姉のお腹の中で一緒にいてくれた子だ。なんだか感慨深くて、私は涙ぐんだ。抱っこしてもいいかと聞くと、「もちろん!」と姉が笑ってくれたので、恐る恐る抱っこした。甥が私の腕の中で身じろぐ。可愛くてたまらない。

 甥との出会いは、私にとっての癒やしだったのだと思う。彼の写真を撮って、スマホの待ち受け画面にした。それだけで、まだまだ頑張れるような気がした。
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