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火山の頂での訓練

魔界の訓練巡り:火山の頂での訓練 Ⅱ

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「さあ、訓練を始めようかハルト。準備はできているか?」

 ゾルガンは力強く語りかけると、炎をまとった拳を高く掲げました。その炎は風によって燃え盛り、火山の頂に幻想的な光景を生み出していた。

「準備はできています。訓練を始めましょう!」

「よし、まずは火山の中にある炎のトンネルに行くぞ、ついて来い」

 ゾルガンに連れられ、俺は火山の中に進んだ。道中ゾルガンの背中を見た俺はその圧倒的な存在感に圧倒された。ゾルガンの背中は筋骨隆々で、その炎の中には赤い炎の模様が浮かんでいた。炎がゆらめく様子はまるで生き物のようで、俺はその逞しさに見惚れていた。

 ゾルガンは堂々と前を歩き、俺はその背中を見つめながら彼の後に続いた。火山の中には赤い炎が舞い上がり、炎の中には謎めいた影が広がっていた。俺は火山の奥深くに進む興奮と緊張が入り混じった気持ちを抱えながら、訓練が行われる炎のトンネルへと向かった。

「ハルト、あそこにある青い炎が見えるか。あの炎は聖焔せいえんと言い、触れた者の傷を癒す効果があるんだ」

 ゾルガンが指差すところには青く輝く炎があった。その美しさはまるで宝石のようだった。炎が舞い踊り、その中には波のような青い光が煌めいていた。炎が俺に触れると、俺の体は心地よい温かさに包まれ、疲労や傷ついた部分が次第に癒えていく様子が見て取れた。その青い炎はまるで生命力そのものだった。

聖焔せいえんのおかげでここで死ぬことはない。心ゆくまで訓練をしようか!準備はいいか、ハルト!さぁ訓練開始だ!」

 ゾルガンの言葉と共に、彼の身体から猛烈な炎が燃え上がり、火山のような渦が生まれた。その光景はまるで地獄の門が開かれたかのようであり、俺はその瞬間、ゾルガンの攻撃が始まることを悟った。

 数多の炎の弾丸が俺に向かって襲いかかってきた。俺は全身を使ってその攻撃を避けようとしたが、炎の勢いは容赦なく、俺の周りに広がっていく。熱気が肌を焼き、息が詰まるような感覚に襲われたが、俺は覚悟を決めて立ち向かった。

 次々と飛んでくる炎の弾丸に対し、俺は身を乗り出してかわそうと試みた。しかし、ゾルガンの攻撃は容赦なく続き、俺はその火の海に包まれるような感覚に陥っていった。

「まずはこの攻撃を避けてみろ!初めの訓練だ!そのままだと一生避けることは出来ないぞ!ハルト!」

 ゾルガンは炎の弾丸を放ちながら言う。俺は弾丸の雨を避けようとしたが、強烈な炎の力に対して手も足も出ず、どうすることもできなかった。ゾルガンの攻撃は容赦なく続いた。

「くそっ......どうやって避けるんだ?」

 俺は自分が避ける方法を見つけられないことに苛立ち、ゾルガンに打ちのめされた気持ちでいっぱいだった。それを見たゾルガンは力強い声で助言をしてくれた。

「ハルト、焦ってはいけない。こういう状況でこそ冷静さを保つことが大切だ」

 俺はゾルガンの指導に従い、俺は焦りを抑える。そして少しづつ冷静さを取り戻した。俺はゾルガンの攻撃を注意深く観察した。そうすると少しだけ隙があるのに気づいた。

「良いぞハルト、その調子だ!」

 ゾルガンの攻撃は容赦なく続いたが次第に弾丸の動きの隙に気づくことができた。

「そうか、弾丸は着弾する直前に曲がるんだ」

 俺は弾丸の動きを読み、瞬時に動くことがだんだんできるようになった。俺は弾丸の間隙を突いて攻撃を避ける方法を見つけ、次第に炎の弾丸を避ける能力を少しづつ高めていった。

「よし、少しづつ避けれるようになってきたぞ......このまま続けていけば......」

俺はこの調子でいけば弾丸の雨を避けることができると思った。しかしそれは甘い考えだった。

「少しづつ避けれるようになってきたな!では、スピードアップといこう!」

ゾルガンの声が響き、弾丸のスピードが急激に上がった。その瞬間、俺の避ける隙間はほとんどなくなり、弾丸の軌道も不規則に変わった。

「着弾直前に曲がったり曲がらなかったり......臨機応変に対応しなければならないのか......面白い!やってやる!」

俺は挑戦に意気込み、難易度が上がった訓練に取り組んでいた。

しかし、弾丸の速度と不規則な動きに対処するのは容易ではなかった。次々と迫る弾丸に対し、俺は必死に身をかわしたが、その手に余るものがあった。

「隙が......ない!?」

俺はまたいきずまった。その瞬間、ゾルガンの声が響いた。

「この中から孤立している弾丸を見つけその孤立している弾丸に焦点を当てろ!その周りの動きを読み取れば、全体の流れが見える。そうすれば、避けることも可能になるだろう」

「孤立している弾丸......」

ゾルガンの助言に従い、俺は集中し、次の動きを待った。次々と迫る弾丸に対処しながらも、俺は自身の動きを制御するのに苦戦していた。弾丸の速度と不規則な動きに対処する間、思考が混乱し、判断するのが一瞬のために焦点を失ってしまう。

弾丸が俺の周囲に集中してくると、その数に圧倒され、一つひとつに対処するのが難しくなっていった。俺は汗を流し、息が荒くなりながらも、必死に避けることを試みたが、次第に弾丸の動きに置いていかれる感覚が襲ってきた。

「ダメだ......!集中力を高めるんだ!弾丸の動きを読み取れ!」

深呼吸をして俺は再び集中し、弾丸の動きを読み取ることに集中した。少しずつだが、避けることが可能になっていくのを感じた。弾丸が飛んでくる軌道や速度、そして予測不能な動き。その全てを俺は見極めようと試みた。時には一瞬の隙を突いて避け、時には炎のように身をかわし、俺は次第に弾丸の動きに対処する術を見出していった。

ーーーパッシブスキル戦闘集中を獲得しましたーーー

俺は予想外なことに新たなパッシブスキルを獲得した。

「さすが魔族の訓練だな......!新たなスキルを手に入れれたぞ!」

俺は新たなスキルの獲得を喜んだ。

「初めの訓練はこれくらいでいいだろう。ハルト、よくやった。予想以上のスピードだ、さすが古の魔王の息子と言ったところか。攻撃を読み、避ける力は持つようになった。だが、それだけでは足りない」

 ゾルガンの声が厳しく響く。ゾルガンは深い紅い炎の瞳を輝かせ、俺に対峙した。
 俺はゾルガンの指示を受け、次なる試練に挑む覚悟をした。ゾルガンはさらに火山のへと俺を案内し、次なる訓練の舞台へと導いた。

「ハルト、この試験はまだ簡単な方だ。次なる試練は火山の内部に広がる洞窟だ。お前はその中で目的地までたどり着かねばならん」

 俺は火山の内部に足を踏み入れ、薄暗い洞窟の中に身を置いた。岩壁から滴り落ちる水滴の音が響き、洞窟内には異質な雰囲気が漂っていた。

「ゾルガン、これが次の試練か?」

 ゾルガンは深紅の炎の髪が風に揺れ、堂々と頷きました。

「そうだ。お前はこの洞窟内での冷静な判断力と方向感覚を鍛えねばならん。この試練を乗り越えれば、お前はさらなる力を手にすることができるだろう。俺は出口で待つ」

 俺はゾルガンの次の訓練に身を投じた。
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