18 / 26
18
しおりを挟む唯は朝方ベッドに入ってくるユウマに手を伸ばす。
どこに行ってたの?
誰と居たの?
何をしてたの?
そんな風に思っていいはず無いのに、聞けない事が唯の胸を締め付けた。
この関係は、そこまで踏み入れてはいけない––、分かっているのに、唯はユウマに縋り付いてしまう。
「起こした?ごめんね」
そう言って、ユウマは唯を抱きしめて眠りに落ちる。
でも唯は知っている。
唯が目を覚ませば、ユウマはいつも唯に背を向けて眠っている。
唯は、その背を見ると、寂しさに駆られる。今にもどこかに行ってしまう様なその背を、唯は行かないで、と言えない分優しく抱き締めた。
唯は朝方目が覚めた。
ユウマはまだ眠っている。
トイレに行って、部屋に戻る……––つもりだったが、隣の部屋に置かれたユウマの少ない荷物が目に入った。
ダメだ––––
いけない––––……
そう思ったのに……唯は、チャックが開いたまま置かれた、少し大きなユウマの鞄に手を伸ばしてしまった。
ユウマの見えない部分を、ほんの少しだけ見たかった––
見てはいけないものを……––––
そこには、幾つかのノートや書類、そして、アルバム……。
唯はアルバムにそっと手を伸ばし、それをパッと開いた。そこには、まだ幼さの残るユウマが大きな絵の前に立ち、はにかんだ笑みを浮かべている。
胸にはメダルが掛けられ、絵には金賞の札が貼ってあった。
ユウマの後ろにある絵を描いたのは、ユウマ自身なのだろう。賞を取った絵は、色彩が豊かで柔らかな、海と都会の景色だった。
写真越しでも、その画力の高さは窺える。
そして、鞄の中にはスケッチブックも入っていた。
いけない事をしている自覚がある唯に、罪悪感は大きく膨らんでいく。
だが、その手は止まらなかった。
スケッチブックには、鉛筆画や色鉛筆で描かられたもの、ペンで描かられた物まで様々なモチーフ、様々な描き方の絵が所狭しと描き込んである。
「上手……」
思わず唯はそう呟いた。
だから、美術館に行って……––––
ユウマには才能がある。
素人の唯でも、確信があった。
こんなくたびれた鞄の中に仕舞い込むだけの才能にしておくには、惜しい––––
荷物を何事も無かった様に元の場所へ戻し、唯はそっとベッドに戻る。
ユウマは唯に背を向けたまま、寝息を立てていた。
ユウマの知らなかった一面を知った興奮、そして人の素性に土足で踏み込んだ罪悪感……––––その思いが交錯して、唯は中々寝付く事ができなかった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
密会~合コン相手はドS社長~
日下奈緒
恋愛
デザイナーとして働く冬佳は、社長である綾斗にこっぴどくしばかれる毎日。そんな中、合コンに行った冬佳の前の席に座ったのは、誰でもない綾斗。誰かどうにかして。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる