そのΩ、買いました。オークションで。

塒 七巳

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 唯は朝方ベッドに入ってくるユウマに手を伸ばす。
 
 どこに行ってたの?
 誰と居たの?
 何をしてたの?
 
 そんな風に思っていいはず無いのに、聞けない事が唯の胸を締め付けた。
 この関係は、そこまで踏み入れてはいけない––、分かっているのに、唯はユウマに縋り付いてしまう。
 
「起こした?ごめんね」
 そう言って、ユウマは唯を抱きしめて眠りに落ちる。
 
 
 
 でも唯は知っている。
 
 唯が目を覚ませば、ユウマはいつも唯に背を向けて眠っている。
 
 唯は、その背を見ると、寂しさに駆られる。今にもどこかに行ってしまう様なその背を、唯は行かないで、と言えない分優しく抱き締めた。
 
 
 
 
 唯は朝方目が覚めた。
 
 ユウマはまだ眠っている。
 
 トイレに行って、部屋に戻る……––つもりだったが、隣の部屋に置かれたユウマの少ない荷物が目に入った。
 
 ダメだ––––
 いけない––––……
 
 そう思ったのに……唯は、チャックが開いたまま置かれた、少し大きなユウマの鞄に手を伸ばしてしまった。
 
 ユウマの見えない部分を、ほんの少しだけ見たかった––
 見てはいけないものを……––––
 

 そこには、幾つかのノートや書類、そして、アルバム……。
 
 唯はアルバムにそっと手を伸ばし、それをパッと開いた。そこには、まだ幼さの残るユウマが大きな絵の前に立ち、はにかんだ笑みを浮かべている。
 胸にはメダルが掛けられ、絵には金賞の札が貼ってあった。
 
 ユウマの後ろにある絵を描いたのは、ユウマ自身なのだろう。賞を取った絵は、色彩が豊かで柔らかな、海と都会の景色だった。
 写真越しでも、その画力の高さは窺える。
 
 そして、鞄の中にはスケッチブックも入っていた。
 
 いけない事をしている自覚がある唯に、罪悪感は大きく膨らんでいく。
 
 だが、その手は止まらなかった。
 
 スケッチブックには、鉛筆画や色鉛筆で描かられたもの、ペンで描かられた物まで様々なモチーフ、様々な描き方の絵が所狭しと描き込んである。
 
「上手……」
 思わず唯はそう呟いた。
 
 だから、美術館に行って……––––
 
 ユウマには才能がある。
 素人の唯でも、確信があった。
 こんなくたびれた鞄の中に仕舞い込むだけの才能にしておくには、惜しい––––
 
 
 
 荷物を何事も無かった様に元の場所へ戻し、唯はそっとベッドに戻る。
 ユウマは唯に背を向けたまま、寝息を立てていた。
 
 ユウマの知らなかった一面を知った興奮、そして人の素性に土足で踏み込んだ罪悪感……––––その思いが交錯して、唯は中々寝付く事ができなかった。
 
 
 
 
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