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しおりを挟むあの頃の若さ故の好奇心——
なにも考えず、なにも背負わずただ感情のまま体を預けれた、最後の機会だっただろう——
若かった、ただそれだけの思い出……——
甘酸っぱく、忘れ難い……初恋——
初めてヒートが来た日……
青葉は海途と待ち合わせして、夏休み前にかき氷を食べに行こうと学校帰りに約束していた。
青葉が、食べに行こうと海途を誘った。
海途の部活が終わるまで、あと少しだった。
青葉もその日は部活動や他の手伝いで忙しかったが、早めにやる事は終わらせた。
しとしと降り頻る、雨の日だった。
青葉は海途を部室が連なる外廊下で待った。けれど待ち合わせ時間を過ぎても、海途は一向に現れなくて、電話をしようとした矢先——
突然青葉の身体は指先まで燃えるように熱くなった。
五感は研ぎ澄まされて、ぐらりと力が抜けるような強烈な匂いがした。
そう思った瞬間には男子生徒のα二人に強く腕を引っ張られてどこかの部室に押し込まれ、覆い被さられていた。
幸い通り掛かった先生達が怒号なのか悲鳴なのかを聞きつけ、すんでの所で青葉は助けられたものの……
発見されて二人が青葉から引き剥がされた時、青葉の体の殆どの場所は露になり、雨のじとじとした空気を肌に感じた。
……人はここまでの力が出せるのか、と無惨に破られた自らの制服を眺めながら青葉は冷静にそんな事を考えていた——
更に悍ましかったのは、取り除かれた熱を青葉の体は恋しそうに欲した事だ……——
αのラットに、青葉の体は自らの乾きを満たしたいと渇望した。
激しく拒絶しながら、心も身体もその波に飲まれて流されてしまいたかった。
その現実に、青葉は酷く打ちのめされた。
以来、青葉は星川 青葉ではなくなった。
その後は引っ越しが続き、遂には青葉だけがΩの保護施設に身を寄せ、苗字も戸籍も変える事になった。
家族の人生は確実に狂っていった——
音を立て、ガタガタと崩れて行くのを、青葉はその目で見た……——
その責任と罪悪感は青葉を幾度となく絶望させる——
青葉は一歩踏み出すように、例の書類を取り寄せた。
格式ばった四角い文字と難しい文言が続き、青葉の目はチリっと痛みが走る。
何も無いと思っていた青葉の人生にも、まだ価値あるものが残っていた。
かろうじて最悪を免れた、この体。
周りの人や、自分の全てを犠牲にして守ったこの体を、10年後自ら差し出すなんて……なんて皮肉だろう——
青葉はその書類を眺めながら、スマホで分からない箇所を調べ出す。
今日は、どうやら寝落ちはしない……——
それ程、青葉の頭は冴えていた。
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