そのΩ売りました。オークションで。

塒 七巳

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 体を洗う度に、高級そうな良い香りに体中は包まれる。だが、その香りを嗅いでも、瑞稀の心拍が落ち着く事は無い。緊張は増し続け、足がすくみそうだった。
 
 
 浴室を出ると、予想通りの刺激的な下着とバスローブが置いてある。
 喬一が用意したのだろう。
 
 着るしか、選択肢は無い。
 
 バスローブを置いてくれただけまだ気遣いが出来るのかもしれない、と瑞稀は思う事にした。
 
 浴室を出ると、喬一は白いソファに座り、ゆったりとした雰囲気でスマホを見ていた。
 
 この後に起こる事など、想像させない程に落ち着き払った喬一を見て、瑞稀は一層居心地が悪い。
 
 
 
「何か飲む?」
 
 こちらも見ずに喬一がそう言うと、瑞稀は首を振る。
 
 声に出さなくても、喬一には瑞稀の応えが聞こえたらしい。
 
 
「じゃあ、ベット行こ」
 散歩行こ、と言うくらいのテンションで手を引かれ、寝室に向かう。
 
 喬一が大きなベッドに腰掛けると、両手を広げた。
 瑞稀はゴクリ、と唾を飲み込み、喬一の隣に腰掛ける。
 
 
「あ、そっちね…」
 喬一はどこか拍子抜けしたとでも言う様に、瑞稀に上体を向ける。
 
「電気どうする?俺は明るい方がよく見えて良いけど」
 
 瑞稀は思い切り首を横に振った。
 
 
「じゃあ今回は消そっか。緊張しない方がいいよ、本番じゃないしね」
 喬一はリモコンを使い電気を消す。
 
 その瞬間、瑞稀の顔に骨張った手が添えられる。
 すると鼻に吐息が掠めた。
 
 電気を消しても、カーテンから街の明かりが微かに漏れ、喬一の整った顔立ちが分かる。
 
 何をするか察し、すかさず瑞稀は顔を捩ってそれを避けた。
 
「キスは嫌ね。了解」
 喬一はさして気にも止めず、瑞稀の体をベットの真ん中に来る様に誘う。

「まぁそうだよね、彼氏としたいだろうし」
 
 瑞稀の体はゆっくりと倒され、その上に喬一が覆い被さる。
 
 
 喬一は上体を起こし、Tシャツを脱いだ。
 細身だが引き締まった体に、瑞稀は思わず目を逸らした。
 
 
「ダメだよ、見て。男の体」
 そう言って瑞稀の両手を掴んで上半身を起こすと、喬一も向き合って座った。
 
 瑞稀の手を取り、喬一の首から胸、割れたお腹を触れさせる。そしてその手が先へ進むと…瑞稀はバッと喬一の手を振り払った。
 
「えー…ダルっ」
 そう言って、喬一は承諾も無く瑞稀のバスローブを解く。
 
「やっぱり良い体してる。親父、見る目あるな」
 吐かれる言葉にいちいち反応してはいけない。
 
 
 誕生日プレゼント…
 瑞稀は歯をぐっと食いしばった。
 
 
 
「じゃあ…はじめよっか」
 
 喬一は瑞稀の体にねっとりとした手つきで手を這わせると、そのまま押し倒し、2人はベットに沈んだ。
 
 
「本当に微かだけど、匂いしてる気がする。やっぱり興奮するとちょっと出てくるんだ。良い匂い…」
 喬一はそう言って瑞稀の胸に触れ、舌を這わせたり口に含んで楽しんでいる。
 
 
 
 果たして自分は興奮…してるのだろうか…
 
 喬一もラット、と言われるような抑えられぬ興奮状態…とは言い難い状態だ。
 
 だがそれなりにこなせるらしい。
 
 匂い、とやらは瑞稀は感じなかった。
 
 早く終わって欲しい…それしか考えられなかった。
 
 
 
 
 一通り、予習した範囲の事は終わった。
 
 喬一の感想は、よく濡れるし、体の反応は良さそう、というものだった。
 
「指、まだ一本しか入んないけど」
 と喬一はその指を舐めながら、上体を起こし、妖しく瑞稀を見下ろす。
 
 瑞稀はこれが気持ちが良い、とか快感である、という感覚とは程遠かったが、体は素直に反応しているらしい。
 
 
 不意に、喬一は口でして欲しい、と言った。言われたままに、瑞稀は従う。
 
 すっきりとしたいのだろう、男性の性として
 
 
 した事も見た事も無いが、予習の範囲内で、瑞稀もなんとか恐る恐るそれに手を伸ばし、口に含んでみせる。
 
 硬く、熱い…その得体の知れない物体を、喬一の言う通りに、緩急を付けて、何かを搾り取るように扱く。
 
「……上手っ…」
 喬一が余裕の無さそうな声でそう漏らした。
 
 喬一は瑞稀の頭を両手で掴み、喬一のリズムで、快楽の階段を上がって行く。
 その速さが一層増した頃、瑞稀の口内には許可も無くドロっとした液体が放たれた。
 
 その違和感と匂いに、瑞稀は直ぐに顔を歪める。
 
「はい」
 喬一はティッシュボックスを瑞稀に渡し、すぐにシャワーへ向かった。出しても良いし、飲んでも良いよ、とだけ言って。
 
 
 
 口に吐き出された酷く臭う白い液体を、瑞稀はすかさずティッシュへ吐き出し、急いで口を濯ぐ。
 
 口に残った感触が消えず、瑞稀は吐き気を覚えた。
 


 気持ち悪い…
 
 なぜか目がぼやけてくる
 
 瑞稀はただ目を瞑り、夢であれは良いと布団を被った。
 
 
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