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第一章
【四話】暗晦と憂虞。(2)
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《アーベル、何度言えば分かるんだ!!》
《すみません》
アーベル。それが俺の名。
今、くそったれ上官にどやされてるところさ。
《作戦に寝坊してくるなど不埒千万!そんな態度では本当に死ぬぞ!》
《以後気を付けます》
《そう言って何度目だ貴様!》
うっせえなジジイ・・・。
作戦は無事終わったんだからいいだろうがよ・・・。
《一週間の謹慎だ。七日間兵舎で大人しくしていろ!》
《申し訳ございませんでした》
くそがっ!と、心の中で毒を吐き、自室に帰った。
謹慎一週間なんか余裕。そう思っていた俺は、三日目にしてすでにメンタルがやられてきた。
やることが無さ過ぎてイライラしてきた。
そこへ、誰かのノックが聞こえてきた。
《・・・・・・どうぞ》
《アーベル?私。ハンナよ》
《何の用だ?》
ハンナは俺と同じ班のメンバー。
やたら俺に絡んできやがる。
最初は鬱陶しく感じたが、最近はそうでもないし、
たまに俺から話しかけたりもするようになった。
だけど、今は違った。
《何の用だ~じゃないよ。また寝坊して謹慎食らったんだって?》
《うるせえな・・・》
《あんた、戦闘技能はすごいんだから。もっと真面目にやれば出世だって》
《うるせえって言ってんだよ!》
《・・・あっそ。じゃあ知らないよ、あんたなんて!》
・・・うるせえ女だ。
そう思いつつも、イライラをぶつけてしまった罪悪感が心につかえた。
謹慎の七日を終え、今日から戦線に復帰する。
ハンナとはまだ険悪なままだ。
《本日の任務は、掃討戦だ。居住区近くに出現した魔物の群れを殲滅する。》
やれやれ、またか。ここ何か月もの間、仕事は掃討戦がほとんどだ。しかも相手は雑魚ばっかし。だから緊張感が抜けちまったんだろうよ。
現場に着くと、やっぱり相手は九割がたサル型。
気を引き締めろなんて言われるが、こんなことでいちいち気張ってたらやってられねえよ。
《お前、ハンナともめたんだって?》
ペアを組んでいる班員が俺にそう訊いた。
《ほっとけよ》
その話題は好かない。気持ちの整理がつかないからだ。
《別動隊で残念だったな。何があったかは知らんが、とにかく謝っとけよ》
《ちっ・・・なんで俺が》
ぶり返してきた苛立ちを、ひたすら魔物にぶつけ続けた。
粗方殲滅し、集合ポイントへ。
俺たち二人に加え、別動隊の二人が合流した。
《残りはハンナの所だけか》
あいつの名前が出されるたび、少し緊張する。
十分くらい待ち、やっとハンナともう一人が合流した。
《任務完了だ。これより帰投する。各位、緊急出撃命令が出てもいいよう、準備しておけ》
その後も連絡事項やら何やらと続き、やっと帰投することに。なったのだが。馬車に乗ろうと、手すりを掴んで何となく振り返った時。
《・・・っ!》
魔物だ。まだ残っていやがった。
トラ型、接触危惧種だ。最後尾にいるのはハンナか!
奴はハンナを殺さんと牙をむいている。
《ハンナ!後ろだ!》
《ま、魔物?!》
《バカ、おせえよ!》
もう十メートルもない。
剣を抜く時間はない。
俺はとっさにハンナを横へ突き飛ばした。
——ああ、何やってるんだろうな俺は。
そうだ、ハンナは・・・?
《アーベル!アーベル‼》
ふん、元気そうで何よりだ。
気を引き締めようが緩んでいようが。死ぬときは死ぬ。
死と隣り合わせの仕事、それが騎士だ。
強くても、弱くても。
良い奴でも、くそ野郎でも。
——だが、死にたいわけじゃねえ。俺にはまだ、やってないことがある。
周囲が騒がしい。
剣を抜く音と怒号が響く。
——バカ、もうおせえよ・・・。
俺が最期に聞いたのは、バキバキと骨が砕ける音。
ああ、まだ言ってないのに。
いてえ、いてえな・・・。
——怖いな。
《すみません》
アーベル。それが俺の名。
今、くそったれ上官にどやされてるところさ。
《作戦に寝坊してくるなど不埒千万!そんな態度では本当に死ぬぞ!》
《以後気を付けます》
《そう言って何度目だ貴様!》
うっせえなジジイ・・・。
作戦は無事終わったんだからいいだろうがよ・・・。
《一週間の謹慎だ。七日間兵舎で大人しくしていろ!》
《申し訳ございませんでした》
くそがっ!と、心の中で毒を吐き、自室に帰った。
謹慎一週間なんか余裕。そう思っていた俺は、三日目にしてすでにメンタルがやられてきた。
やることが無さ過ぎてイライラしてきた。
そこへ、誰かのノックが聞こえてきた。
《・・・・・・どうぞ》
《アーベル?私。ハンナよ》
《何の用だ?》
ハンナは俺と同じ班のメンバー。
やたら俺に絡んできやがる。
最初は鬱陶しく感じたが、最近はそうでもないし、
たまに俺から話しかけたりもするようになった。
だけど、今は違った。
《何の用だ~じゃないよ。また寝坊して謹慎食らったんだって?》
《うるせえな・・・》
《あんた、戦闘技能はすごいんだから。もっと真面目にやれば出世だって》
《うるせえって言ってんだよ!》
《・・・あっそ。じゃあ知らないよ、あんたなんて!》
・・・うるせえ女だ。
そう思いつつも、イライラをぶつけてしまった罪悪感が心につかえた。
謹慎の七日を終え、今日から戦線に復帰する。
ハンナとはまだ険悪なままだ。
《本日の任務は、掃討戦だ。居住区近くに出現した魔物の群れを殲滅する。》
やれやれ、またか。ここ何か月もの間、仕事は掃討戦がほとんどだ。しかも相手は雑魚ばっかし。だから緊張感が抜けちまったんだろうよ。
現場に着くと、やっぱり相手は九割がたサル型。
気を引き締めろなんて言われるが、こんなことでいちいち気張ってたらやってられねえよ。
《お前、ハンナともめたんだって?》
ペアを組んでいる班員が俺にそう訊いた。
《ほっとけよ》
その話題は好かない。気持ちの整理がつかないからだ。
《別動隊で残念だったな。何があったかは知らんが、とにかく謝っとけよ》
《ちっ・・・なんで俺が》
ぶり返してきた苛立ちを、ひたすら魔物にぶつけ続けた。
粗方殲滅し、集合ポイントへ。
俺たち二人に加え、別動隊の二人が合流した。
《残りはハンナの所だけか》
あいつの名前が出されるたび、少し緊張する。
十分くらい待ち、やっとハンナともう一人が合流した。
《任務完了だ。これより帰投する。各位、緊急出撃命令が出てもいいよう、準備しておけ》
その後も連絡事項やら何やらと続き、やっと帰投することに。なったのだが。馬車に乗ろうと、手すりを掴んで何となく振り返った時。
《・・・っ!》
魔物だ。まだ残っていやがった。
トラ型、接触危惧種だ。最後尾にいるのはハンナか!
奴はハンナを殺さんと牙をむいている。
《ハンナ!後ろだ!》
《ま、魔物?!》
《バカ、おせえよ!》
もう十メートルもない。
剣を抜く時間はない。
俺はとっさにハンナを横へ突き飛ばした。
——ああ、何やってるんだろうな俺は。
そうだ、ハンナは・・・?
《アーベル!アーベル‼》
ふん、元気そうで何よりだ。
気を引き締めようが緩んでいようが。死ぬときは死ぬ。
死と隣り合わせの仕事、それが騎士だ。
強くても、弱くても。
良い奴でも、くそ野郎でも。
——だが、死にたいわけじゃねえ。俺にはまだ、やってないことがある。
周囲が騒がしい。
剣を抜く音と怒号が響く。
——バカ、もうおせえよ・・・。
俺が最期に聞いたのは、バキバキと骨が砕ける音。
ああ、まだ言ってないのに。
いてえ、いてえな・・・。
——怖いな。
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