14 / 75
本編1
13話
しおりを挟む「どうしてと言われても……好きだから好きなんだ」
「そう言われても、私はそこまでおまえに好かれるようなことをしたおぼえがない」
今までは単にルカが友情に篤すぎるのだと思っていたので理由をわざわざ聞こうとは思わなかったが、自分が思っている以上に好かれているらしいというか、恋人よりも優先される位置に置かれているとなると、そこまでの何かがあっただろうかと不思議にもなる。
「そうだろうね。フィーにとっては当たり前のことだったんだと思うよ。でもそれは、俺にとってはフィーを好きになるのに十分な理由になったってだけで」
「おまえのたいどが、二度目に会ってからへんかしたのはわかっているんだが……おまえのたいどがそんなに変わるようなことがあったか?」
思い返しても、「なんかどうということのない会話をしたような……」というあやふやな記憶しか出てこない。そんなフィオラの様子に、ルカはやわらかく笑った。
「フィーには当たり前すぎて、記憶にも残らなかったんじゃないか? ……俺が一度目の時のことを謝って、それをフィーが受け入れて、少し話しただけだったから」
言われてもやっぱり思い出せない。
首を捻っていると、ルカは遠くを見るような目で、口を開いた。
「俺の謝罪は、まぁ渋々って感じだったんだけど――何せあの時は騎士団と魔法使いが協力関係にあるって聞いたから関係を悪くするのはよくない、ってそれだけで謝りに行ったから――フィーは全然気にしてない感じで。『魔法使いが嫌いなんだろう? 私も嫌いだ。気持ちはわかるから別に謝らなくてもいい。……この国に来て騎士団に入る人間も、この国に来る魔法使いも、基本は魔法使いが嫌いなのに、私も不用意だった。すまない』って言ったんだ」
……さすがに一言一句違わず言われて思い出した。そういえばそんなふうなことを言った覚えがある。
(だが、これが理由?)
やっぱり特に感銘を受けそうなことを言ってはいないし、友人になろうと思うような内容でもない気がするのだが。
「『これが理由なのか?』って顔だ。そういう顔をするフィーだから、俺は好きになったんだよ」
ルカの笑みは大事なものを見守るような慈しみに溢れていて、戸惑う。自分の理解できないところで自分を評価されているらしいのはわかったが、ますます謎が深まっただけのような気がしてきた。
「よく……わからないが。私のことばのなにかが、おまえの心をうごかしたらしいというのはりかいした」
「きちんと理解したいと言うならもっと詳細に語ることもできるけど」
言われて一瞬そうしてもらうことも考えたが、なんだか嫌な予感がしたので首を振る。
「いや、いい。だが、そのときのやりとりだけで、その……こいびとよりもゆうせんすると決めたわけじゃないだろう」
「もちろん。そこからフィーにつきまとって、少しずつ距離を縮めて、フィーを知っていって、最終的にそういうことになったんだ。俺の中で」
「…………そうか」
これはもう、確たる自分の基準を持っている人間の答えだ、とフィオラは思った。今からフィオラが何を言っても、おそらく変えるつもりがない。
フィオラは無駄な努力はしない主義なので、いろいろと諦めることにした。
おそらくフィオラの知らないところでフィオラにとって不本意な噂などたっていそうなのが気になるが。
フィオラも方向性は違えど、自分の基準で自分の身の振り方を決めた身だ。人のことをとやかく言う気はない。ただ、一つ確認はしておくべきだと思った。
「その、『ゆうせんする』というのは、私のこうどうをさまたげるようなことになるか?」
問うと、ルカは少し考える素振りをして、困ったように眉尻を下げた。
「フィオラの意思を尊重するつもりではいるけど……状況による、と思う」
「そうか」
断言しないところに誠実さを感じ取って、フィオラはそれならそれ用の心積もりをしておくことにした。
『万が一の時はルカが行動を妨げてくるかもしれない』とわかっているだけで十分だ。
「しかし、もう少し言い回しをかんがえないと、いらないごかいを生むと思うぞ」
「それは俺も一応考えたけど、これ以外の言い方の方が誤解を生むと思ったんだ」
ルカの主張に考えてみる。……確かに、迂遠な言い回しになるほど誤解の塊になりそうな事実だった。
(ある意味ルカは誠実に答えているということになるのか……)
動かしようのない部分として優先順位をつけているのなら、それを先に伝えているのは公平と言えなくはない。言えなくはないが……。
(面倒ごとには発展してほしくないな)
そんなことをぼんやり思ったフィオラだった。
3
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。
話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。
説明口調から対話形式を増加。
伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など)
別視点内容の追加。
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。
2021/06/27 無事に完結しました。
2021/09/10 後日談の追加を開始
2022/02/18 後日談完結しました。
2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。
向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。
幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。
最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです!
勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。
だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!?
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる