【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月

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番外

もしも××しないと出られない部屋に閉じ込められたら(IF)

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「……ええと……俺まだちょっと事態が理解できてないんだけど」

「むしろできてたら驚きだ。……端的に言うと、魔法士長の気まぐれというか、思い付きというか。『条件を達成しないと出られない部屋』に閉じ込められた」

「『条件を達成しないと出られない部屋』?」

「そこにでかでかと書かれているのが条件だ。それを達成しないとこの部屋の扉は開かない――らしい。一応開かないか試しておくか」

「それなら俺の方が適任だと思う。これでも騎士だし」

「いや、お前が騎士なのはよく知ってるが。そうだな、お前の力でも開かなければ、どうしようもないというのは確かだな」

「じゃあ……っと。うーん、押しても引いても開かないな。この扉どっち開きなんだ?」

「意匠からして魔法使いの宿舎のものと同じだから、外開きだろう」

「よっ」

「軽い掛け声とはかけ離れた音がしたんだが」

「体当たりしたんだからそれくらいの音がしてくれないと。……でも本当に開かないみたいだ」

「最低限の確認を済ませたところで、現状に向き合うか。――この部屋は『一定時間ハグしないと出られない部屋』らしいが……まあ、条件としてはマシな方か?」

「えっ!?」

「何を驚いているんだ?」

「いや……これより、その、すごい条件の部屋に閉じ込められたことがあるのかと思って」

「私はない。他の魔法士が被害に遭っていたからな。その中にはもっと達成が難しいのもあったのを知っているだけだ。そのうち私の番も来るだろうとは思っていたが、まさかお前を巻き込んでくるとは」

「俺も魔法士長に呼び出されたと思ったらこんなことになるなんて驚いてるよ」

「うちの魔法士長がすまないな……」

「フィーが謝る必要はないよ。……それに、この内容で他の人と閉じ込められてたら複雑な気持ちになってただろうし……」

「? 後ろの方聞こえなかった。なんだって?」

「大したことじゃないよ。それで……なんでハグなんだろう?」

「そこを考えるか?」

「だっていくら魔法士長が……その……常人には計り知れない思考をなさる方だからって、無意味なことをさせたりはしなさそうだと思って」

「……そういえば数日前、『ハグにはその手軽さと裏腹に素晴らしい効能があるんだよ!』とか言っていたような。聞き流していたが」

「絶対それだと思う」

「フクコウカンシンケイがどうとかストレス解消がどうとか言っていたが、意味の分からないことを魔法士長が言うのはよくあることだったからな……」

「とにかく何かいい効能があるってことだろう? それをフィーに体感させたかったんじゃないか?」

「まあ、そうなんだろうな……。それで、お前的にはいいのか?」

「え? 何が?」

「ここには私とお前しかいないわけだから、私とお前でハグをする流れになると思うんだが、それがいいかと聞いている」

「……そうやって改めて聞かれると緊張するな」

「お前、何気に私との距離感に気を付けているだろう。抵抗があるんじゃないかと思って」

「……バレてた?」

「バレないと思ったか? まあ私にも都合がよかったからそれはいいんだが。そのお前の線引きからすると、ハグは踏み越えたところにあるんじゃないかと思っただけだ」

「そう分析されるとなおさら緊張してくるんだけど、これはある意味緊急事態だろう? それに、周りの目もないし」

「この状況下ならいい、ということか?」

「まあ、そういうことかな」

「それじゃあ遠慮なく」

「えっ。……ふぃ、フィー!?」

「なんで狼狽えるんだ。この状況下ならいいんだろう?」

「だってフィー、フィーから来るとは思わなくて」

「巻き込んだ側なんだから能動的に動くくらいはする。……しかし、『一定時間』とはどれくらいを指すのか……」

「えっもしかしてずっとこのまま?」

「扉が開くまではこのままだな。……確保された犯人のように両手を上げなくてもいいんだぞ」

「ちょっと手のやり場がなくて」

「まあそれはわかる。逆の立場でも手のやりどころに困っただろうからな」

「……フィー、やっぱりこうしてみると細い」

「騎士様と比べればそれはな」

「ちゃんと食べてる?」

「お前が一番知ってると思うぞ。やたらと食わせようとしてくるんだから」

「もっと食べさせないとな……」

「今以上は無理だ。許容量を考えてくれ。騎士と同じ量はそもそも無理だ」

「それはわかってるけど、やっぱりフィーはもうちょっと食べて肉を付けるべきだよ」

「ついてないわけじゃないんだがな……まあこの姿だと余計に肉がないように見えるか」

「フィー?」

「いいや。……ああ、扉が開いたみたいだ」

「本当!? よかった」

「……素早く離れたな」

「いやだってあの体勢やっぱり気まずくて」

「まあ、私も落ち着かなかったが。……さて、魔法士長に苦情を言いに行くとするか」

「一応巻き込まれた人員として俺も行くよ」

「そうだな、ぜひ魔法使い以外を巻き込むことについての苦情を伝えてくれ」


 そんなことを言っていたフィオラとルカが、仔細を聞いた魔法士長に「それじゃあクローチェはハグされてないじゃないか!」と『ハグし合わないと出られない部屋』に閉じ込められるのは、そう遠くない未来のことだった。

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