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闇と月光
しおりを挟む月光に照らされた男の顔は、喜色に彩られていた。
「ああ、長かった……」
万感をこめて呟く。
「何十年も耐え続けてきたような気がするが――実際には十年足らずか。我は存外堪え性のない人間だったのかもしれぬ」
自らの足元に転がる人物の顔を覗き込む。これから自分に起こることを知らぬが故の無垢な寝顔に、歪んだ笑みを浮かべた。
「お前自身に非はない。罪もない。それは知っている――だが我にとって、お前の存在は邪魔以外の何物でもないのだ。言ってしまえば、お前の存在そのものが、罪と言えよう」
そっと、その額に浮かぶ【加護印】に指を這わせる。憎く、疎ましく、目障りで――羨望と嫉妬を抱かせる、その印。
「その印さえなければ、もっと長く生きられただろうに」
――……かわいそうな、我が弟よ。
囁いて、男は手筈を整えるため、その場を離れたのだった。
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