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無理やり転校編
説明不足はトラブルの元
しおりを挟む「……で? これはどういうことなのか裏事情含めて理路整然と簡潔に教えてもらおうか」
「無茶言うね」
「えー、裏事情なんてないよね?」
「本当にユズはおめでたい頭をしてますねぇ」
「へへー…ってそれ普通に貶してるよね!?」
「一瞬褒められたんだと思えたその思考回路にびっくりだよ」
「カンナひどい!」
「黙れ馬鹿ども特にユズ」
「名指しされた!?」
「マジで黙れ頼むから。あんたが口開くとたいてい話が進まないんだよ。っつーかカンナ、人の問いをスルーしてナチュラルに奴らの会話に加わるな。あんたが説明するのが筋だろうが」
「何のことだかわからないな」
「笑顔如きで誤魔化せると思ってんの? 何年幼馴染やってると思ってんだおまえ」
「そんな怖い顔しないでくれないかな。ちょっとからかっただけじゃないか」
「自分の日頃の言動を逐一思い返してからそういう台詞は言え。そうやって人をおちょくるのが趣味なんだか何なんだか知らないが、時と場合と人を選べっての」
「一応選んでるつもりなんだけど――って嘘だよ、待って。ちゃんと話すから出て行こうとしないで」
「次ふざけた言動したらなにがなんでも帰るからな?」
「わかったよ。ごめん」
「私たちの立場の方が弱いことは自明の理なんですから、さっさと話してしまったほうが心象的にもよかったんじゃないですか、カンナ?」
「そういう意見はもっと早く言って欲しかったな」
「それはすみません。言うまでもないことだと思っていましたから」
「…………そう」
「おいそこ二人、笑い合いながら不穏な空気を醸しださない。怖がってんのが居るから」
「ああ、ごめんユズ」
「え、オレ確定!? いや間違ってないけど! だって何か怪獣大決戦的な怖さがあるんだもん!」
「レンリは困ることはあっても怖がったりはしないですしねぇ」
「…………」
「『だもん』って子供かおまえは。……レンリ、どうかした――って、ああ、チャイム」
「おや、もうこんな時間でしたか」
「うっかりしてたね。まあ別に特に支障があるわけじゃないけど」
「ってことは一限サボるの?」
「ふふ、駄目ですよユズ。そんな言い方をするとまるで私たちが授業を放棄しているみたいじゃないですか」
「そうそう、授業よりももっと大切且つ有意義なことのために授業に出ないんだから」
「いや待てそこ。何て言い訳しようが単なるサボりだから。授業放棄以外の何物でもないから。っつーかこの会話のどこが授業よりも大切且つ有意義なんだ」
「それはもちろん、あなたと言葉を交わしているという点においてですよ」
「うわ寒っ! そういう台詞はあんたらを見てきゃーきゃー言ってるお嬢さん方に言ってやれ。ほら見ろ鳥肌立っただろうが」
「真実を言ったまでなんですけどね」
「常々思ってたけど頭沸いてんじゃないのかおまえ」
「…………」
「レンリ、なんで微妙に悲しそうな顔をするのかわからないというかわかりたくないんだけど、あんたもミスミと同意見とかじゃないよな?」
「現実は認めないと駄目だよ? レンリも授業より君と話してる方がいいってことなんだから、そこは喜んであげたらどうかな」
「いや無理。思考回路が意味不明すぎて理解できない」
「ええー、なんで? オレわかるよ? カンナもわかるよね?」
「まあ、元々の発言主は僕だからね」
「だよね。なんでわかんないのかわかんないよ? ただ一緒に居られて時間も気にしないで話せるのが嬉しいってだけなのに」
「だー、もううるさい! っつーかカンナ、おまえあわよくばこのまま説明せずにすまそうとしてるだろう、とっとと説明しろ!」
「あ、照れてるー」
「ユズの言い方はストレートですからねぇ」
「照れ隠しで八つ当たりとかするんだね、君でも」
「…………」
「……よしわかったおまえら実は私に帰って欲しいんだな? お望みどおり帰ってやるよ今すぐに!」
「わーっ、待って待って何かよくわかんないけどオレが悪かったから帰らないで!!」
「すみませんもう茶化しませんから――ほらカンナ!」
「ええっとごめん、本当にちゃんと説明するから、っていうか君交通手段持ってないんだからそんな無謀なこと言わないで――痛っ!」
「……カンナ……馬鹿」
「何かレンリまで怒ってる!?」
「今のはカンナが悪いですよ、全面的に。なんであなたはこういうときに限って失言するんですか」
「失言って――あ、」
「とか言ってるうちに出てっちゃったじゃん! もうみんな馬鹿だよー!!」
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