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3話:旅は道連れ
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俺の叫びに呼応したのか、大王熊が突進を始めた。速い。このままでは10秒足らずで八つ裂きにされてしまうだろう。兎に角接近されたら終わりだ。
水と土以外の魔法は今は論外、時間がかかり過ぎる。まずは足を止めなくては。
「隆起せよ『土壁』!」
土壁を生成し、直ぐに次の魔法を準備する。
イメージが甘かったのか、土壁は突進のみで粉々に破壊された。しかし多少は勢いを削げたはずだ。
今度は事象をしっかりイメージする。
圧縮された激流だ。
「敵を穿てっ『水弾』!」
明確なイメージ、周囲のマナも手伝い俺の身体から、濃密な魔力が立ち昇る。
敵へと真っ直ぐ伸ばした掌から、限界まで圧縮された水を勢いよく発射した。
果たして、水の凶弾は一直線に大王熊へと殺到し、その威力を持って頭蓋を弾き飛ばす!
……事は無かった。
大量の水が放出され、大王熊は水浸しになったが、何の事は無いそれだけである。
「……エル、エルゥゥゥ!!!どういう事!?明確にイメージしたのに、これどういう事!!?」
「うーん、どうやら人間に、大王熊を倒せる水弾を撃てる程、水魔法に精通して居る人がいなかったみたいですね。」
……しまったぁ!アミニドスが言っていた、『その程度で良いのか』ってそういう事かよぉ!!
それにしたって、こんな場面でフラグ回収しなくたっていいだろ!
「ヴゥオオオオアアア!!!!」
水をかけられた大王熊が怒りの声をあげ、立ち上がる。絶体絶命のピンチだ…。
威嚇を終えた大王熊はまた突進すべく四つん這いの姿勢に戻る。勢いよく振り下ろされた前足は、その剛腕を持って地面を揺らした。濡れた地面が泥を跳ねさせる。
地面が泥に…?そうだっ!
ぶっつけだが、もうやるしか無い。失敗したら大人しく天に召されよう。
「一旦黙ってろ『爆裂砂』!」
砂による目潰しだ。目論見は上手くいき、流石の大王熊も顔を抑えて足を止めた。
落ち着いてイメージする、絶対に失敗できない。水と土、両方のマナを均等になるように取り込んでいく。
「上手くいってくれえぇぇ、『底なし沼』!!」
ズブリ、大王熊の足元が沈む。慌ててもがくが、もがけばもがく程沈んでいき、やがては腰のあたりまで飲み込まれてしまった。
しかしそこでそれ以上は沈まなくなる。俺の技量ではこれが限界のようだ。
しかし、今はそれでいい。何も倒す必要は無いのだ。無事にここから逃げられさえすれば。
今は足止めできて居るが、うかうかしていたら抜け出してくるかもしれない。その時は最早対抗策は無い。俺は急いで彼を抱えると、森の出口を目指し、必死で駆け出した。
しばらくすると森を抜けた。それでも止まらず走り続ける。
「ココマデ来レバ、モウ…大丈夫ダ。大王熊ハ執念深イガ、森カラハ出ナイ。」
一気に緊張が抜けてくる。腕と足が限界だ。いわば、30kg以上を抱えてのマラソンだ、現代っ子の俺には相当堪えた。落ち着いて見ると足が腫れてしまっている。
そうだ、早く傷を治さないと。
「正直モウ駄目ダト思ッテイタ。ナントオ礼ヲ言ッタライイカ。」
そう言うと彼は覆面を外した。
「へっ!?」
「ムッ、ドウサレタ。」
「い、いや、所で!何処を怪我されているので?」
驚愕をなんとか誤魔化して、怪我を治療していく。
しかし、驚くのも無理は無いだろう。なにせ覆面の下の彼の顔は、人間のものでは無かったのだから。緑の瞳に鉤鼻、土気色の肌、尖った耳とせり出した長い顎。醜悪だが何処か愛嬌のある、ゴブリンの顔がそこにはあった……。
治療を施してからお互いに自己紹介を行った。彼の名はアスナロ、15歳。この『黒の森』にあるゴブリン部族で狩人をしていたそうだ。
獲物を深追いし過ぎて大王熊の縄張りに入ってしまい襲われたそうだ。一時は謎の光の本流に、警戒した熊が離れたため、這いずって逃げ出したが途中で力尽き、せめてもの抵抗にと茂みに隠れていたら、エルに探知されたらしい。
自分の事は、修行の旅をするプリーストだと説明した。旅の途中で森に迷い込み彷徨っていたという訳だ。
「ナツキ殿ハ、コレカラドウスルノダ?」
うん、正直明確なプランは何も無い。街に行く、それぐらいのものだ。だがそれを言うのもなんかカッコ悪いしヤダ。
「俺は修行の旅を続けつつ、困った人を助けたいと思う。まあ取り敢えず近場の街に行こうかな。」
「ソウカ、アー…良カッタラ街マデ同行シナイカ?部族ノ掟デ、熊ノ獲物ニナッタラ、生キ残ッテモ村ニハ帰レナクテナ。
恩ヲ返シタイシ、オレハ街ニ何度カ行ッタ事ガアルカラ、コノ辺リガ初メテナラ案内出来ルト思ウンダガ。」
案内してくれるのは願ったり叶ったりだ。
しかし相手は、RPGではお約束の敵キャラクターであるあのゴブリン。随分と友好的なので大丈夫だとは思うのだが、どうも心配は拭えない。
「なあ、エルはどう思う?」
こっそりとエルに問いかけて見ることにした。
「さあ、流石に心の中までは読めませんので。それに言ったでしょう、私はあくまでアドバイザーだと。ナツキさんがどう思ったかが大事なのです。ご自分の頭で考えて、心の向くまま行動すればよろしいでしょう。」
ぐうの音も出なかった。優しげな見た目に騙されていたが意外と厳しい奴だ。
改めて考えて見たが、やはりアスナロと同行しようと思う。初めて顔を見た時、俺は彼に驚いたが、彼が俺に驚いていた様子は無かった、それに街へも行ったことがあるという。これは人族とゴブリン族の双方に、ある程度の交流が存在するという事だろう。あくまで彼の言う街が人間の街ならだが。
それに現在、差し迫った大きな問題がある。そう、今の俺には職も金も無いのだ。
ここで幸運にも得た現地人、もとい現地ゴブリンとのコネクションは大切にすべきだろう。
彼に同行する旨を伝え、連れ立って歩き出す。
「ココカラ一番近イ街マデ徒歩デ3日ハカカル、水ヤ食糧ガ必要ダ。近クノ集落ナラ1時間程ダカラ、一旦立チ寄ッテ準備ヲシテカラ朝イチデ出発シヨウ。」
つまり街までに二泊も野宿になる訳か。地球にいた頃のキャンプとはわけが違うだろう。これはどうやら、持ち物を売り払って準備をすることも視野に入れる必要がありそうだ。
「なあ、アスナロさん。その集落ってのはどんな所なんだ?」
「ドウトイウ事ハナイ普通ノ村ダ。取ッタ獲物ヲヨク交換シニ行ッテイル。人口ハ5、60人ッテトコロダナ。」
ふーむ、そんなもんか。その規模だと金銭を用いた取引はあまり行われていないかもしれない。物を売る計画はいきなり頓挫した。これはマズイことになって来たぞ、何か持ち物を売る以外の手段を考えないと。
あれこれ考えを巡らせているうちに、集落へと到着してしまった。木製の家が間隔を開けて並び、青々と伸びて黄色い小さな花を付けた小麦畑が、一面に広がっている。
結局いいアイディアが浮かぶことも無く、もうなんかしょうがないので成り行きに任せることにした。
「ナツキ殿、村長ニ挨拶シニ行コウ。」
道行く人に挨拶をしながら、村長の家に向かう。村長の家は他とあまり変わらない佇まいだ。ただ、鶏小屋と思しき建物が併設されている事から、比較的裕福な生活が感じられる。
「モシ、村長殿ハオリマスカ?」
「おやアスナロ、久しぶりだな。そうか、今年も狩りの季節だもんな、肉を交換しに来たのかい?……おっと、これは失礼。アスナロ、そちらの方は?」
「コチラハナツキ殿。プリーストノ修行ヲシナガラ、旅ヲサレテイル。村長殿、今日ハ肉ヲ交換シニ来タノデハ無クテナ、実ハ……」
アスナロは数時間前までの事の顛末を語った。
「なるほど、大王熊に襲われるとはそれは災難だったなぁ。」
そう言って彼はアスナロに同情的な目を向けた。
「命ガアッタダケ儲ケトイウモノダ。ソウダ、オレノ部族ノ者ガ来タラ、オレハ生キテ旅ニ出タト伝エテハクレマイカ?」
「あいわかった、必ず伝えよう。空き屋を自由に使って構わないから、ゆっくり休んでくれ。暫く使っていない所だから少々埃っぽいかもしれないが、そこは勘弁しておくれ。」
彼はしっかりと頷き、続けて俺の方を向くとこう言った。
「大王熊に襲われて無事とは、さぞ高名なプリースト様なのでしょう。修行の旅との事でしたが、もしよろしければこの村の者達を見てやってはいただけませんか?
調子が悪い者や、怪我をした者を癒していただきたいのです。少ないですが、心ばかりの寄進はさせていただきますので。」
えーマジか、今疲れてるんだよな。明日も早いし。そもそも外傷ならともかく、病気とかは判断付かんぞ俺。
「……うーん、ちょっと」
「受けて下さいねナツキ。善行を積まねば地獄行きになりますよ…!」
ヒェッ…エルさん声がマジだ。
「分かりました、任せて下さい。」
「おお引き受けて下さいますか!それでは早速、皆に声をかけて参ります。」
まあ、よく考えてみれば渡りに船だろう。お布施をくれるみたいだから、街までの食料をお願いしてみよう。
村長は奥さんに俺たちへ飲み物を出すように声をかけると、足早に出かけて行った。
ちらりと窓から外を眺めると、丁度農作業を終えた村人達が帰って来ている様子が見えた。赤い夕陽の色に染まった麦畑と、一仕事終えて明るい顔の人々。それはとても長閑な光景だった。
俺は小声でエルに声をかける。
「すいません、エルさん…俺、医療の知識とか無いんで、その、ひじょーーに申し訳ないんですが、……アドバイスいただけません?」
彼女は目を瞑り無言でため息を吐いた。
水と土以外の魔法は今は論外、時間がかかり過ぎる。まずは足を止めなくては。
「隆起せよ『土壁』!」
土壁を生成し、直ぐに次の魔法を準備する。
イメージが甘かったのか、土壁は突進のみで粉々に破壊された。しかし多少は勢いを削げたはずだ。
今度は事象をしっかりイメージする。
圧縮された激流だ。
「敵を穿てっ『水弾』!」
明確なイメージ、周囲のマナも手伝い俺の身体から、濃密な魔力が立ち昇る。
敵へと真っ直ぐ伸ばした掌から、限界まで圧縮された水を勢いよく発射した。
果たして、水の凶弾は一直線に大王熊へと殺到し、その威力を持って頭蓋を弾き飛ばす!
……事は無かった。
大量の水が放出され、大王熊は水浸しになったが、何の事は無いそれだけである。
「……エル、エルゥゥゥ!!!どういう事!?明確にイメージしたのに、これどういう事!!?」
「うーん、どうやら人間に、大王熊を倒せる水弾を撃てる程、水魔法に精通して居る人がいなかったみたいですね。」
……しまったぁ!アミニドスが言っていた、『その程度で良いのか』ってそういう事かよぉ!!
それにしたって、こんな場面でフラグ回収しなくたっていいだろ!
「ヴゥオオオオアアア!!!!」
水をかけられた大王熊が怒りの声をあげ、立ち上がる。絶体絶命のピンチだ…。
威嚇を終えた大王熊はまた突進すべく四つん這いの姿勢に戻る。勢いよく振り下ろされた前足は、その剛腕を持って地面を揺らした。濡れた地面が泥を跳ねさせる。
地面が泥に…?そうだっ!
ぶっつけだが、もうやるしか無い。失敗したら大人しく天に召されよう。
「一旦黙ってろ『爆裂砂』!」
砂による目潰しだ。目論見は上手くいき、流石の大王熊も顔を抑えて足を止めた。
落ち着いてイメージする、絶対に失敗できない。水と土、両方のマナを均等になるように取り込んでいく。
「上手くいってくれえぇぇ、『底なし沼』!!」
ズブリ、大王熊の足元が沈む。慌ててもがくが、もがけばもがく程沈んでいき、やがては腰のあたりまで飲み込まれてしまった。
しかしそこでそれ以上は沈まなくなる。俺の技量ではこれが限界のようだ。
しかし、今はそれでいい。何も倒す必要は無いのだ。無事にここから逃げられさえすれば。
今は足止めできて居るが、うかうかしていたら抜け出してくるかもしれない。その時は最早対抗策は無い。俺は急いで彼を抱えると、森の出口を目指し、必死で駆け出した。
しばらくすると森を抜けた。それでも止まらず走り続ける。
「ココマデ来レバ、モウ…大丈夫ダ。大王熊ハ執念深イガ、森カラハ出ナイ。」
一気に緊張が抜けてくる。腕と足が限界だ。いわば、30kg以上を抱えてのマラソンだ、現代っ子の俺には相当堪えた。落ち着いて見ると足が腫れてしまっている。
そうだ、早く傷を治さないと。
「正直モウ駄目ダト思ッテイタ。ナントオ礼ヲ言ッタライイカ。」
そう言うと彼は覆面を外した。
「へっ!?」
「ムッ、ドウサレタ。」
「い、いや、所で!何処を怪我されているので?」
驚愕をなんとか誤魔化して、怪我を治療していく。
しかし、驚くのも無理は無いだろう。なにせ覆面の下の彼の顔は、人間のものでは無かったのだから。緑の瞳に鉤鼻、土気色の肌、尖った耳とせり出した長い顎。醜悪だが何処か愛嬌のある、ゴブリンの顔がそこにはあった……。
治療を施してからお互いに自己紹介を行った。彼の名はアスナロ、15歳。この『黒の森』にあるゴブリン部族で狩人をしていたそうだ。
獲物を深追いし過ぎて大王熊の縄張りに入ってしまい襲われたそうだ。一時は謎の光の本流に、警戒した熊が離れたため、這いずって逃げ出したが途中で力尽き、せめてもの抵抗にと茂みに隠れていたら、エルに探知されたらしい。
自分の事は、修行の旅をするプリーストだと説明した。旅の途中で森に迷い込み彷徨っていたという訳だ。
「ナツキ殿ハ、コレカラドウスルノダ?」
うん、正直明確なプランは何も無い。街に行く、それぐらいのものだ。だがそれを言うのもなんかカッコ悪いしヤダ。
「俺は修行の旅を続けつつ、困った人を助けたいと思う。まあ取り敢えず近場の街に行こうかな。」
「ソウカ、アー…良カッタラ街マデ同行シナイカ?部族ノ掟デ、熊ノ獲物ニナッタラ、生キ残ッテモ村ニハ帰レナクテナ。
恩ヲ返シタイシ、オレハ街ニ何度カ行ッタ事ガアルカラ、コノ辺リガ初メテナラ案内出来ルト思ウンダガ。」
案内してくれるのは願ったり叶ったりだ。
しかし相手は、RPGではお約束の敵キャラクターであるあのゴブリン。随分と友好的なので大丈夫だとは思うのだが、どうも心配は拭えない。
「なあ、エルはどう思う?」
こっそりとエルに問いかけて見ることにした。
「さあ、流石に心の中までは読めませんので。それに言ったでしょう、私はあくまでアドバイザーだと。ナツキさんがどう思ったかが大事なのです。ご自分の頭で考えて、心の向くまま行動すればよろしいでしょう。」
ぐうの音も出なかった。優しげな見た目に騙されていたが意外と厳しい奴だ。
改めて考えて見たが、やはりアスナロと同行しようと思う。初めて顔を見た時、俺は彼に驚いたが、彼が俺に驚いていた様子は無かった、それに街へも行ったことがあるという。これは人族とゴブリン族の双方に、ある程度の交流が存在するという事だろう。あくまで彼の言う街が人間の街ならだが。
それに現在、差し迫った大きな問題がある。そう、今の俺には職も金も無いのだ。
ここで幸運にも得た現地人、もとい現地ゴブリンとのコネクションは大切にすべきだろう。
彼に同行する旨を伝え、連れ立って歩き出す。
「ココカラ一番近イ街マデ徒歩デ3日ハカカル、水ヤ食糧ガ必要ダ。近クノ集落ナラ1時間程ダカラ、一旦立チ寄ッテ準備ヲシテカラ朝イチデ出発シヨウ。」
つまり街までに二泊も野宿になる訳か。地球にいた頃のキャンプとはわけが違うだろう。これはどうやら、持ち物を売り払って準備をすることも視野に入れる必要がありそうだ。
「なあ、アスナロさん。その集落ってのはどんな所なんだ?」
「ドウトイウ事ハナイ普通ノ村ダ。取ッタ獲物ヲヨク交換シニ行ッテイル。人口ハ5、60人ッテトコロダナ。」
ふーむ、そんなもんか。その規模だと金銭を用いた取引はあまり行われていないかもしれない。物を売る計画はいきなり頓挫した。これはマズイことになって来たぞ、何か持ち物を売る以外の手段を考えないと。
あれこれ考えを巡らせているうちに、集落へと到着してしまった。木製の家が間隔を開けて並び、青々と伸びて黄色い小さな花を付けた小麦畑が、一面に広がっている。
結局いいアイディアが浮かぶことも無く、もうなんかしょうがないので成り行きに任せることにした。
「ナツキ殿、村長ニ挨拶シニ行コウ。」
道行く人に挨拶をしながら、村長の家に向かう。村長の家は他とあまり変わらない佇まいだ。ただ、鶏小屋と思しき建物が併設されている事から、比較的裕福な生活が感じられる。
「モシ、村長殿ハオリマスカ?」
「おやアスナロ、久しぶりだな。そうか、今年も狩りの季節だもんな、肉を交換しに来たのかい?……おっと、これは失礼。アスナロ、そちらの方は?」
「コチラハナツキ殿。プリーストノ修行ヲシナガラ、旅ヲサレテイル。村長殿、今日ハ肉ヲ交換シニ来タノデハ無クテナ、実ハ……」
アスナロは数時間前までの事の顛末を語った。
「なるほど、大王熊に襲われるとはそれは災難だったなぁ。」
そう言って彼はアスナロに同情的な目を向けた。
「命ガアッタダケ儲ケトイウモノダ。ソウダ、オレノ部族ノ者ガ来タラ、オレハ生キテ旅ニ出タト伝エテハクレマイカ?」
「あいわかった、必ず伝えよう。空き屋を自由に使って構わないから、ゆっくり休んでくれ。暫く使っていない所だから少々埃っぽいかもしれないが、そこは勘弁しておくれ。」
彼はしっかりと頷き、続けて俺の方を向くとこう言った。
「大王熊に襲われて無事とは、さぞ高名なプリースト様なのでしょう。修行の旅との事でしたが、もしよろしければこの村の者達を見てやってはいただけませんか?
調子が悪い者や、怪我をした者を癒していただきたいのです。少ないですが、心ばかりの寄進はさせていただきますので。」
えーマジか、今疲れてるんだよな。明日も早いし。そもそも外傷ならともかく、病気とかは判断付かんぞ俺。
「……うーん、ちょっと」
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ヒェッ…エルさん声がマジだ。
「分かりました、任せて下さい。」
「おお引き受けて下さいますか!それでは早速、皆に声をかけて参ります。」
まあ、よく考えてみれば渡りに船だろう。お布施をくれるみたいだから、街までの食料をお願いしてみよう。
村長は奥さんに俺たちへ飲み物を出すように声をかけると、足早に出かけて行った。
ちらりと窓から外を眺めると、丁度農作業を終えた村人達が帰って来ている様子が見えた。赤い夕陽の色に染まった麦畑と、一仕事終えて明るい顔の人々。それはとても長閑な光景だった。
俺は小声でエルに声をかける。
「すいません、エルさん…俺、医療の知識とか無いんで、その、ひじょーーに申し訳ないんですが、……アドバイスいただけません?」
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