【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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店を出た。
ショップ袋を感慨深く見つめる。
ずっとこれが欲しかった。こんな形で買うとは思ってもいなかったけれど。
けれど、これが一つの区切りになるのだろう。

「コンちゃん、会いたい。会って話がしたい」
『分かった』
電話するとこんは快諾してくれた。
京極にコンちゃんの正体がバレてからは普通に連絡を取り合うようになった。
『立花すみれは俺の運命だ。』
千葉さんが、そう公言した。
それだけでコンちゃんは守られた。
たったそれだけで。
コンちゃんは了承したわけでもない。それでも、かなりの上位αが運命とまで言ったのだ。
運命への手出しはご法度だ。京極が千葉さんより上だとしても、滅多な事では攻撃出来ない。それがαの暗黙の掟だ。
京極に、『俺の運命に手を出すなら全面戦争になるぞ』と脅したようなものだ。
上位だからこその術。
俺とコンちゃんのそれまでの対策を鼻で笑うかのように、千葉さんは力でねじ伏せた。

待ち合わせ場所は緑が豊かな公園にした。俺は多分泣いてしまう。だからカフェとか無理だった。

しばらくもするとコンちゃんが千葉さんとともにやってきた。千葉さんはまるでコンちゃんを守る騎士のようだった。
…お似合いだった。
俺とコンちゃんで歩いていた時に仲の良いごきょうだいですねと言われたことがある。でも千葉さんと歩いているコンちゃんを見て姉弟と評する人はいないだろう。

「陸。」
こんちゃんが俺の胸に飛び込んできた。ぐすぐすと鳴いている。俺はコンちゃんの髪を撫でた。
千葉さんを見れば苦笑しているだけだった。
完敗だな。

あの後、あのマンションでの狂宴の後、千葉さんはコンちゃんを匿ってくれた。いや、守ってくれたコンちゃん生活を。コンちゃんの今までの生活を変えずに守ってくれていたのだ。研究熱心なコンちゃんが研究所に通えるように手配をしてくれていた。

「陸!陸陸陸!こんなに痩せちゃって。ご飯はちゃんと食べてる?」
「食べてるよ。…………ヒートきちゃって痩せちゃったんだ」
「陸…」
コンちゃんが痛ましそうに俺をみる。俺のヒートを心配してくれてた人。
「大丈夫だよ。」
「陸!陸のα因子が全部が消えたわけじゃないの!だから…待ってて。いつか絶対陸の為に発明するから!」
「…ありがとう、でも…コンちゃんがしたかった研究はそれじゃないよね?」
Ωでも、ヒートがこないという選択肢が用意された世界。それをコンちゃんは作りたかった。
「……私は陸が好きなの!」
「うん。俺も好きだよ」
君の好きとは違ったけれど。コンちゃんの好きは…弟。俺は…若干の肉欲も伴っていた。けれど、情欲というほどではなかった。
本物の好き、はこんなにきれいなものではない。
……嫉妬、独占欲、醜いものばかりだと京極で思い知らされた
ちらりと千葉さんを見る。
肩を竦められた。嫌になるくらい余裕を見せてんな、こいつ。

「コンちゃん、首輪外すから襟広げられる?」
「陸…」
コンちゃんが嫌々と首を振る。
「俺が、その首輪をつけたいんだ。」
「陸…なんで、陸はそうなの!自分を大切にしてよ!」
「してるよ。自分の心を大切にしている。だからその首輪が必要なんだ」

コンちゃんがおずおずとうなじをさらした。…以前は唾を飲み込んだのに。俺のα因子は多分ほぼ残っていない。コンちゃんを噛んで守ることもヒートを軽くしてあげることもできない。
コンちゃんが指をセンサーに充てる。俺が暗証番号を言うと首輪が外れた。
離れた位置で俺らを見守っていた千葉さんが相貌を崩した。
まだまだ安心するのは早えんだよ、ばぁか!俺らの絆なめんなよ

「コンちゃん見て?」
紙袋の中身をコンちゃんだけに見せる。
「いい?」
「うん!!素敵!」
泣き笑い。うん、笑って?
首輪を取り出しそのままコンちゃんにつけた
「まて!!!!!!!!!!!!!」
千葉さんが慌ててこっちに走ってきたがその前にロックが完了する。
「あ、青島~~~~」
あっかんべーと千葉さんに舌を出す。余裕ぶっこいているからだよ。
「お、お前…」
怒りに震えている。
俺だってホントは中指立てたいくらいなんだからな?

「陸、似合う?」
「うん…。似合う…」
君にプレゼントしたかったネックガード。自爆機能なんてないネックガード。だから、底辺のαの俺のマーキングじゃ弱いから蓮兄さんに土下座してでも匂い付けしてもらって渡そうと画策していたネックガード。…これは無臭だけど
千葉さんという上位αの予約マーキングがされているコンちゃんに手を出すバカなんてそうそういない。そして、千葉さんもコンちゃんの意思を無視して無理矢理番おうとはしないだろう。そんな人ならコンちゃんの研究所勤務を許したりしない。
…やっぱり一発殴りたいなぁ
「コンちゃん、暗証番号は俺らが初めて出会った日を西暦で、そのあと出会ったあの場所の緯度経度を入力して。」
「私たちの記念日だね。わかった」

思案顔の千葉さんを見て、二人で笑った。まだ、胸は痛む。俺が幸せにしたかった。けれど……俺たちの好きのメインは家族愛に近い。穏やかな愛情。
俺がΩにならず、コンちゃんも千葉さんと出会わなければ二人で幸せになれた。お互い相手を守る事を考えている夫婦に。けれど守られる事を考えない夫婦に。
俺はコンちゃんを守りたかった。コンちゃんも俺を守りたかった。けれどそこに意思疎通は無かった。お互い一方的に守った。どうすればコンちゃんが俺を守りやすいか、俺が守りやすいか、そんな相談はなかったのだ。
出会わなければ、守りたい守られたいと思う相手に出会わなければ、俺とコンちゃんは穏やかな夫婦になっていただろう。








~~~~~~~~~~~~~~~~
千葉 イケメンでしょ
イメージは某Vチューバー。出会った時はふぎゃーとアドレナリンが出まくりました。脳汁が…………!

頂いた 感想 の中に隠れ 推しは千葉です というコメントがありました。
そうなんです、千葉は私の中でスパダリなんですと返信いたしましたが こういうことです。
運命の影を感じた時はちょっとトチ狂ってしまいましたが、基本それなりに 恋愛をしてきた千葉なので京極のような恋愛童貞の愚かさを披露することもなく、余裕を感じさせます。
そこにコンちゃんもほだされたかなぁ。ずっと陸を守ることばかりを考えてきたコンちゃんだから守られることというのを初めて教えてくれた千葉にほだされたのでしょう。
まぁ、たちんぼさんにしてしまった事がコンちゃん達にバレたらアウトですけどね~


    
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